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『退出ゲーム』 初野 晴 著

2008/11/22(土) 22:18:52 初野 晴 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ミステリ読みのベテランさんから同業のミステリ作家の先生までがサイトで絶賛されるほどの評価の高い作品。
 有栖川ファンである私には、この本の帯に有栖川先生が推薦文を寄せておられるというだけでも要チェックでした。図書館で予約したのに結局待ちきれなくて買っちゃいましたよ。
 これは多分、各社のミステリベストに入るだろう作品だと思います。奥付は08年10月30日初版。ギリギリですね。
 未読のかたは、これより先にはお進みになりませんよう。


………うーむ。うむむむむ。

これは、時間をおいて再読の必要あり、かな。私にとっては。

確かに、各方面から絶賛されているだけあって、面白い。
本格ミステリとしてロジックが素晴らしく美しくて、うっとりします。
突っ込みどころになるような、瑕疵も見当たらない。
それでいて、読みやすい。登場人物の会話とか語り手の彼女の心の声とか、テンポが良くてリズムが乱れない。

私にしたら、これだけでもベタ褒めです。
もうこれで、この作品の感想文を書いた気になります(笑)
ていうか、もうこれでいいとも思う。

でも、どうしても比べてしまう作品や、大先生のお名前がいくつか出てくるのです。

まず、これはあちこちで言われていますが、島田荘司大先生。笠井先生、までは重くないかな。
特に後半2編。
『退出ゲーム』と『エレファンツ・ブレス』この国際的なスケールでの展開は、どうしてもそう思えるのかもしれませんが。

またこのキャラ設定、会話のテンポの良さ、皆どっかネジが2~3本緩んでるようなとばし方。
これは、米澤先生の『古典部』シリーズ?

つまり、なんかどっかでみたことのある設定。

…↑これ、前に誰かの感想文で書いたなあ、と思ったら。
三雲岳斗さんの『少女ノイズ』でした。

そう思ってみると、探偵とワトソン役というか、謎を解くキャラの印象が、この『退出ゲーム』と『少女ノイズ』は、ポジとネガみたいな気もする。
同じように学生探偵でありながら、受ける感じがまるで違う。
そして事件の謎も。
…私、殺人願望なんて無いはずなんですけど、殺人事件の謎と解決、という方が性に合ってるというかわくわくする。緊張感の違いかな。
ということで、改めて思い返して、『少女ノイズ』の方が好きかも★という結論になりました。よりパズラー色の濃い作品、というべきか。

そう、パズラーかというと、ちょっと違う気がするんです、この『退出ゲーム』。

最初の『結晶泥棒』。
結晶というものの性質からして、水が関係してるのはすぐに分かった。
だから、隠し場所かそれとも盗んだ目的か、とにかく水という存在に気を止めればOK。
ただ、その動機までは気が付かなかったけど…。伏線がきっちり回収されているので問題なし。

2編目の『クロスキューブ』。
あらら、私たちの青春時代とか若かりし頃が、遥か昔になってしまいました(苦笑)。私達には懐かしいモノが出てきてああそうやったなあ、と思うんですけど、そういう感傷やら記憶とかからは遠い場所に位置していて。
そして、これは、美術オンチには無理っす。ワカリマセンって。
トリックとかロジックよりも、“これは何の為に作られたのか?”という謎が、“これは何故こういう風に作られたのか?”と“これに正解はあるのか?”とを足して2で割った感じ。これはこれで綺麗なんですけど、どちらか一方を付き詰めた形でも良かったように思いました。

表題作『退出ゲーム』に関しては、何もケチつけることもなく。
演劇部と吹奏楽部の代表?2人が、即興で設定を加えながらある目的に向けて舞台を誘導しようというもの。
これは最初、付いていけるのかと思いましたが大丈夫でした。ロジックがかちりと決まってちゃんと落ちる。
それでいて、ある人物に向けたメッセージになっていて、この絡ませ方がものすごく綺麗で無理がなくて。日本推理作家協会賞短編部門にノミネートされたのも頷けます。

……ただ、この最後の『エレファンツ・ブレス』について。
前の『退出ゲーム』にも似た誘導の仕方で一旦その場を収めて、実は隠された本当の真相があり、それは多分、タブーに近いもので。
これが納得いかないのかもしれません。
『退出ゲーム』から登場したマレンくんのアメリカ在住という設定や、吹奏楽部顧問の草壁先生からのストップ。アメリカと教師という年齢から。これは分かります。
けれども。
2編目の『クロスキューブ』で私達の若い頃の流行を二昔も前に設定したくせに、それくらい時間軸を未来にしたくせに、この真相がそれほど禁忌であることをどうして『怖い』『ぞっとした』と実感できるんだろう、この子達。
平和な日本に生まれ育ち、教科書の近代~現代の世界史でしか教わらない環境。たとえ、身近にそれに関する本があり、またテレビのドキュメンタリーを観たとしても。それを『ぞっとした』と思えるものなのか。まして、この元々の謎、“エレファンツ・ブレス”という色の意味を知る為に集まった彼らのうち、ある意味合理的ながら明らかに非常識な兄弟がいるのに。彼らにとっては、もっともっと軽い他人事じゃないのか。
まあ主眼はそこじゃなくて、お爺さんが巻き込まれた運命じゃなくて背負ったものの鎖の足枷の方なんでしょうけど。
多分、その繋がりの強引さ極端さが、いまひとつ納得しきれないのだと思います。
ロジックに矛盾が全くないだけに、余計に悔しい。私の読み方が間違っているのだと言われているようで。


全体的に主役の2人が底抜けに明るいので、テーマが重くてもするするとは読めます。
そこにだけ目をつぶってみれば、この作品は、確かにミステリとして今年の収穫のひとつと言われるのも分かります。要は好きか嫌いかの違い。
改めて、私にはパズラーと言われるミステリの方が好きなんだなあ、とつくづく実感した次第です。
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