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『踊るジョーカー』 北山猛邦 著

2008/12/09(火) 09:15:39 北山猛邦 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 同じ東京創元社からの刊行ですが、北山さんの以前のミステリ・フロンティアからの作品『少年検閲官』とは全く違うシリーズで、この『踊るジョーカー』シリーズは現在も『ミステリーズ!』で連載中なんですね。
 それにしても、装丁がなんとなくほんわかしたファンタジーっぽいのですが、中身はきっちり本格ミステリです。
 これでもかってくらいにネタを割っていますので、ネタバレNGのかたは、これより先にはお進みになりませんよう。



いやいやいや、『少年検閲官』も大したミステリでしたけど、これもまたすごい本格ミステリです。
二重の施錠による密室殺人とか<踊るジョーカー>、盗まれ続ける時計の謎<時間泥棒>、ダイイングメッセージもの<見えないダイイング・メッセージ>、毒入りチョコレートによる殺人未遂<毒入りバレンタイン・チョコ>、雪の上の足跡が全くないところに突如現れた死体<ゆきだるまが殺しにやってくる>。
どれもこれも、ミステリの王道ばかりですが、奇妙奇天烈なトリックじゃなく、むしろ上手にアレンジしてあって面白かったですね。
短編ばかりなので、その制限の中で説明不足でもなく破綻もしていない、纏まりの良さ。

<踊るジョーカー>では密室の謎と凶器の謎。
……いやー、有栖川先生と安井俊夫さんの対談本『密室入門!』を読み終えた直後だったので、大笑いしてしまいました。まるでこの対談本の内容を予め知った上で書かれているような気さえしましたよ。
なので、「てことは、この密室は、こういう分類かー。おお鍵のことまで!」ってね。これは是非、安井さんには読んでいただかないと!(笑)

凶器の謎は、いわゆるワンアイディア、ですね。そうそう上手くいくものかなとも思うけど、まあ考えるだけなら不可能とも言い切れない。現実には多分、かなり無理があると思う。まあファンタジーですから。

<時間泥棒>は。
キャラクタ設定がものすごく現実離れしてる所為か、それとも殺人事件ではない為か、あまり切迫感はないんですが、時計が次々に盗まれるという謎の答えは現代的だし犯人の悪意もものすごい。対照的にこの姉弟の世間知らずっぷりがイタすぎる…。

<見えないダイイング・メッセージ>
このテーマで必ず言われるのが、瀕死の状態の被害者が、何かを伝えたい、犯人の正体を書き残したいと思っても、果たしてそれが可能なのか?たとえできたとしても、それは判別できうるものなのか?信用できるのか?という疑問なのですが…。
このお話は、そんなものすっ飛ばしてますね多分(笑)
思うように動けない身体では、紙とペンが都合よく近くにあるなんて期待できないからじゃあどうやってメッセージを残せばいい?という難題に、これは被害者の発明家としての意味付けを最大限に生かしたもので、発明に必要な“発想の転換”をダイイング・メッセージに盛り込んだんですね。
その意味では、目新しいというかなるほど!というか。
そして、この犯人の動機がまたすごい。A(殺意)だからB(殺害)という公式じゃなくて、まずD(隠し財産)を手に入れる為にA(殺意)とB(殺害)を掛け合わせてC(金庫の暗証番号をダイイング・メッセージとして残させる)を誘導する。こんなの現実にあったら、多分精神鑑定でしょうね。非情としか言いようがない。

<毒入りバレンタイン・チョコ>
これも、チョコの包み紙からの着想でしょうか。よくこんなこと考えるなあと。
いやこれは、犯人も大変だと思います。全くの自然体を装いながらも、絶対に相手の動きから目が離せない。やけにチョコの台紙の形状を細かく説明してるなあと思ったら、このトリックは単純なわりに犯人の苦労が多くその上動機が幼稚すぎて笑えない。
それと、この伏線はどこにあった?と読み返してみたら、180ページの「材料運びのために~チョコレートができた頃には帰ったみたいです」の部分ですね、多分これ。ちょっと分かりにくい気もするけど。
高庭警視が、めいたんていこなんに特別出演する、まじっくカイトのはくばくんに思えたのはヒミツ…。

最後の<ゆきだるまが殺しにやってくる>は…。
これも『密室入門!』に出てきた一形態ですね。突然現れた死体とゆらゆら動くゆきだるま。犯人と思しきものはもちろん被害者の足跡すら見当たらない雪の中。たった10分間の間に起こった謎。
確かにこれは、こうしないと不可能犯罪のままになる、のでいいんですけど、それより見事だったのはゆきだるまの意味。
犯人が何故ゆきだるまにこだわるのか、ということとは別に、死体を隠す、トリックのタネを隠す、という意味での存在価値を持たせるというのは…ファンタジーだわやっぱり。
深津さんのキャラクタ設定がそのまま犯人の動機に結びつくのは意外でした。こんなんアリか(苦笑)


主役の2人、推理作家の白瀬百夜と世界一気弱なひきこもり(またはニート)“名探偵”の音野順。
音野くんの探偵譚を元に脚色してミステリ作家として世に出すという白瀬くんの楽天家ぶりに反発は覚えるし、エラリー・クイーンと有栖川先生の作家シリーズ、坂木先生の<ひきこもり探偵シリーズ三部作>によく似た設定だし、と、最初は大丈夫か私と危ぶんだのですが、それを救ってくれたのは強面の岩飛警部にミーハー笛有刑事のコンビ。特に、細かいことに全くこだわらない岩飛警部がいいわーwwある意味天然さんでしょう。
あと、<見えないダイイング・メッセージ>に出てくる音野くんのお兄さん、音野要氏は、現在発売中の『ミステリーズ!31』の短編にも出てくる準レギュラーなので、スルーしてはいけないキャラクタですね。

キャラクタ造形に深みがほとんどないので、小説として読ませるかというとやや疑問がありますが、本格ミステリとしてなら充分です。というか、本格ミステリ、特にパズラーは大概こんなもんです(笑)
これは続編が楽しみな1冊になりそうですよ♪

(東京創元社 2008年)
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