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『ホームタウン』 小路幸也 著

2008/10/10(金) 21:13:44 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
(再読というかある意味初読というか…)
 2005年に発表された作品なんですが、何故かもう流通分しか手に入らないそうで…(泣)
 大型書店でなら、この薄い水色から下にいくにつれて濃さを増すブルーの、印象的なカバーを見る事もできるかと思うのですけど、こうしてめでたく文庫化されたので、未読のかたには手軽に文庫を読んでいただきたい。
 なので感想というよりご紹介。
 出世作となった(私的には『HEARTBEAT』がブレイク作だと思ってますが…)『東京バンドワゴン』の直前の作品で、小路さんの作品の中でも特に大事な1冊だと思うので、是非♪



えーと、どこから書こうかな。
お話の筋としては、札幌の百貨店で働く行島征人と妹の木実。過去に凄惨な現場を目撃してしまったこの兄妹は、自分の中に流れる血を呪いながら生きてきた。
何年も会わずにいた木実から、近々結婚するという手紙が届くが、何故か木実は行方をくらます。妹の婚約者までが失踪しているという事態に、きな臭い裏事情と、家族への屈託を交差させながら、征人は真実を探る為に動き出す…。

文庫化にあたってかなり加筆なさったらしいので、まずは単行本を持ってきて再読。
で、文庫を広げたら、ほんとだー!早くも一ページ目から、ちょこっと変わってる。
単行本に目立つ誤植があったわけじゃないので、小路さんがもう一度最初から目を通してみて、手を加えたってことでしょうね。全体的に違うところがいくつも見受けられました。
単行本では「………」となっていた部分が省かれたり、征人さんの内面の揺れ、心の動きが付け加えられていたりして、すっきりした感じもするし、より内省的になってるなーとも思いました。

この作品も、最新刊の『空へ向かう花』と同じくらいに重いテーマで、『東京バンドワゴン』のような明るさとか爽快感はないです、はっきり言って。
ただ、共通しているのが、<家族>。
征人さんと木実ちゃん兄妹の受けた心の傷は、多分テレビのニュースやワイドショーなんかで一箇月はネタにされそうなくらいに凄惨な事件によるものです。
(ただ、こんな事件が強ちフィクションには思えないほど、現実に起こっていそうな気がするのが哀しいなあ……)
そして、最後に明かされる征人さんの告白は、読んでいて辛すぎる。それまでは、なんでこの兄妹は一緒に住んでないんだろう、なんで何年も顔を合わせることすらしなかったんだろう同じ立場なのに不自然な、と訝るのですが、この告白ですとん、と腑に落ちるのです。

解説の佳多山さんが書いておられますが、普通の、温かい<家族>を望んで望んで、でもどうしても得られないこの兄妹が、たとえ長い間会っていなくても感情的に同じだった、同じ道をトレースしていた、とあります。

で、私はちょっと違う印象。
<家族>というものに対するスタンスが、過去の事件を経て根本的に違ってしまってる。
ただただ温かい柔らかな家庭を夢見る妹。
対して、自らに十字架を背負って生きる兄。おまけにこの十字架がひとつじゃないのが……(涙)
だから、私には、征人さんが家族を持ちたいとはこれっぽっちも思っていないと。顕在化していないだけで、緩やかな自殺願望とでも言うべき闇から逃れられないんじゃないかと。

これ、どこかで見たような……?と思ったら、すいませんまた火村先生を引っ張り出してきて申し訳ないのですが、火村先生の心の内と似てるんじゃないかなあ。
自分の未来をあえて考えないように、ただじっと息を潜めて感情を抑えて。自分の感情が暴発するのを何より恐れてる火村先生と征人さん。呪わしい記憶が消えないことを自覚しながら与えられた役割を生きる。
火村先生の、「人を殺したいと熱望したことがある。だから、殺人者をこの手で叩き落とす」という飛躍した論理も、おそらく征人さんはすんなり納得できると思う。アリスさんがどうしても踏み込めない火村先生の深淵に、一番近付けるんじゃないかなと。

私がこの作品大好きーwwwと言って憚らないのは、こういう類似点からきてるんでしょうね。

欧米の飲んだくれ私立探偵ストーリーじゃないけれども、れっきとしたハードボイルドなので、展開が早くてぐいぐい読めます。

ばあちゃんと里菜ちゃんのオアシスのような存在にほっとして、カクさんや草場さんのようなイケてるおじいちゃん(失礼)にグッときて、隠されたもう一つの家族に同情して。
いろんな感情を体験できる1冊。

今の日本は、後期高齢者制度なんて最低なことしてますが、このカクさんとか草場さんとかばあちゃんとか、本当は、このお話のようにたくさんの経験を若い人に伝えるという大事な存在であるはず。儒教とかモラルからくる強制的に老人を敬え精神じゃなくて、真正面から向き合い自然に尊敬の念を抱かせるという心の機微。
個人的に今はまだ元気な祖母と、もっと話がしたいなご飯作ってあげたいな、と思わせてくれる作品です。


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