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『ペガサスと一角獣薬局』 柄刀 一 著

2008/09/28(日) 02:35:58 柄刀 一 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT

 柄刀先生のは、実はそれほどの数は読んでいません。デビュー作とごく最近のものを数冊ってとこです。なので、良いも悪いも判断するのは間違っているのでしょうね。
 ついこないだ発売されたばかりですが、読了されたかた、ネタバレおっけーなかたのみお進みくださいませ。
 未読のかたへ。これはいいです!超オススメ!是非読んでみてくださいねww


この『ペガサスと~』は、南美希風くんのシリーズ短編集です。
美希風くんのものは、昨年の大長編である『密室キングダム』以来のこんにちは。
…で、昨年末に『密室キングダム』を結構なんだかんだと批判した私。
そして今回。
いやー、これはイイ!
どこかのサイトでもありましたが、このシリーズに限ったことなのかどうかはともかく、柄刀先生の作品は、長編よりも中短編の方がよく纏まっているような気がします。
特にこの短編集は、北欧とか霧深いイギリスとか、そんな幻想的な雰囲気を纏いながら伝説や神話とともに生きる人達の描写が美しくて、読み進めるうちに、ほうっと静かなため息がこぼれるような、そんな感じに満ちています。
前作に感じた無理矢理感がなくて、美希風くんが自然に生き生きしているので感情移入しやすいことも好ポイント。

【龍の淵】【光る棺の中の白骨】【ペガサスと一角獣薬局】【チェスター街の日】【読者だけに判るボーンレイク事件】
この最後の【読者だけに判る~】のみ書き下ろし。全く独立したものではなくて、前の作品のどれかとリンクしています。

うち、【光る棺の中の白骨】は『ジャーロ』に最初に掲載されたのち、『本格ミステリ05』および『ザ・ベストミステリーズ2005』にも編まれた傑作。
私すっかり忘れてたんですけど、読んで2~3ページして、あれこれどっかで読んだなーとやっと思い出しました(鈍っ)『ジャーロ』やったかな。

この不可能犯罪に見える事件のトリックはスゴイです!
……とか言って実は、『ジャーロ』での初読時は、それほど印象には残らなかったんですよ。これは多分、こうして一連の短編集の中に納まってこそ本領を発揮するものだと思うのです。北欧の息をのむ自然や人々の生活感がしっかり頭に入ってきてこそ、生きるトリック。
推論を立てる彼らに、僅かでも可能性のあるものを一つずつ潰していく過程を踏ませた上で、実証可能なロジックを組み立てていく。この消しこみ方が素晴らしいです。これぞ本格!
犯人のバックボーンにはいささか唐突な気もしますが、だからこそ事件の真相に至る突破口になったと思えばまあ許せます。またそれを補う為にというか活かす為に、現地の日本人の2人の存在が際立たせてある。もともと白夜の国と日本は遠すぎて、それほど親和性がないので、高部と彩乃がそこに居る必然性を強めるには日本を関連づけるのは当然ですね。
それにしても、イメージは○○○○○○とは。
いや、事件発覚時の周辺の描写で、なんとなく想像はつきますけどね。
これ、ヒムラーにはうふふものですよね♪(常に発想が火村先生がらみなのは、もう諦めてクダサイ……/笑)ただ、これをする火村先生は、向こう側に飛んでしまったことになるので、あまり考えたくはないですが……。

また、次の表題作。
私は全体の中で、これが一番好きww
霧深いイギリスの片隅にある小さな村。未だに敬虔なキリスト教徒の多い地域で、聖書を元に生きる人々。そんな村にあるキリスト教とは相容れない土着の宗教観に基づいた老婆の営む薬局と、ユニコーンの目撃談。そしてペガサス。
こういう背景で、ある痛ましい事件が2件立て続けに起こってしまうと、村人のヒステリー状態はさもありなん。
そんななか、一服の清涼剤とも言えるのが、薬局を営むグラディスおばあちゃんと孫娘のクララ。この2人がいるからこそ、伝説にも神話にも属さない、人間の世界での精神性が高められていて、涙が出そうでした。心が綺麗な人、昔の日本人も持っていたはずの素朴な一面。そういった至宝がまだ残っていたんだこの村には!と思わせてくれる、柄刀先生の表現力。
一部では、小説としての柄刀ミステリには読ませ方が足りないという意見も目にしますが、多分、短編であれば冗長になることもくどくなることもなく、きりりと締まった小説になるのでしょうね。
話を戻して。
この【ペガサスと一角獣薬局】というタイトルは、いいです。ぴったりです。
これしか嵌まるタイトルはないでしょう。
そしてペガサスとユニコーンという伝説上の生き物について語られる、その属性が見事に事件の背景と繋がっていて無理がない。すんなり納得できました。
例えば高田崇史先生のQ.E.Dシリーズで取り上げられる神話や伝説と現代で起こる事件の真相が、乖離している気がしないでもないのに比べて、これはペガサスとユニコーンという存在が語られるからこそ起こった事件で、それなしではあり得ない。この必然性がめっちゃ綺麗。
終盤の美希風くんによるユニコーンの仮説にはかなり驚きましたけどね。

あと、その次の【チェスター街の日】。これはあのシンボルがミスリードに使われてる上に、主人公格の草薙さん自身も気付かない草薙さんの叙述トリックだったとはねえ。できれぱこの後、黒幕の一味との決着がどうなったのか、ちらりとでも匂わせておいてくれればなあ、とも思うけれど、もちろん柄刀先生はわざとその部分を曖昧なままにしておいたってことでしょうね。

久々に柄刀先生の作品でいいモノ読んだなあ、と素直に思いました。

この前の『黄昏たゆたい美術館』も読んでます私。
同じ短編集なのですが、どうもあのシリーズは印象が薄い。
絵画修復士という独特の職業を探偵役に据えているのに、それを活かしきっていないような、別に画商でも贋作家でもいいんじゃ?と思うほど、軸足が絵画におかれていて、修復士だからこその目線に乏しいんです。
そこへいくと、この南美希風という探偵役は、特に今回は実にスマートに行動していて無駄がない。心臓が弱いからこその容姿、心配性の姉・美貴子とのやりとり、カメラマンという職業と美希風くんの心臓移植以降との関連、どれも自然です。

また柄刀先生のトリッキーなミステリがうまく繋がっていて、見事の一言。

ただひとつだけ、いちゃもんをつけさせてもらうなら、以後の書き下ろしは必要なかったんじゃないかとも思います。
多分、繋がりを補強する為というか、関連の事件に対するアリバイトリックをより完全にしたかったんでしょうけど、別にこれがなくても大丈夫ではないかと。

ま、それはさておき。
短編集ではありますが、今年のベスト候補になる1冊でした。
いいもの読んだわー♪

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