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『エヴァ・ライカーの記憶』ドナルド・A・スタンウッド 著

2008/10/18(土) 01:48:11 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT

 有栖川先生の『乱読』にもチョイスされた本書。1979年に単行本が、1982年に文春文庫から刊行されたそうですが、当然そんな頃に読んでるはずもないので、今年の創元推理文庫から新たに復刊されたものが初読。
 一つだけ先に書くと。
 欧米人って、タイタニック好きよねえ本当(笑)
 文庫なのに単行本ほどのお値段のするこの作品、もう読まれましたか?
 なるべく真相をぼかすような書き方をしたつもりなので、未読のかたが読まれても構わないとは思いますが。
 先入観を持ちたくないかたは、これより先にはお進みになりませんよう。


535ページもあるこの作品、でも構成が抜群で、一度波に乗るとぐいぐい引き込まれました。
ハワイでの惨殺事件とタイタニック、という一見突拍子もない繋がりが、真相が明かされてみると見事に自然で無理がないし、これはこのまま映画にしても通用するんじゃないかな。もちろん、悲恋物語じゃなくミステリとして。少なくとも、レオ様のような存在もせりーぬ・でぃおんのテーマソングもナシ(笑)

第一部の事件、第二部の解明。
事件の方は、若い頃ハワイでの事件に巻き込まれ職務を放棄して警官を辞め、現在は作家として成功を収めたノーマン・ホールの、れっきとしたハードボイルド。
執筆の為に関係者にインタビューしようとして妨害が入ったり、あらぬ疑いをかけられて警察に捕まったり、ライカーの邸に不法侵入して大立ち回りしたり。
アメリカで好まれるハードボイルド小説そのものです。
二十年以上前の事件の断片、タイタニックの沈没という悲劇から命からがら生還した人達の秘密。タイタニックを引き上げようとするライカー老の思惑。仕組まれた事故と事件。
ノーマンが職務を放擲したハワイの殺人事件がどす黒いトラウマになって、長い間苦しんできた彼を、もう一度関わらせることに何の意味があるのか?
そういう伏線が散りばめられています。

ただ。
殺人事件の描写はどれも、かなりエグイですね。
ホラーかスプラッタ映画のようでもあります。読んでるだけで血生臭い…。

一転、第二部の解明ですが。
これほどのページ数をもった解決シーンは、多分ほとんど無いと思う。
そしてそれがブレない。
エヴァの沈められた記憶を呼び覚ました時、語られたタイタニックでの真相は、読むのも辛いほどでした。これは好き嫌いが分かれると思う。
ちなみに私はダメでした…。
出港してから沈みゆくまでのタイタニックの様子を、いかに沢山の資料から書きあげたか、作者の奮闘ぶりが窺えるのは確かですが、その中で仕組まれた凶悪すぎる犯人の描写が空恐ろしい。泣きそうになってしまいました。

そんなパニック小説と、そして当時10歳の少女の悲惨な記憶と海底から見つかった古いフィルムに映っていたもの、それらを総合して組みたてた推論により導かれた事件の真相に迫る本格ミステリとしての要素。
第二部に入ってからは、徹夜覚悟の一気読みでしたよ。

最後まで読み終えて、一番感心したのが、巻頭の登場人物のリストだと言ったら、既に読まれたかたに納得していただけるでしょうか(笑)。
これは騙されるわー!
根っから善良な人と、悪魔よりもまだ恐ろしい人が同列に並んでるんやもん。
ノーマンの命を狙った奴と、一連の惨殺事件の犯人。
ライカー老の黒幕っぷりと人間性に多大な問題があるのに腹を立て、エヴァには心からの同情を。

実はですね。
タイタニック、という題材だけを取り上げるなら。
以前ここでご紹介した、『牧逸馬の世界怪奇実話』の方が、読物としては格段に面白いです!
読み終えて数箇月経ってるのにまだ、実際あのタイタニックという船になにがあったか、という実話の内容をそらで思い出せるくらいですから。
だから。
この『世界怪奇実話』を読む前に、この『エヴァ・ライカーの記憶』を読んでみたかったなあとつくづく思いました。多分、もっともっと、心底楽しめたと思うんですよね。
本当、「事実は小説よりも奇なり」ですよ。

英米黄金期の探偵小説、ホームズのような円熟味やエラリー・クイーンのような鮮やかさはないです。物語のもつ陰鬱な雰囲気の所為でしょうが……。特にEQのおおっ!と膝を打つようなミステリが大好きな私には、本格ミステリとして大傑作だーとか言うことはできません。
でも名作であることは事実です。
少しずつ明かされる殺人鬼の猛毒を吐いてるような息遣い、相次ぐどんでん返しにハラハラドキドキのスリルを味わいたいならぴったりの作品だと思います。だって、最後の最後まで、探偵役のノーマンは走り回ってますからねえ☆

あ、そうそう、この作品を読み進めていて、ものすごい偶然の一致に大笑いしましたよ私。
今、お風呂で読んでいる本が、
『ヴォイニッチ写本の謎』
これ、詳しい内容は全く関係ないので省くとして、なんと中世から現代までの暗号の歴史、暗号解読の取り組み方などを事細かにレクチャーしてあるんです。
で、この『エヴァ・ライカー』に、実践編とでもいうか現代ならではのバリエーションような暗号解読のくだりがあって、いやもうここだけは笑いながら読みました。『ヴォイニッチ写本の謎』を読んでて良かったとこれほど実感したことはありませんよもう(笑)
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