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『火村英生に捧げる犯罪』 有栖川有栖 著

2008/10/03(金) 10:32:23 有栖川有栖 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ヒムラーとしては嬉しくもあり、元会員としては複雑でもあり…という、微妙な短編集です(苦笑) 
 【オール讀物】掲載時に未読で、おまけに10/9の東京、10/18の大阪でのサイン会までぐっと我慢なさってるかた、さぞお辛いでしょうが、もうしばらくお待ちくださいませ(笑)

 余談ですが、以前の『モロッコ水晶の謎』が発表された時、明海ちゃんの胸に光る水晶のペンダント、という描写にドキッとした私(直にお会いしたことのあるやすこさんやピコさん、あすかさん冬原さんならご存知ですよね)。
そして今回の『雷雨の庭で』では、登場人物の彼女の名前にドキッとしました(笑)。
私の本名と一字違い。同じ部分の漢字も一緒だったので……。
こんなちっちゃーい、個人的なことで嬉しくなる私は、相当イタイ奴ですね…★


この中で一番古いのは、最初の【長い影】。2004年11月号ですってよ。もうそんなに前のことになるのかー…。
だからって訳ではないでしょうが、やっぱりなんと言うか昔のお話だなあ、と思ったのは私だけでしょうか。短編に限れば発表順に並んでるから、余計にそう感じるのかも…。
そしてそれくらい昔の感じがするーというとおり、ほとんど中身を憶えてなかった……ヒムラーとして申し開きができませんね…(涙)
いわゆる“ミッシングリンク”もの、ですよね、これ。
動機から見ても真っ黒けの容疑者と一見無関係そうな証言者、そして被害者の接点。
ことさらに16年前とかを強調してあるので、この容疑者・今沢が犯人だというのはいいとして、証言者というか目撃者である桑原氏までが昔の仲間だっという証拠を、被害者が後生大事に保管していたというのは、この桑原氏と殺人事件の関連を少し薄める効果があるのかな、と思いました。脅迫に使う気満々だった被害者に同情の余地はないよ、という。
それにしても、そのミッシングリンクの小さなヒントが古ぼけた写真に写ってる車の方で、森下君が言った電化されていないディーゼル線じゃなくてアリスさんの本領が発揮できなかったねー残念!ちょっと笑ってしまいましたよ。

短編ばかりを先に書きます。
と言っても、【あるいは四風荘殺人事件】は、発表当時からあまり思い入れがなくて書くべきこともそうそうないんですよね…有栖川先生ごめんなさい。
多分、火村先生を騙すとまではいかなくてもちょっと試してやろうとした片桐さんとアリスさんのコンビが、納得できないからだと思います。

火村先生が事件現場に赴いてフィールドワークを重ねるのは、犯罪というものの性質とか背景とか、そして犯人の声とかそういうものを直に感じ取る為であるのに、アリスさんから又聞きして名探偵ぶりを面白がって(いるようにしか見えない)ミステリを書いてみませんか?とコナかける片桐さんの、ある意味無責任な様子が気に食わないんです私。これは以前の沖縄でのお話でもそうだったので、私の片桐さんの評価は異常に低いです(苦笑)

【火村英生に捧げる犯罪】
この中で一番好きです。
アリバイが崩れたのは、火村先生の代わりに京都に出向いたアリスさんの存在だとしても、これもひとつのアームチェア・ディテクティヴじゃないかなあ。
ちょっと手が込んでるけれど、犯人の思考を辿れば、なるほどそんな小細工も考えつくのか。
作家にとって、あんたの作品は盗作だ!といわれるほど不愉快なものはないでしょう。だからアリスさんを東京まで誘導できると考えたんでしょうが、犯人には残念なことに、作家シリーズの有栖川有栖というミステリ作家は、譲れない一線とかプライドとか、そういうものをきちんと持ってるんですよね。そして、その矜持ゆえに、浅はかな犯人のおかしたたった一つ間違えた日本語を、敏感に拾い上げることができた。
種明かしのシーンでの、稀代の名探偵になった気分や、という謙遜は、そのまま素直に受け取っていいと思う。だから、実際の現場にいなくてもだいたい把握できた火村先生も、アリスさんに委ねたんでしょうしwwいいなあ、こういう親友ってww

