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『星読島に星は流れた』 久住四季 著

2016/11/16(水) 20:02:03 ミステリ・その他 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)
久住 四季
東京創元社
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『星読島に星は流れた』 久住四季 著(東京創元社)
 いやー、この作品、ツイッターのミステリ界でものすごい話題になりましてね。まずこの久住四季さんというお名前だけでもコアなファンが大喜びで(ラノベで知名度の高いかたで、その作風のミステリの強度から将来の本格ミステリ作家としての期待も背負い、しかしいろいろあって新作が出せなかったそうな。詳しくは知らないんですが)、そのうえこの新刊が絶賛絶賛で。そこまで言われたら読んでみたいじゃないですかw
 ほぼ一気読みでした。すんごい読みやすい!
 本格ミステリとしても、今年のミステリランキングにはぜったいに入るだろうと思います。
 ……それなのに、褒めてるんだかなんだかよく分からない感想になってしまってすみません、褒めてるつもりで書いたんですよ~(苦笑)





ラノベレーベル、電撃文庫からのデビューなんですね、久住さん。
そのラノベの特徴として挙げられる、キャラクタの立ち方。これがこのミステリ・フロンティアの新刊、初のミステリ四六判単行本でもいかんなく発揮されてました。

とにかくキャラ設定と、物語への溶け込ませ方が絶妙だなと。一人ひとりの影の付け方が巧い。

主人公で視点人物の加藤盤さん(日系アメリカ人です)がね、基本的なパーソナルデータにしても、星読島の集いに参加することになった経緯と、事件にのめりこんでいく様子にしても、ほかの登場人物にもそして読者にも、たぶんほぼ嫌われないでスッと受け入れてもらえるタイプ。

探偵役は個性が強い方がいいのか、それとも没個性でただ推理する機械として動かす方がいいのか、それは読者それぞれの好みでしょうけど、この加藤さんはどんな感じかというと……うーん、集いに参加しようとした動機や人間性と、推理に没頭する様子やひらめき加減とか、そういうものがほぼ同じバランスで注入されてる気がしました。
エキセントリックな探偵なら読者に強烈な印象を持たせるけど、この作品ではそんなこともない。
天才型の探偵でもない。
でも、たった四日間のことではあっても見聞きしたものはほぼ記憶できるだけの能力があって、それは「医師」という職業が担保してる。(もっとも、頭脳明晰さだけでいえば美宙ちゃんが探偵役の方が適任だったんじゃないかと思うんですけどそれはたぶんラノベ展開なんでしょうね)
他の参加者に対して壁を作らないフランクさと、参加者のなかで一番天文学に疎いのに(疎いからこそ?)他の誰からも疑われない、神/作者の代理人。

集いに参加した他のメンバーも、加藤さんの日常に登場する人たちもみんなそこそこいい人で、結局のところ謎の島で謎の集いを主催する博士が一番つかみどころがないタイプ。
キャラ読みとまでは言わないですが、とにかく良くも悪くも強烈に引っかかる人がいないのですいすい読めました。

ミステリとしては、というと。

……これ、ネタばらしになってしまうかな、わたし似た感じのを読んだことあるですよ、どなたとは言いませんがわたしの敬愛する新本格の大御所先生の某長編www

真相の明かし方も事件の本当の狙いも、同じ先生の別の某長編によく似てます(苦笑)

いやもうミステリにもそれなりに歴史があって、現在世界中にたくさんの推理作家さんがいて、ロジックもトリックも先行作品の亜種だったりアレンジだったりするわけで、似た作品があっても不思議じゃないですよね。
だからといって別に怒ってるとかじゃなくて、どうしても似通ってしまうミステリにどうやってオリジナリティを持たせるか、そこを楽しみに読んでたくらいで。

加藤さんの目と心を通してわたしたち読者も他の参加者への親しみを感じさせておいて、でもこの中から誰かが被害者になって誰かが加害者になるわけで、ミステリの展開を愉しむのとキャラクタへの思い入れを少しずつ引っぺがすのと、組み立てては壊される推理に酔いながらサスペンスにドキドキする。
つまり、愉しかったですよ(笑)
贅沢を言えば、若干小奇麗に纏まりすぎかもしれない。
もうちょっと苦味があってもよかったかなと思います。さっき書いた大御所先生の某長編と某長編には、もう少し苦くてやりきれないものが残り、それが余韻になってました。
叙情性ともいいますか。作家の個性または癖と呼ぶものでもいい、何度読み返してもいつも終息の安堵感とともにほんの少し苦い何かが残るもの。

この作品にそういうものを望むのはお門違いなのかもしれませんが、わたしにはやっぱり、キャラクタだけじゃなくて、ストーリーにも読者の心をさっと一撫でするくらいのもう少し長い影があればな、と。

ミステリとして出来がいいのは確かです。
だからこそ、何度再読しても耐えうる「物語の強度」を望んでしまう。
できればまたこういうガチガチのミステリを書いてほしいです。


(2015.5.28読了)
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