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『怪しい店』 有栖川有栖 著

2014/11/30(日) 20:20:41 有栖川有栖 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
怪しい店怪しい店
(2014/10/31)
有栖川 有栖

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 面白かったー!焦らされたぶん、余計に深く読めた気がするところもあります。
 5作品中、紙の文芸誌に掲載された3作品は既読。もちろん。うう、やっぱりそろそろ電子書籍読める端末を買ったほうがいいのかな。
 でも、その電書の配信作品を初めて読んだことで、既読だった作品との絡みというか、この短編集の「趣向」がより愉しめたかな、というのはありますね……。





どれも変わったお店ばかりの5作品。
お店自体が変わってるとか、主人が変わってるとか、客がおかしいとか。
そういう〈お店〉縛り。そしてそれ以外はかなり自由。
たとえば、季節。
〈古物の魔〉は四月下旬(というか事件発生は4/26、作者である有栖川先生のお誕生日ではないですか☆)、
〈燈火堂の奇禍〉は師走。12/1、篠宮時絵ばあちゃんのお誕生日。
〈ショーウィンドウを砕く〉は明確に何月何日とは出てこなかった(と思う)けど、火村先生もアリスさんもジャケットは羽織ってるけどコートは持ってないし、そのジャケットを暑くて脱いで腕に掛けてるわけでもないから、気候のいい時期、春か秋?
〈潮騒理髪店〉は風薫る五月。
〈怪しい店〉九月。
火村先生とアリスさんが齢を取らないサザエさん世界のシリーズで、いろんな季節の物語が一冊にまとまっているのは、このふたりが今までもこれからもこうして活躍するんだよ、というメッセージみたいやなぁ、と思ったりして。

あと、殺人事件が3作品、あとの2作品はアリスさんが聞き込んで来た傷害事件の推測を火村先生が下宿で、それと火村先生とアリスさんの推理ゲームのようなもの。登場するお店と登場する人物がいろいろと後ろ向きなかわりに、火村先生とアリスさんだけのやりとりは友達ならではの気安さがびしばし伝わってきました。

確かに、初めて入るお店って、お客はもちろん緊張してるけど、お店側の人にとっても緊張なんですね。
その一期一会の出会いや、思わぬ発見を愉しめる人が、接客業やサービス業を天職だと言うのかな。
……刑事さん、おまわりさんって、どうなんでしょうね?ある意味接客業みたいなところもあるでしょうし。
この火村シリーズの語り手として、容疑者や刑事さんたち、そして火村先生のことを見て語るアリスさんは「人を見る目がある」のか「ない」のか……(苦笑)。「事象と人間を観察する目」を持つ火村先生とは違った「目」の使い方で。

この短編集、火村先生とアリスさんの、無言の信頼というか友情というか、そういうものが際立ってるなあと思うんですけど。既刊の〈探偵、青の時代〉とか〈菩提樹荘〉とかだと、(一部の)ファンはなんとなく恥ずかしくてニヤニヤしちゃったよくらいには結構直接的な友情だったですよね?
そしてこの新刊では、森下くんとコマチさんが、火村先生とアリスさんのお互いを映す鏡の役割になってる。ふたりが何も言わない分を森下くんとコマチさんの目と耳と口が、長い友情の深さとして相手に見せてる。
特にコマチさん。〈怪しい店〉でアリスさんとの会話やラストシーンでのなりゆきを読んでて、コマチさん自身が火村先生の言葉を記録してアリスさんに聞かせる「ボイスレコーダー」になってる。オビの「最強バディ」ってだから、森下くんコマチさんの目から見たふたりなんだと思います。

〈古物の庵〉の、アリスさんと火村先生が犯人を指摘するクライマックス、先生がアリスさんを指す左手の上げ方がツボでw何も言わなくても火村先生のその左腕の意図が分かるアリスさんがこれまたツボすぎてw
……コホン。それはそれとして、“揺ぎ無い物的証拠”の動かし方(そこまでの伏線も含めて)がエレガントですよね!これがキモだと思うんですけど、読者の目からも、捜査側も犯人も含めて登場人物の目からも消えていて、ソレが姿を見せるのはいかにも“古物の店”らしいなと。

〈燈火堂の奇禍〉、これっていわゆる安楽椅子探偵モノですけど、ちらりちらりと出てくる過去の事件関係者の名前に、「ああ、あの物語は安楽椅子探偵とは正反対で火村先生もアリスさんも瘡蓋を捲らないでおこう、と決めたくらいの特異さと遣り切れなさだったのね……」とあの物語がかなり好きなわたしも悄然。
時絵ばあちゃん可愛いなあ!いつまでもお元気で、長生きしてね☆時絵さんそのものが大好きなのと、火村先生の家族としても。
でもこの古書店、長続きしないような気がする……。

〈ショーウィンドウを砕く〉苦手な倒叙ミステリなんですが、火村先生とアリスさんにうまくごまかされてするする読めましたよw
完全犯罪を目論んだ自信満々な犯人と、過去に「人を殺したいと思ったことがあるから」という理由で捜査側に立つ火村先生の共鳴。
この作品が真ん中にあることが、ラストの〈怪しい店〉にリンクしていてですね……ええとアリスさん頑張ってー!
感情を出してつぶやくアリスさんと、一切の感情を見せないのに犯人にだけは聞こえた火村先生の声。火村先生の暗い感情がアリスさんには見えないし聞こえないことが、火村先生の救いなんですよきっと。

戻って〈潮騒理髪店〉これは文芸誌で読んだ時に思ったけど、やっぱり。
火村先生が猫になってるwwwあるいは、眠れる虎か。
理髪店、美容室は「髪を切る」という大前提の作業があるから、お客も理容師さん美容師さんもそんなふうには思わないけど、「髪を触る」って本来は心理的に重要な行為で、かなりエロティックな意味もあるし、わたしの妹も「髪を触られるのが嫌」というタイプの人間で本来美容室は好きじゃないんですが。
腕のいい人、流れるような手さばきでカットやシャンプーをしてくれる人にお任せすると気持ち良すぎてウットリする、というのはやっぱり、ヒーリング効果もあるしどこかエロティックな感じもする。要は、フィジカルなコミュニケーションなんですよね。
そういうリラックス&リフレッシュで喉をゴロゴロ鳴らしてそうな火村先生と、古き良き昭和の理髪店の終焉と、謎の行動をした若い女性。
ミスマッチなようで、ぴったりとひとつの環の中に納まるんですねえ。
火村先生とアリスさんの長電話、軽口が心地いいです本当。

そして〈怪しい店〉。ざわざわしてた有栖川ファンが結構いらっしゃいましたね(笑)
確かに確かに。
でも、さっきも書いたけど、コマチさんはボイスレコーダーであり、まあ良くてデジカメ。いつか、アリスさんだけが聴く、見るための。そう簡単に過去を明かさない火村先生と訊けないアリスさんのコンビはこれからもこうして続いていくんやなあ……と思えました。わたしには。
だいたい、火村先生にとってのアリスさんの存在意義、アリスさんが思う自身の意義、これって今までの言及よりもずっと深いですよね。疎遠になる友達が多くなる中、十四年もずっと付き合いのある友達ってもうかけがえのない人だし、ここまで理解しあえている友達の代わりはいないですよ。
で、これも意外だったなあ!真犯人。
火村先生の推理の行く先がわたしも最後までわからなかったですはい……。
こんな犯人の登場の仕方もあるんですねえ。
短編ならではの捻り方じゃないかな、と思います。

今年ラストの有栖川先生のミステリ。
楽しかったです。堪能いたしました!

来年はぜひ長編を……お待ちしております~☆

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