こんな本読みました。

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『コンビニたそがれ堂 セレクション』 村山早紀 著

2015/04/22(水) 01:01:13 村山早紀 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
コンビニたそがれ堂 セレクション (一般書)コンビニたそがれ堂 セレクション (一般書)
(2015/03/13)
村山 早紀

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 〈コンビニたそがれ堂〉シリーズの愛蔵版が出ますよ、という村山先生のツイートを拝見してからずっとずっと待ちわびてた本。できることならこのハードカバーを引っさげて全国でサイン会をしていただきたかったと、待ってた間も、読み終えた今も、そう思える本です。
 文庫版のシリーズ四冊の、どれが好きとか全部好きで選べないとか、そんな感想でももちろん喜んでくださるでしょうが、愛蔵版としてまとめられたこの一冊についての感想を、叶うなら先生に直接、わたしの表情や声の揺れや身振り手振りも一緒にお見せしたかった。
 言葉で、ネットで、どこまでこの気持ちが込められるのか自信はないですが、先生に届きますように。




村山先生の物語には、いつも風が吹いています。

キラキラ光る風や爽やかでかぐわしい香りを乗せる風、時代の風、海風、祈りの風。

でも、風って時々、暴風になりますよね。何もかもを吹き飛ばす、情け容赦のない嵐。

日本に住むわたし達にとっては、幸か不幸か馴染みのある自然の掟。生まれてから死ぬまでに、一度も暴風を経験したことのない人はいませんよね。

それでも日本は美しいと思う。日本の自然や、そこかしこに感じる神様のような畏怖を大事に守る。
きっとそれが、この国に住むための知恵であり、DNAであり、幸せに繋がることなんだと思います。

風早の街の、駅前商店街のはずれにあるという、コンビニ〈たそがれ堂〉。
不思議なことも、魔法や奇跡も、科学的に証明できると思えるまでに成熟した日本のどこかに残る、根源的で素朴な感情の向かう先に、またそれを笑わない人に、きっとおでんとコーヒーの香りが届くのでしょう。

このコンビニに吸い込まれるように入っていくキャラクタ達の姿を読んでいて、なんとなく、このコンビニは「蛇腹」のような感じなのかな、と改めて思いました。

蛇腹ですよ、柑橘のじゃばらじゃなくて、ホースの。いやホースっても馬じゃなくて管、そういえば管狐ちゃんとひなぎくちゃん元気かな。違った、いや違わないけど今回は風早三郎さんでした。暴走した。

ええと、このたそがれ堂に招かれた人たちの、記憶や時間をくしゃっと縮めるイメージ。巻き戻すというよりは、くしゃっと。

かといって縮めるだけじゃなくて、引き伸ばすような感じでもある。

神様が、わたし達人間と同じ空間に居るには、時間の速度が圧倒的に違うから。わたし達にはあっという間で長くもある人生は、神様時間だと点々でしかない。
ただ、そんなドット柄の人間のことを面白く思って付き合ってくれる神様は、そのドット柄に飛び込むというか広げるというかして、すると神様の時間もゆっくりになるような。宇宙物理学というほどのものじゃないんですけど、そういう概念に近いのかな、と。

人間にとってはひとつひとつの出来事が積み重なって過ぎていく人生も、神様には最初から最後までのすべてが詰まった宇宙のひとつひとつで、MRIのように輪切りにして過去現在未来を気まぐれに取り出して眺めたり笑ったりしてる。

たそがれ堂は、そのMRIの輪切りが膨大な数で、それって繋げたらわたし達には蛇腹に見えるなあって、そういうことです。説明長かった……。


村山先生は、作品でもツイッターでも、よく「がんばる」という言葉を使われます。どれだけお疲れでも、どれだけ体調がお悪いなかでも、「がんばる」って。

この愛蔵版に収められた、既読のお話も書き下ろしのお話にも、出てきます。がんばるって。

そのとおり、主人公たちは、みんな歯を食いしばって頑張ってる。読んでるわたしが「ちょっと休んだほうがいいよ」と思ってしまうほど心身ともに疲れてるのに、ううんだからこそなのか疲れきったその目にふわりと優しい出会いや魔法が舞い降りてきて、すると自然に「がんばるから」って言ってる。
奇跡や魔法や、神様のための何か、歌だったり捧げものだったりするものは、弱いはずの人間の体と心にほんの少しの風を当てて、頑張ろうと思わせてくれる。

風に乗って、歩けそうな気がするんですよねきっと。いつか飛べる日がくるまで。

ただ、現実の世界は、悲しいことがたくさん。理不尽な怒りが渦巻いてて、風を感じるどころじゃなくて、それでみんな引き篭もったり心を病んだりする。
わたしの友達が言ってました。最近はみんな、風邪ひくように鬱病になるよね、って。だから引き篭もりも鬱も特別なことじゃないって。風邪ならしょうがないってみんな思うから。ああ風邪違い。
感じたいのは風のほう。
でも感じ取れなくて風邪をひく。がんばれない。

だから、わたし達は、「がんばる、がんばろう」と同じ意味の、違う言葉を探す時代にいるのかなと思います。

頑張れない人に、風を感じてもらうには、どんな言葉がいいのか。
わたし自身、毎日毎日自問自答している問題でもあります。

これはたぶん、神様からの課題。村山先生からの問いかけ。

頑張ってという言葉に余計に追い詰められてしまう人にとって、どんな言葉が風になるのか。奇跡を起こせるのか。
強くならなくていい、生まれながらに強い人はいないし、そんな人がいるとしたらその人はたぶん天性の鈍感。
弱いままで、生きていていいと思えるような。

風早の街のそれぞれの物語は、わたしにとって風です。

たそがれ堂や海馬亭や竜宮ホテルに行ってみたいと思うこともありますが、物語を読むことでわたしにとっては魔法にかかったも同然の、風が吹いてる。
これからもずっと続いて欲しいし、遠い未来にも読み継がれて欲しい。
いつか、宇宙に生きることになった地球人類が、ドーム内の人工のものでなくまた恒星風に炙られることもない、やさしい自然の風を感じられたそんな幸せな時代があったことを知るために。

今回、風早の街の神様である風早三郎さんの由来が少し書き下ろされたことで、わたしの中の風早世界がうわーんと広がって、感想が取り留めのない宇宙空間に飛びがちになってしまいました。わかりにくくてすみません。

ともかく!

『コンビニたそがれ堂セレクション』、装丁もカバーイラストももちろん物語も、パーフェクトな愛蔵版でした!

文庫版のシリーズでもいいしこの愛蔵版ハードカバーでもいいから、読んだ人の心と肌に、風が吹きますように。
そんな願いを込めて、わたしの感想の結びにしようと思います。

長々と語りまくってすみませんでした。

(2015.3.15 読了) 
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