私が一番印象深いのは、アリスさんの「メインターゲットと言われて、何だかほんのりうれしいが」という一文(笑)
語り手の目線でかかれたミステリは数多くありますが、他の先生のミステリではついぞお目にかからない、有栖川先生ならではの言い回しですよね♪

あ、それと、弁護士って、いくら家族でも、法廷内でこんな証人とこんなやりとりをした、なんて喋っていいの?守秘義務は?
いくら非公式に関わってるつもりの火村先生でも、もう警察関係者と法曹界ではとっくに有名人ですよ(笑)何が無名の一研究者なもんですか!

【雷雨の庭で】
これまた派手さはないけど有栖川先生らしい手慣れたミステリですよね。
この短編集はどれも犯人と目される人を隠さないでこの人しかいないだろう、というものばかりですね。
このお話の場合は、動機というより妄想によって引き起こされた事件という色合いですが、正当防衛か過剰防衛かそのギリギリのラインに乗せることで、事件として成立させてあるんですね。で、このラストのアリスさんの想像が、この直前に発表された『残酷な揺り籠』でのアリスさんの役割と繋がるところがあって、これからの作家シリーズは、アリスさんはこういう役まわりになるのかなあ、と思いましたよ。
そうそう、屋根に上るところで、身体の軽い火村先生とじたばたしてるアリスさん、作家シリーズ第1作目の『46番目の密室』のあのシーンを思い出したのは私(笑)。

さてさて、次はショートミステリですが。
【鸚鵡返し】【殺意と善意の顛末】【偽りのペア】【殺風景な部屋】
J-ミスが無くなってからは、携帯に保存していたこれらのミステリを宝物のようにして読んでましたよ。とうとう紙になってしもたなあ……。
でも、やっぱりこうしてみると、携帯で読んでたのとは印象が違いますね。
【鸚鵡返し】は、今の所、唯一の火村先生一人称。
あと書きで有栖川先生が「作品を圧縮するため」と書いてらっしゃいますが、火村先生のセリフのみのミステリなんて、これっきりかもしれない。レアものですよねww
【殺意の善意の顛末】と【偽りのペア】は、両方とも警察の動きとか刑事さんのセリフとかを極力端折ってあるのと相対的に火村先生とアリスさんの会話が際立っていて、仲の良さが微笑ましい、というか、正直ちょっと恥ずかしい…///こんな親友って、現実にはそうそういないよー!?
それはそうと、スリッパ。買って間もなくならまだ履きクセも付いてないからわかるけど、自分の足に馴染んだスリッパって、間違えるかなあ。特に火村先生とばあちゃん、色を区別してるんやからさ、右は右、左は左で履かないと気持ち悪い違和感があると思うんやけど…。火村先生、色が互い違いでも右左があっていればそれでいいのね(笑)
【殺風景な部屋】は、文字通り火村先生の安楽椅子探偵ものですが、ちょっと考えればすぐ分かるものを、携帯サイトで3回に分けて書かれていたんですからスゴイです。そこまで引っ張るには、余程上手く隠さないといけませんしね。

学生シリーズのガチガチのど真ん中本格ミステリからすると、かなり緩めなのは認めます。
でも、作家シリーズは、有栖川先生が仰っているように、火村英生という探偵に様々なタイプの事件をかかわらせるために続いていくものですから、私は素直にそれを喜びます。
『スイス時計』のような直球ど真ん中のミステリばかりをを火村先生に望むのは、かえってマンネリ化してしまうし、火村英生という人物像にも微妙にズレてしまいます。ああいうのは、たまーにあるのでいいです(笑)

うお!長くなったー…ごめんなさい。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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