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『首鳴き鬼の島』 石崎幸二 著

2008/09/13(土) 10:54:24 石崎幸二 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
……………。
トリックは確かに良く練られているし、キャラクタの役回りも気が利いている(特に解決シーンのあたり)。
真相にはそれなりにほおぉと驚きもしました。

けど………。
という訳で、お願いです。
ココを御覧のかたで『首鳴き鬼の島』を読了されたかた、これを読んでどんな風に思ったのかを教えてくださいませんか。

トリックがなまじ良く出来てる分、ミステリとしてハイレベルであることは納得できます。現代の捜査方法の一歩先を行っていると思うし、一般的な知識の盲点を突いてるから(専門分野ではとうに自明のことでも。ちなみに私はこの分野の本を貪り読んだことがあるので、知ってましたし見当もついた)新しい試みだとは素直に認めます。

でも、お勧め!是非読んで!とは言えない…。
誰が殺されるか分からない生命の危険の只中にあるというのに、キャラクタの誰からも危機感や切迫感や絶望感が感じ取れない。
なかなかにエグイ描写やトリハダもののシーンがあるのに、実際にぞくっと伝わらない。
お約束の孤島・クローズドサークルに見立て殺人、なのにこんなに淡々とさくさくと人が次々殺されて、でも誰も悲しんでいない。遺体に敬意も払わないどころか手も合わせない。

いくら本格ミステリがトリックやロジックを優先させるからと言っても、またそういうミステリならいっそトリックやロジックを徹底させておいて、人間が書けていなくてもいいとは言っても、これほど軽い上滑りした物語性では、真相が明かされた時のカタルシスや一種の快感みたいなものが得られないと思います。よく思い返してみると、これは小説というよりも、お芝居の顔合わせで俳優さんに渡される台本のような印象があったのでした。

でもこの『首鳴き鬼の島』は、『本ミス』や『このミス』でもランクインしてるし、また5月の本格ミステリ大賞の最終候補の一つ前までは残った作品でもあるのですよ。
プロのライターさんや書評家さんが、また選考委員の先生方が、一体どこに惹かれたのか。私の読み方のどこがおかしいのか…。
うーん……泣きそうですよほんまに……。
これならこないだ読んだ『インシテミル』の方がまだ理解できます。

巷で評判になってる作品を読もうかどうしようか迷った時、私は読了した作品について自分と同じような感想を持った書評サイトさんやプロのライターさんのサイトに行って、その作品の記事を読みます。プロですから当然ネタバレはほとんどしてないし、あまり乗れなかったという内容だったらかえって読みたくもなってくる天の邪鬼。当たりハズレを覚悟の上で、結構いろんな作家さんに手を出す私。
また初読の作家の作品だったら、『名探偵ベスト101』とか『ミステリ・クロニクル』などを参考にして、自分の許容範囲を広げていくこともあります。

でも、本格ミステリといえど、やっぱり小説なんですよね。読者にとっては。
なら、小説としてのクオリティは当然高くあって欲しい、ミステリとしての要素は好みというか嗜好性の問題なので。

今回はこれが逆だった。ミステリとしては一定以上のレベルなのに小説としてはどーにもならない、と思ってしまった。
これが何故か悔しいんです。
読んだ時間を返せーとか、本代がもったいないとは全く思わないのに、なんでこんなに悔しいんだろう。
おそらく、つじつまの合わないキャラクタの動きや、犯人の動機と犯行の計画性がなんとなく噛みあわないような、納まりの悪さが強烈に残ってしまったのかも。もう少しだけでも纏まっていればなあ、ネタはいいのになんてもったいない!という思いがあることにしばらくして気が付きました。

破綻しているのではなく、肉付けが不十分だったのかもしれないなあ。
なんせ“台本的”だから。

(2008.04.09)
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