こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『ギフト』 日明 恩 著
日明 恩 > 『ギフト』 日明 恩 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『ギフト』 日明 恩 著

2008/10/03(金) 10:24:20 日明 恩 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 初読の作家さん。漢字だけを見たら男性かと思いますよね。たちもりめぐみさん。
 メフィスト賞作家さんなので、その受賞作『それでも、警官は微笑う』を読んだことのあるかたは多いかなあ。
 私が毎日お邪魔してるところで紹介されて、これは是非読んでみよう!と決めたはいいけど、図書館の予約待ちで、こないだやっとまわってきたんですよね。
 これ、多分ミステリとはいわないと思う。けれど、死にまつわる謎を紐解いていく過程がまあ広い意味でのミステリーと言えます。いやそんな御託はどーでもいい、とにかくオススメ!未読のかたは一度手に取ってみてください。



レンタルビデオ店の店員をしながら他人との関わりを極力避けてひっそりと生きる主人公の須賀原さんと、あるDVDの棚の前で何故か涙を流す少年・明生。
ある日、その少年が交差点で赤信号なのに飛び出そうとしたところを助け、それから少しずつ距離を縮めていく2人。
少年には、どうやら死者の姿が見えるらしい。
だったら、どうしてもききたいこときがある。助けてほしいことがある。
そんな気持ちを抱えて、須賀原さんと明生くんの、死者との対話、そして生者との会話が展開していきます。

つまり、ゴーストストーリー。
亡くなった人は、残してきた人に何か言いたいことがあるらしい。
それができるのは、今の所、明生少年の力だけ。
そして、明生くんに触れることで同じように霊というか死者の姿を見ることができる須賀原さんの、経験だけ。

須賀原さんが過去に、ある少年を死なせてしまった、という悔恨の念が凄まじく重くて、2年か3年ですっかり容貌が変わってしまうほど老け込んで、ただひっそりと忘れないためだけに生き続けるという暗闇。

生まれつき、人には見えないものが普通に視えていたばかりか、隠し事までも視てしまう、明生くんの地獄。四六時中ずっと死者が視えてそれを頼りとばかりに死者に懐かれて、そんな少年には視えていないフリをし続けるしか術がない。イヤフォンが手放せない、歩くときも足元しか見られないというのは、一体どれほど哀しいことなのか、こんなのは実際、エハラさんみたいな異能者でないと分かりません。

最初は、事故で半身が潰されてしまった老婆。
通り一遍の交通事故死だったはずの老婆は、しきりに何かを訴える。それが何かを探るうちに、隠されていた事実が少しずつ現れる。
次は、人間に虐待されて殺された哀れな犬が、気まぐれに首輪を着けてくれた須賀原さんに霊体となってまで望みを叶えてくれた健気さ。涙が出ましたよもう…。
3人目は、宝箱を探す女の子。ずぶ濡れのその姿に、溺死・水死を疑うが、真相はもっと悲惨だった。それでも、大切な人を守ろうとする魂の力。
次はかなりの困ったちゃん。取り得のない自分、夢のない自分を認められずに、その責任を全て周囲におっかぶせることで、自分自身に嘘を吐き通す、絶対に友達になりたくない女性(笑)

そして。
須賀原さんが“殺してしまった”少年。
自分はダメな奴だとそればかりを繰り返しながら、2年以上同じ場所で止まっていた「警察官の息子」。
彼の月命日には必ずお焼香をあげる須賀原さんの心の暗闇と孤独を知らず、自分のことだけにしか意識が向かなかった彼を目を覚まさせたのは、須賀原さんを何とかして助けたいと願う明生くんだった。
この明生くんの選択が可哀想でどうしようもないんですが、それでも須賀原さんに出会えたことで何かが変わり、未来を見つめることができるようになったのは、明生くんの成長ですよね。

須賀原さんの心が癒える日は来るのか。
明生くんが能力をコントロールできる日は来るのか。

孤独と絶望と、淋しさと哀しさで満ちた2人の魂が、引かれ合った奇跡。

“シックス・センス”のDVDの前で涙を流す姿を、本来は彼の両親が見なければいけないのですが、息子の存在の半分を枷だと思っている両親には明生くんの涙は心に響くことはないのでしょう。息子そのものを見つめていないから。

子どもの孤独と逃げる親。
先日の小路さんの『空へ向かう花』とも共通する問題ですが、また同じようにゴーストを扱うめぐりんシリーズとも似ていますが、やっぱり全然トーンが違う。
ラストに同じような救いがあったとしても、小路さんの作品は主人公が逃げていないので、頑張れ頑張れと応援する。
この『ギフト』はどうかと言うと、本当に救われるのか?という不安が最後まで残る。
そんな感じ。

でも最後の、宇田川家での両親の告白は、胸を打ちました。
毎月悲痛な決意でお参りにくる須賀原さんを「手放したくなかった」。
こんなセリフを言わせるって、すごいことだと思います。
両親も須賀原さんも、そして当人である正義くんも、それぞれが自分を責めて責めて、涙も枯れ果てるくらいに嘆き苦しみ、警察官ということに絶望しながら、それでも息子を忘れてくれるなという慟哭を生きる支えにしている須賀原さんを手放せないと言った両親の心。
これからは、この手放せなかった、という一言が、須賀原さんの支えになるでしょう。

須賀原さんにとっての明生くんがギフトだったのか、明生くんにとっての須賀原さんがギフトなのか。
もしくは、想いを残した死者にとっての、須賀原さんと明生くんの存在がギフトであるのか。

償いとか救いとか、そういうテーマの物語。ほぼ似たような作品である『償い』(矢口敦子著)よりも、私はこの『ギフト』の方が好きです。

スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。