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『ジョーカー・ゲーム』 柳 広司 著

2008/10/20(月) 17:01:18 柳広司 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 8月末に発売されて以来、書店ではどかんと目立つところに平積みになっている作品。帯の惹句も超豪華で気になっていた1冊です。
 うむむ。確かにすごいわこれ。
 未読のかたはこれより先にはお進みになりませんよう。

ミステリではありますが、それよりもエンタメ小説として際立っていると思います。いやミステリなんだけど。
連作短編集、と言っていいのか、時系列が違うとはいえ一編の長編としても読めそうな感じ。
【ジョーカー・ゲーム】
【幽霊(ゴースト)】※
【ロビンソン】
【魔都】※
【××(ダブル・クロス)】※
※は書き下ろし

どれも、<D機関>というスパイ養成組織及びこの組織の設立者である結城中佐を軸に、D機関の成り立ちから、時間が下って組織が軌道に乗った話まで。
視点人物が一話ずつ違うけれど、このD組織がいかに戦中の軍務省の中で確固たる地位を占めていくか、という時系列がものすごくスムーズで分かりやすい。
もう一気読みでしたよ。
てか止まらない。

戦前・戦中の日本がいかに狂っていたか、というテーマを、結城中佐という型破りな人間であり伝説のスパイ(その頃の情勢から見れば明らかに不敬罪その他で死刑になってもおかしくないほど)の絶対零度のような存在を通して、浮かび上がらせています。
これは今現在の独裁国家(例えばご近所のアノ国)の気持ち悪さを笑えないわ。
ほんの60年ほど前までは、日本もああやったんやもん。

今までのスパイ小説(…って、そういうジャンルありましたっけ?)とか映画の中で描かれるようなスパイの概念とは全く違う、ものすごいリアリティに満ちた作品。
派手なドンパチはもちろん無いし、スプラッタでもない。
ただ、人間というものをどこまで理解しているか。
相手の心を読み切り、さらにその上のそのまた上をいくような用意周到さ。
心理的駆け引き・神経戦の、引き絞るようなスリリングな展開。

そして何より。
視点人物の目を通して描かれる人達は、どこまでが味方でどこからが敵なのか?
一体誰が裏切るのか。
誰を信用していいのか。
私にも理解できるような、血の通った人は、愚か者なのか…。

とにかく結城中佐率いるD機関のスパイ達がどこまでもヒンヤリと冷たくて底が知れなくて、それでいてこの人達もある意味、戦争という狂乱の時代の犠牲者に思えて。
もしこういう個性を完璧に消したスパイに適した人が現在の日本にいるとしたら、さぞ居心地の悪い社会だろうと思います(笑)

このD機関のスパイ一人一人は全員、途方もなく過酷で奇天烈な選抜試験の後に養成学校の生徒になるわけですが、偽名と偽の経歴、職務上必要ならば実在の人間にすりかわる為に叩きこまれる他人の人生、という不確かさは、このスパイ達に実体を持たせない。まさしく透明人間であり、存在しない人間。
多分、トップの結城中佐そのものが、偽りであり虚構であるのだろうなと。
確かなものは、氷のような冷たさという温度すら持たない、ただ暗い目、だけじゃないかな。

なもので、お話としても、冷え冷えとした印象です。
軍務省所属の、上級将校や典型的な軍人の方がまだまともに思えるから怖い。
そういう人達には、天皇制に疑問をもつどころか上官に叩きこまれた絶対の観念を全て鵜呑みにしてしまうのですが、心の中には、自分の過去や現在のこと、両親や友人のこと、自分という存在を確かめる温度を感じられて、ほっとする自分がいます。

殺すな。死ぬな。

人混みに埋没しなければならないスパイにとって、人目を引く警察沙汰は絶対に避けなければならない。
スパイという身分がばれて自殺したり相手を殺してしまうなど、最悪のケースである。
結城中佐の持論ですが、建前としてはもちろんその通りです。
けれども、本名かどうかも明かされないあやふやな存在の結城中佐であろうとも、その言葉だけは真実なんじゃないだろうか。
それが最後のシーンですよね。
これで結城中佐に血が通った感じがしました。

それにしても、このスパイ達の仕事ぶり、手際の良さ、周到な準備から裏の裏のそのまた裏をかく徹底さ。
今でも世界中に散らばるスパイは、もしかしたら実際にこんな毎日を生きているのかなあと思うと、何一つ言葉が出て来ない。

とにかく凄いもの読んだなあという印象です。

最後の【××】が一番ミステリ色が強くて(まあ不可能犯罪と言っていいと思うから)、伏線も綺麗に配置されているしパズルのピースがかちかちと嵌まる音が聞こえるくらいに面白かった。この一編だけを取り上げるなら、本格ミステリ大賞にノミネートされてもいいくらい。
また、【ロビンソン】で、あのロビンソン・クルーソーをナナメから読むとそうなるかーという使い方が変わってて、感心しました。

帯の惹句は嘘じゃなかった(笑)
多分、各誌年末ベストにも確実にランクインすると思う。ていうか、もし私に投票権があるなら間違いなく一票を投じます。

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