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ミステリーズ!Vol.31第五回新人賞

2008/10/30(木) 08:46:02 ミステリ・その他 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
東京創元社の【ミステリーズ!Vol.31】に掲載されている、第五回ミステリーズ!新人賞と佳作の2作を読みました。
すごいな!
あまり新人賞を受賞した作品についての感想なんて書かないのかもしれませんが、近い将来に正式にデビューが決まったとき、間違いなく購入するだろうなと思ったほど、面白い作品だったので。
ミステリーズ!新人賞『砂漠を走る船の道』梓崎 優 著
         佳作『聴き屋の芸術学部祭』市井 豊 著
選評で綾辻先生や有栖川先生も書いておられますが、とにかくこんな面白いミステリを読んだよ!としか言えない、ちょっとでもあらすじを話そうものなら即ネタバレになってしまうので。
これから先には、読了されたかた、先入観が生まれてもいいわというかたのみお進みくださいませ。


まずは新人賞受賞作、『砂漠を走る船の道』から。
すごいすごい!これはマジですごい!
原稿用紙100枚までという短編の世界の中で、これほど読み終えるのがもったいない!と思ったのも珍しいです。
サハラの熱砂を征くキャラバン、正反対の世界である日本から彼らの取材の為に同行するたった一人の異邦人。そして“砂漠の船”ラクダ。
テレビなどで観た記憶からのイメージで、砂漠を横断するキャラバンとは一部族・長老を中心にした大家族のような印象がありますが、この作品は、ギリギリまで人間を減らし、現代のビジネスライクに徹したその反映のような隊であるという設定がまず面白いなと思いました。
とにかく名前のある登場人物が極端に少ない。
それなのに、そのキャラバンの中で、連続して死者が出るんです。
クリスティのそして誰もいなくなった方式になるのかな?……と思ってしまうのですよ。そして、誰が探偵の役割を果たすのだろう、と。
そしたらっ。
この発想はスゴイです!
ちゃんと序盤に書いてあるのに、まさかそれが伏線とは思いもしなかったよー!という。
捻り具合というのか、今までに無い斬新なアイデアというか。
綾辻先生の言葉じゃないですが、本当にこんなの読んだこと無い!
それが砂漠という特殊な環境でしか成立しないこと。
熱砂の砂漠を命がけで横断するキャラバンの、プライオリティ。
一見揺るぎないクローズドサークルなのに、殺人というリスクとの矛盾がほどけない。
本格ミステリの世界に、まだこういう手が残ってたのかー!という、金の鉱脈を発見したみたいです。
そして最後のサプライズ。
メチャボという子ども。
いやーんもう♪お見事www綺麗に騙されたー!いや愉快愉快♪♪

この作品の作者、梓崎優(しざきゆう)さん、表現力が際立ってますね。
見渡す限りの砂漠の中、その朝と夜。静寂と嵐。
対比が綺麗で、緊張感が途切れない(まあ短編ですから、そんなに冗長になることもないのでしょうが)。
昔エジプトに行った時、ツアーの旅程にサハラ砂漠の端っこにて実際に砂を触ってみましょう!ってコースがあったんですよね。
そんなエジプトの喧騒が聞こえる位置にあるサハラの端っこでさえ、砂漠というものは圧倒的な存在感がありました。GPSどころか多分地図も無い、月と星が読めないと、またラクダに慣れていないと生きていけない世界。
少しの油断が即、死に繋がるという厳しさを、叩きこむように織り交ぜてあって、何日たっても一向に変わらない景色のなか、自然と自身の内面を見つめることになるのですが、それが涙が出るくらいの寂寥感になってて。
少し前の、よしもとばななさんの書き方に似てるなあと感じました。
つまり、私の好みに合う文章だったというww
続編なり他の作品なりを書き上げて、早くデビューしてほしい!もっと他の作品も読んでみたい。


次は『聴き屋の芸術学部祭』。
これはまた、コミカルでテンポのいい、青春ものですね。
途中まで、これはミステリかあ?と思いながら読んでまして。
いきなり不穏な事件が発生して、少々強引な気がなきにしもあらずですが、それでも面白いなと思いました。
“聴き屋”という変わったポジションの主人公(視点人物・語り手)、柏木。
生きてることが既に辛そうな、超後ろ向きな“先輩”(女性。名前なし)。
女装のコスプレに気合入れまくりの文学賞受賞者、ムダに色気を振りまく川瀬。
この3人の書き分けが上手くて、笑いながら読んでましたよ。
最近の青春ミステリの中でも、トップクラスの出来じゃないだろうか。
スプリンクラーの方は、なんとなーく分かったんですがね、その理由とか、それと殺人がどう結びつくのかまでは読めなかった…。
先輩の背後霊っぷりがおかしくて、まさかそれが事件にかかわりがあるなんてさー、やられたっ★
犯人に結びつく推理がかなり強引というかこじつけがましくはあるけれども、純文学を書いて受賞したくせにミステリ好きの川瀬くんがあれこれ考えてる横で、ちょっとナナメを見て事件の真相に辿り着いた柏木くんの、捻った探偵役がいいですね。
これはこのまま続編を書いて、連作ミステリという形にすれば、読み応えのある1冊になると思う。ミステリ・フロンティアのラインナップとしてもぴったりじゃない?
楽しみにしてます。


最後に。
巻末あたりのブックレビューに、宮脇孝雄氏による『ジョーカー・ゲーム』(柳 広司 著)、戸松淳矩先生による『漂流巌流島』(高井 忍 著)が紹介されています。
私の感想文では書けなかったことが、コンパクトに纏められていますので、是非読んで見てください。で、「ああ、あいつはこういうことが言いたかったのか」と、納得していただければ…。我ながら情けないなあ(涙)

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