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『踊り子と探偵とパリを』 小路幸也 著

2015/06/18(木) 14:56:11 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
踊り子と探偵とパリを
小路 幸也
文藝春秋


 おっっっっもしろい!!ブラヴォ!!
 そして実に小路さんらしいお話。
 いい人、というより、心根の真っ直ぐで誠実な若者と、正体不明というかほんの少しの胡散臭さをまぶして頭のキレと手際がよくて大らかでカリスマ性のある年長者の、友情と信頼と愛情がみっしり詰まった、楽しいあたたかい物語。
 そしてね、恋をする、愛に生きるというこっ恥ずかしいけど大事なものを、ちょっと懐かしく思い出したりもしていました。




人生賛歌。
愛こそすべて。

確かに、このお話はロンドンやニューヨークじゃなくパリが相応しいですね。花の都、わたしは行ったことないけどたぶん恋の都。人生を愉しむ人々、そして世界中の憧れの地。

アスファルトに敷き詰められた現代の日本でも、こんな古風さを演出することはできても、人生そのものの舞台にするには向かない。

少し古風で、現代との境界線がなくて、愛や恋を隠さないで、友情の理由を詮索しない。いろんな人種が共存していて、その多様性でますます輝く街。
パリって、ヨーロッパ大陸って、日本とは違いたくさんの民族が入り混じる長い歴史が連綿と繋がっていて、その多様な精神と文化は東洋にはないわけで、あこがれますよねそりゃ。

作家になりたくて裕福な家から勘当されてパリに住むユージンと、何から何まで黒づくめで怪しさ満点の登場だったのにいつのまにか全幅の信頼を勝ち得たマークと、ユージンにとっては絶世の美女よりもさらに美しいブランシェ。
一人の青年の一目惚れが、やがて大きな渦になってパリ全体を揺るがすことになります。

愛って偉大ね(笑)

小路さんの作品にしては珍しく、犬も猫も子供も(回想シーンを除き)出てこなかった、まぁ大人の物語ですね。あ、ただ一人ユージンくんだけは純真すぎて子供のようでしたがw

そして、早くからラスボスの正体が分かってるのに、そのラスボスとの対決シーンはおまけみたいなもので、あくまでも主眼は揺るぎ無い友情と愛情の賛歌。

たぶんね、小路さんにとって人生で大切なのは、ラスボスを倒すという結果にこだわるんじゃなくて、倒すために何をするか、いかに楽しくその準備をするか、そして人を信じるか、ということなんじゃないかな。
ミステリでいえば、関係者への聞き込みと名探偵の推理を助けるための手がかりの敷設を読み取る楽しみ。名探偵がみなを集めてさてと言い、のシーンまでのあのじわじわくる高揚感。「犯人はあなた以外にいない」と名指しされて真相が明らかになるそのカタルシスを愉しむのは当たり前ですが、ミステリ好きならきっと捜査段階のシーンを愉しめるのがツウというか大人っぽいじゃないですかwあれ、違うか書けば書くほどどんどん逸れていく(苦笑)

そしてやっぱり、みんな品がいいんです。これも小路さんらしい。
小路作品でいう「品がいい」というのは、所作というだけじゃなくて(もちろん所作も美しいことがほとんどですが)、人間としての品です。上質な人。
言葉遣いが粗いとか、人品卑しいとか、とにかくお近づきにはなりたくない人、というのと正反対の、一緒にいて気持ちのいい人楽しい人、一緒にいて前向きになれる人。誠実で信頼できて、口の堅い人。
ユージンとマーク、スタンリーとメイベルさんだけじゃなくて、わたしはベクトールさんやジェラールさんも大好きになりました。

はたしてユージンは怪しまれずにブランシェに近づくことができるのか。
彼の恋は実るのか。 
呪われた宝石、〈ディープ・レッド・ハート〉を本当にブランシェか、もしくはルネが持っているのか。
計画の途中でゆらりと立ち上がった黒い影、《黒づくめ男爵》とは何か、本当にドラキュラなのか。
一筋縄ではいかない、用意周到で悪知恵の働きすぎるラスボスをどうやって追い詰めるのか。
そして。
マークとは何者なのか。というか、探偵マークを雇ったのは誰?

ああそっか!
今これ書いてて分かった。

以下、ストーリー全体のネタばらしではないですが、一部ネタ割ってるかな、と思うので、一応反転させますが携帯では表示されるし(スマホだと反転できてるのだろうか……)すみませんが薄目でするするーっとスクロールしてください。読み終えた方のみ、お付き合いください。





ユージンの特殊?能力である、「人間の血の匂いに敏感に反応する」という体質、あれがこの物語全体の構図の伏線だ!(ポン☆
前文で、年老いたユージンが書いてた「ほんの少しの〈嘘〉」がこれだたぶん。
マークと知り合うきっかけになったエピソードではあるんですがどちらかというと注目すべきはユージンくんにとっての「悪い予感」の方で彼の「直感」が大事ってことなのかな。のちのちこれがどこかで活きてくるとかまったく無いから、もったいない伏線やなぁと思ったんですが、違うわ。これでいいんだ。
もしこの体質が途中で発動していたら、《黒づくめ男爵》にユージンが最も接近したときに、噂どおりの吸血鬼なら相手からそれらしい匂いがするとかあってもよさそうなのに一切スルー。それが逆に《黒づくめ男爵》の正体(というか仕掛け)の伏線にもなってるし、横着者がエンドマークから読まない限りはちゃんと驚きに繋がる。ナルホドw





はい、すみませんでした。

ラスボスとの息詰まる対決を期待して読むと肩透かしを食らうでしょうが、人生は敵を打ち負かすことだけにあるわけじゃないですからね。
いかに楽しく、どのように人を愛し信頼し、どのように生きるか。
そんな「明るい」物語です。そして、おう!おおう!と驚きます。小説は娯楽なんです。愉しんでなんぼです。

これ、タイトルがいいですよね。
踊り子と探偵とパリを。
このあとに続く言葉は?
生きる、愛する、駆け抜ける、エトセトラエトセトラ。読んだ人によって、タイトルが違ってくるような気がします。粋ですよねこういうの♪

連載一回目だけ読んで、あとは単行本になるまでじっと我慢して待ってました。待った甲斐がありましたw
面白かったです!

わたしは端末持ってませんが、電書にもなってますので、紙の本よりそっちがいいというかたはこちらからどうぞー。

踊り子と探偵とパリを (文春e-book)
小路幸也
文藝春秋



(2015.5.23 読了)
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