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『禁忌』フェルディナント・フォン・シーラッハ 著

2015/03/22(日) 20:04:26 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
禁忌禁忌
(2015/01/10)
フェルディナント・フォン・シーラッハ

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 シーラッハさんの本って、どれもそんなに分厚いものじゃないし、処女作と二作目は短編集なので一編一編は本当にページ数も少ないのに、その一編一編が、その後の長編も、どれもみんな重量級なんですよね。世界は重いし暗い、和みも癒しもない。登場人物の誰も、心底笑わないし大袈裟に泣かない、ただ淡々と。
 この新作長編もまたそんな感じなんですが、それでもぐいぐい読めてしまうのはもう不思議を通り越して凄まじい。



これまでのシーラッハさんの著作、とりあえず全部読んでますけど、一作目から既に淡々と、ひたすら淡々と進む物語で余計なものが無いどころかキレッキレの文体と展開でそこがまた素晴らしくて印象深いんですが、

この新作はもう、削りに削ったというよりこれ以上削るとこないよ!?というくらいのものでした。

普通これはもう散文になりそうで、かえって技術が無いと空中分解するんじゃないのってくらいのエッジなんですけど、それでもこれは小説なんですよね……シーラッハさんの文才ってどこまで突き抜けられるんでしょう……。
一冊、読み終わるたびに、この次の新作はどうなってしまうんだろうか……と思うんです。
そして新作はいつも、更に切れ味鋭い作品となって進化し続けている。

日本の作家さんも星の数ほどたくさんいらっしゃるし、私の超偏った読書傾向ではすべての作家さんを網羅も到底できませんが、
おそらくシーラッハさんのような文体のかたは日本にはいないんじゃないのかな……もしいらしてもほんのわずかとか。

この『禁忌』は、わたしの読解力では初読だけでは咀嚼できなかったです……。
日本版にのみ寄せられたシーラッハさんのエッセイと、訳者あとがきまで読んでようやく、全体像がふんわり見えてきたって感じでした。
つまり、「何がしたかったの……?」という難解さ、掴みどころの頼りなさ感。
主人公の、芸術と現実の境界線が曖昧で、どれだけ理解しようと思ってもとっかかりが掴めない。
おそらく、後半の主人公の弁護士さんも、わたしのような心持ちなんじゃないかと……。

それが一転、糾弾と沈黙のあと、主人公が目的を達成するのを目の当たりにして、わたしが見ているもの見えているものがその色や形がはたしてそのとおりなのかぐらぐらしてきました。
前半でのエピソードや誰と挨拶したかなど、そういうものがぶわっと色を帯びた気がしましたよ。

日本人には馴染みの無い文化や生活スタイル、そういうものがキーワードになることもないし手がかりにもならない。
もはやどのタイプの「ミステリ」なのかも判然としない。
でもね、ラストまで来て、「え?」と思ってページを戻り、それらしいシーンを探すのでした。このパターンは、まさしく「ミステリ」ですよね!

前半は主人公・ゼバスティアン・フォン・エッシュブルクのそれまでの半生を淡々と描き、その中で彼の難解さをインプットしていきます。
そして後半、そのエッシュブルクの内面を読者が抱え込んだまま、もう一人の主人公・ビーグラー弁護士がエッシュブルクのために駆けずり回るのを読みます。
裁判(公判)で、剥き出しにされたのはいったい何だったのか。
それが、帯にある、
「罪とはなんですか?」
彼の罪はいったい何だったのか、
罪と見做した刑事の言い分は、
刑事・検察の罪とは、
社会への罪とは、そして人間の罪とは?

冷たく深く暗い、それゆえの熱量と重力や引力と、と書くとこの感じ……、まるで漆黒の宇宙のようなイメージなんですよねわたしには。うん。

(法廷)ミステリを読んだことがなければ戸惑うかもしれないですが、どこにも寄り道しないで淡々と、究極まで装飾を削いでシンプルにエッジを立てて、テーマに向かってひた走ります。このリーダビリティの高さは凄いです。

一月にして、早くもベスト級の一冊だと思います。

(2015.1.14 読了)
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