こんな本読みました。

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『真夜中のタランテラ』 麻見和史 著

2008/10/28(火) 16:08:15 麻見和史 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ミステリ・フロンティアからの1冊。
 この作者の前作、というかデビュー作は未読なのですが、MFというシリーズが好きなのでまずはこちらを読みました。
 自分ではあまり自覚していないんですが、初読時にざっと流し読みしているようですね私。読むの早いと言われていますが、そうやったのかも★と思ったのは、この作品が初めてです(笑)
 ロジック炸裂の本格ミステリど真ん中です。
 未読のかた、先入観を持ちたくないかたは、ここで引き返してくださいませ。



著者略歴を見て、驚きました。デビュー作もこの『真夜中の~』も、海堂作品ほどではないにしろ医療界に関わりのある内容なんですよね。それなのに、麻見さんご自身は文系みたいですよ。…ということは、書き上げる為に、相当の資料を読み込まれたんだなあと思っていいのかな。
それだけで既に素晴らしいと思う。

そして、本格ミステリとしての手順が綺麗に並んでるし、探偵役は探偵としてきちんと活躍しているところも、パズラーとして馴染み深いもの。少なくとも私にとっては、安心して読めるミステリでした。これだけのパズラーだったら、是非デビュー作も読んでみたいなあ。

いきなり、童謡【赤い靴】の新解釈を披露する作中エッセイから始まって、そのエッセイを書いた義足のダンサー、桐生志摩子の死体が発見された。志摩子自身の左義足と、持ち主不明の右義足に赤い靴を履かせ舞台に並べて置かれた現場。健常だった右足を切断してまで義足を並べたのは誰か?まるで【赤い靴】の見立て殺人のように……。

まだ経験は浅いものの義肢装具士として働く香坂徹。彼の妹・奈緒もまた義足ユーザーで、それでも自立してダンス教室のピアニストをしながら頑張っている。
この兄妹のいとこにあたるひとみと、その夫の鴇圭一郎。鴇は大学院医学系研究科再生医療研究室の講師をしている34歳(ミステリ界で、34歳の大学教育者は、めっちゃ馴染みのある設定ですね/笑)

優等生タイプの生真面目で優しい徹と、少々空想癖はあるものの自立心が高くそれでいて周りの空気に敏感な奈緒。
ざっくばらんで頼れる姉貴のようなひとみ。
そして、鴇さんは、研究者にありがちな理屈っぽさと強引な部分、とことんまで自分で調べようとする、まさに探偵としてうってつけの人ですね。

徹の勤める義肢製作所にも、社長の仲井や直属の上司・高岡景子、先輩の義肢装具士たちの面々。
義肢ユーザーとの調整の場である病院の整形外科の宗像医師と細川看護師。ちょっとやりにくいユーザーさん。
桐生志摩子の夫である間島と、懇意にしている轟。

みんなキャラクタの書き分けがしっかりしてて混同することもないし、それでいてこの容疑者の中の誰が犯人なんだろう、とドキドキするほど怪しいし。
まず犯人が外部の人間か内部の人間か、それすら解決部分まで分からないようにしてあるので、結構楽しんで読みました。

でも、それより何より。
身近に義手義足などのユーザーだったり、代表的な例だと乳がんによる乳房切除とか、また事故・病気などによる人体の欠損を補う為の整形手術を受けた人がいないというのに、義肢装具についてめっちゃ勉強になりましたよ。
医療関係者の為の専門書とか、現実の義肢装具士のかたがた。不運にも自分が義肢ユーザーになってしまった経験を持つ人でしか接することはないだろう世界。
知識がまるでゼロの私にもついて来ることができるように、最低限必要な部分だけを噛んで含めるように書かれているなあ、と作者の努力に感心しました。
薀蓄を積み重ねることはいくらでもできるんですよね。
いかに枝葉を落として、必要な部分だけを残すか。そしてそれがきちんとミステリの伏線として機能するか。このさじ加減は、大変だろうと思います。

それと、初めて知った言葉として身体完全同一性障害。こちらは病気に入るのかな。
で、明らかにマニアかオタク要素の強い、切断願望者・切断者・切断愛好者。またその違い。でも、医師から見ればこれも精神的に病んだ人たちなのかなあ。全く想像できないけど…。

健常だった志摩子の右足を切断した犯人は、切断愛好者という猟奇殺人者なのか。
どうしてもそこに意識が向く為に、これらの言葉が伏線だったとは考えなかったよー。

ていうか、伏線が結構地味、またはあからさまなものとさりげなさ過ぎるものがいっぱいあって、伏線拾いが難しかった★
犯行の動機は犯人に聞かないと分からないから、とにかく調べ集めた事柄だけを抽出して推論を組み立てて行く、という鴇センセイの探偵っぷりは、かなりカッコイイですwwこれぞパズラーですね♪

ワトソン役にあたる徹くんは、助手というよりは義肢装具士として、また義足ユーザーである奈緒の兄として考えてる面が大きいので、探偵の閃き導くヒントになるようなことはあまりなく。義肢装具士の知識や経験、またその業界の内情を伝えたり、こっそり調べ回る為の小間使いみたいな(笑)
ま、探偵役は傲岸不遜な人というのは、当然ですしね☆

殺人事件としての描写よりも、奈緒の身に降りかかった恐怖の方が数段怖かったー。
事件の発端から経過、探偵が動くさま、散らばったヒント、その中にそういう恐怖のシーンが差し挟んであって、緩急の付け方が上手いなあと、しみじみ思いました。
極端な話、殺人事件は大量に、それも連続して起こった方が展開がめまぐるしくてぐいぐいと引き込まれるものですが、あえて猟奇性を薄め、血生臭さを排して、それなのに冗長な感じがしないのはすごいです。犯人が誰か、なんでこんな手の込んだことをしたのか、その動機を知りたくてしょうがない。

最後、エピローグは別に無くても成立したとは思いますが、ポイントは金木犀、ですね。最初と最後を繋ぐ役割として。
その金木犀の香りという五感に訴える描写が、カラカラに乾燥しがちなパズラーというミステリに潤いを与えているのかも、とそんな印象を受けました。

蛇足ですが。
実はこの作品、私、読むつもりはなかったんです。
“タランテラ”って……あきらかに、アレ、ですよね。
私の天敵の最たるもの。
赤い靴という童謡を見立てに使う以上、避けて通れないことですが、それでもソレはこの作品ではあまり重要じゃないということで、風に吹かれて飛んで行けーくらいの重さしかなくて、ほっとしました。
タイトルに惑わされちゃいかん、という一例ですね(笑)

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