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『TOKYO BLACKOUT』 福田和代 著

2008/11/21(金) 15:36:34 福田和代 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 デビュー作である『ウィズ・ゼロ』を初めて書店で見た時、「なんか面白そうやけど、クライムノベルってあんまり読まへんしなあ…」と見送った覚えがあるのですが。
 読んどきゃよかった!
 今、そう後悔するほど、この2作目の『TOKYO BLACKOUT』はスリリングでサスペンスでした。
 女性作家さんやから、と敬遠してたことも合わせて申し訳ない。そんな偏見というか粘着質なところの全くない、さばけた文体で読みやすかったです。
 ミステリじゃなくクライムノベルですので、そういう意味でのネタバレはないですが、やはり先入観を持ちたくないかたは、ここで回れ右してくださいませ。




とにかくすごい!
この福田和代さんという女性は、一体どれだけの時間と紙とペンを、この取材に費やしたのだろう。
読み始めてすぐにそう思い、そしてそれは最後の最後まで続きました。
もう、ハンパじゃないです。この電力会社の描写が。
モデルはもちろん、東京電力でしょうが、多分日本の電力会社は大体こんな感じなんだろうなあと、しみじみ思いました。
ある地域の電力が足りなくなったら、他の地域の電力会社から周波数を調整して分けてもらうってことは知ってましたが、電力の需要と供給のバランスがとれていないと送電できないとか、一気に電力がストップすることは最悪のパターンでそれを防ぐ為に何重ものプロテクトをかけてるとか。知らないことばかりで、勉強になったというと暢気すぎるかな。

電気に依存する生活をしている自覚はあります。
我が家はオール電化ではないけれども、とにかく電化製品の数がめちゃくちゃ多いんです。コンセントというコンセントは、ほとんどタコ脚配線ですし。

この作中に、阪神・淡路大震災を経験したというキャラクタが出てくるんですけど、彼の言う「痛い目」という述懐は、よく分かります。
あの時、幸い京都ではほとんど被害は無かったんですけど、やはり毎日毎日朝から晩までずーっとテレビで被災地の映像。
まずあたたかい火・炎というもののありがたさを、綺麗な水の出る蛇口のありがたさを、そして電気のある生活のありがたさをまざまざと見せつけられました。
あれ以来、私はたとえ被爆の危険と隣り合わせであっても、原子力発電を否定することはできません。

東京という日本の首都が、一斉に停電する。ましてそれは、テロという犯罪の為に引き起こされた人為的なもの。
このニュースを見て、原子力発電所の警戒を最重要に考えれば大惨事には至らないだろうと軽く考えていた自分が恥ずかしいです。
電力会社の、専門職の人たちが、どれだけ毎日神経すり減らしてパネルとにらめっこしてるのか、とか、保安会社の社員に至るまで電気に携わる人が、どれだけの自負を持って仕事をしてるのか、ということを失念していましたよ。

エコだとか省エネとかいう建前じゃなく、ただ、こういう人たちの苦労をムダにしない為に電気の無駄遣いはしちゃいかんと、強くつよく思いました。

作者の福田和代さんが、こういう作品を書きたいから、と取材に入ったとき、電力会社サイドの応対した人は正直あまり想像してなかったと思う。ここまで詳細に書くという覚悟を持った人を案内してるなんて。

多分、これを読んだら、電力会社の電力マンは皆さん、涙を流して喜ばはるんじゃないかなあ。

他にも、病院関係、警視庁警察庁から下っ端のおまわりさん、刑務所の刑務官、いろんな職種の人が登場します。
また、一般の人たち、若いひとも年配のかたも。
そして、犯人グループの一人一人にいたるまで、丁寧に人物像が描かれていて、重要人物の絡ませ方も上手くて、引き込まれます。退屈しない、というと違うかな、東京という大都市で日常を送る人たちの生き生きした感じがうまく表現されているような。
特に、ベテラン看護師の片山さんと、駒込の雑貨店のおばあちゃん。
素晴らしい!
ライフラインが寸断するとパニックになるもんですが、経験を積んだ人生の先輩がたは胆の据わり方が違います。ICUで必死に頑張る子どもの為に、髪振り乱してチャリかっ飛ばして冷水を汲みに行く機転や、真夏の大都市で電気がストップしてもへいちゃら!さっご飯の用意だよ、と言えるおばあちゃんの何と頼もしいこと。
ああ私たちはなんてひ弱なんでしょうね。

ミステリ読みの目線から見ると、主犯というか計画立案した彼の過去が明かされた時点で、おおよその動機や最終的な目的は気が付きます。プロットがね、そういう風になってるから。プロローグの22年前の殺人事件から始まって、停電している各地の様子、そして刑務所。
バラバラに配置された登場人物が、パチパチとパズルのピースみたいに繋がっていく様子。
いや本当に思ったとおりでしたよ。
対策本部でイライラしてる生方さんに、これこれでこうなんだよーと教えてあげたかった(笑)

周防さん目線のパートの最後の方、彼が目的を果たして確保され、その微笑を見て「最後に誰が勝ったのか、お前はよく知っている」という。
私、どうしても、主犯の彼が勝者だとは思えないんです。
彼の凄惨な過去と、そして再び襲った事件に翻弄されたのは気の毒だと思うけど、
それでもこんなマイナスに走らずに歯を食いしばって耐えている同じ境遇の人だって必ずいる。
そう思うと、同情すらできない。
もし、警察(この場合スワットかな)の強行突入による処刑を望んでいたとしても。
彼にいいように使われたグエンたち外国人の末路の悲惨さや、東京を憎んでいたとしてもそれだけで世界経済まで大暴落させかねない大混乱を引き起こす権利は、彼個人にはないから。

本当の目的の為に、ただ1人の罪人を自らの手で処断する為だけに、巻き添えになった人たちの夥しい生命の数。
かの地下鉄サリン事件を思い起こすほどの、無差別さ。
悲しみ憎しみにのみ支配された人間は、どこまで視野が狭まっているのかと、ぞっとする怖さを見事に書ききっていると思います。
彼は、結局、負けたんです。人間として。すべてのものに。
諦めない、希望を捨てない人が、一番強いんです。
家族を、自分の仕事を、誇りに思う人が、最後に笑うんです。
それがこの作品のテーマだと思います。

この作品、全く手を加えないでこのままでも、充分映画化できるほど、迫力とリアリティとメッセージ性に溢れています。
遅かれ早かれ、だれかが映像化するに違いない。
そのニュースを見たら、ほくそ笑んでやろうと思ってます(笑)
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