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『チェーン・ポイズン』 本多孝好 著

2008/12/23(火) 13:24:34 本多孝好 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 何かと話題の講談社創業100周年記念出版「書き下ろし100冊」の第一弾作品。
 この100冊の中には有栖川先生のお名前も入ってるのでその意味で目が離せないのですが(笑)、とりあえず発売当初から興味はありました。でも図書館の予約待ちがすごいことになってるので、自腹で購入。
 読了してみて、この作品が賛否両論なのも分かる気がしました。
 面白いんですよ、本当に。
 未読のかた、ネタバレNGのかたは、これより先にはお進みになりませんよう。



まず最初に。ぶっちゃけ、初読と言ってもいい作家さんです。アンソロに入ってたらとりあえず読んどこ、みたいな。
なので、本多さんの他の作品と比べることもできません。

そんな私が読んだ感想。
うん、ミステリ読みが読んで、これはミステリか?と訊かれたら、考えますね確かに。
殺人や誘拐事件ではなく、れっきとした自殺。それは分かってる。
ただ、一見して無関係に見える三つの自殺に、ある共通点があってそれを見過ごせなくなった無名の週刊誌の記者と。
もう中年という年齢になっているのに生きがいを見失って、ひたすらに自殺を望む女性と。
この2人のパートが交互に展開していきます。

三つの自殺の共通項から導かれる、キーマンは誰か。

それが、まあミステリとしての謎の部分なんでしょうね。

ミステリ読みが捻くれているのか、ただ私が素直じゃないだけか、記者が追う女性と自殺予定の1年を乗り切る為にだけ生きる女性が別人であることくらい、何のヒントもなくてもすぐ分かる。小説って、そういう仕掛けがないと成り立たないとさえ思うから。

ただねえ、原田という記者の行動を、探偵役と見るには物足りないし、事件というか記事にするという建前としても中途半端な気が。
でも、最後に行きついた彼の結論に、サプライズというかどんでん返しがあるのも事実で、今までの仮説にはなかった時系列の混乱→逆転という構図、また毒薬の出所とそれをもたらした人物の(作者がひた隠しにしてきた)悪意・憎悪の表出、は良かったと思います。
生きることと死ぬことを、現実か概念かで見方を変えるやりかたもいいなと。

自殺は孤独、絶望は贅沢なフィクションだと言い切った院長の言葉が、この小説の全てだと言っても過言ではないなと、読み終えて感じました。

ていうか、それをキーにして読み進めていけば、最後に出てくる本当に自殺してしまった絶望の中の2人の男性は、まだ生きるだけの力があったんだ生命に余裕があるんだよ、と言っているようで、特にうち1人に関しては、現実にモデルとなる人が存在するだけに、そのかたへの作者からのエールなのかな、とも取れます。

そして、自殺してしまったもう1人、高野章子と、自殺ではないけれどもホスピスで彼女と接触した老人は、院長のいう1人分の孤独が共鳴し合った関係。
罪深いといえば罪深い。

けれども、この小説で一番罪深く気の毒な立場なのは、真相をひたすら追い続けた当の原田さんというのが……皮肉ですね。
彼の書いた記事に全てを発していたということを、最後まで彼自身は知らないわけですが、読者の側はそれを知っている。その居心地の悪さはラストシーンのすがすがしさで、より強調されていますよね。
これが最大の狙いだったのでしょうか。

一方の自殺願望の女性のパートは、予想通りではあるけれどまあこれでいいんだろうなと思います。
……いやほんまは、最初の決意のとおりに薬を呷っていたとしたら……?と思わないでもないんですよね(笑)
てか、そういう展開だったら、その伏線の回収が綺麗に収まるほど鮮やかであればの話ですが、それこそミステリとして厚みが出たというか。そういう救いのないオチに慣れてるミステリ読みのワガママかなあ。

親しい友人もなく生活に疲れて死にたいと喝望する人が、いざ身辺を整理してみると時間を持て余すのも、流されるままにボランティアに誘われてそこで自分を認められれば自分の未来を夢見るようになるのも、ありがちなんですよ。
よくあるテレビドラマ。
(だから本当に自殺していればなあ…って思うんですよね…小説として珍しいものになったんじゃないかと…/苦笑)
だから、極端な対比ですが、彼女の死→生へのシフトの描写は、自殺という結果になった2人の男性の虚無を引き立たせる効果を持たせるものだったのかと、私はそう感じました。

“スーツ”には騙されましたけどね(笑)

その意味で、小説としてはいいですよね。
最後までぐいぐい読ませるチカラがあって、毒薬を彼女に手渡した人物の正体も気になるし、養護施設はどうなるんだろうと心配するし。
ああそうそう、養護施設の子ども達はみんなめっちゃいい子www
最初は面食らったけど、みんな周りの大人の顔色や感情の揺れに敏感で、でも人を傷付けないように配慮できる優しさもあって。一方でその子達の心が「重い」と感じることも確かにありますが、それは自分が自分を捨ててないからですよね。彼女のように、いちど「自分」というものを時間や約束に明け渡して空っぽの状態になっていれば、その空洞に注ぎ込まれる子ども達の心は、手放せない温かさだろうなと。

結局、終始のらりくらりといい加減にやってきた園長に見切りをつけた時点で、彼女は生きるだけの力と責任を再び手に入れたことになる。それでいいってことですかね。

中には、「この人、出さなくてもよかったんじゃ?」と思うキャラクタがいない訳じゃないのでそれが冗長な感じに繋がってることも否定しませんが、まあほとんど一気読みに近かったので、面白かったといえます。

ただ、再読するかどうかは……微妙、かなあ(笑)

(講談社 2008年)
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