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『丹生都比売 梨木香歩作品集』

2014/11/30(日) 20:08:38 梨木香歩 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
丹生都比売 梨木香歩作品集丹生都比売 梨木香歩作品集
(2014/09/30)
梨木 香歩

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 ちょっと前に、原生林版の『丹生都比売』を読んでたんですよね。感想は書かなかったけど。どこかの版元から文庫版が出るのを待ってたというか。
 そしたら、文庫版じゃなくて、未収録の短編も一挙にまとまった短編集として単行本が出ました(苦笑)
 どうしようかと思ったんですけど、原生林版のものを改稿して、本来の形に戻した、とあったので買ってまた読みました。
 秋にぴったりの一冊。読むなら秋しかない!という気もします。



この作品集の核は〈丹生都比売〉です。ページ数から言っても、作品集の成り立ちから言っても。あとがき参照。

掌編ほどの作品もあります。

そのどれもが、寂寞とした、寄る辺ない、しんとした孤独の中の物語。泣きそうです。

秋、稲刈りが終わって、刈った稲は稲木に掛けられ、朝か夕には田圃を焼く煙があちこちで狼煙のように上がり、厳しい冬を迎える準備をし始める、あの静けさと寂しさ。夏の花火大会、夏祭り、海水浴に山登り、そんな輝くばかりのエネルギーはどこに行ったんだろう、とわたしはいつもこんな光景を見て思います。
そんな、ひたひたと忍び寄る秋の寂しさが、これでもかと詰まった一冊。春でも夏でも冬でもない、今しか読むのに最適な時期はないです。

ただ、秋といえば山は錦秋、赤や黄色のグラデーションでそれはそれで美しいものですが、この作品集は秋なのに山は緑で鬱蒼としていてますます迷い込みそうになります。

草木も鳥たちも風も、魂を持って意思を持って描かれていて、登場する人間の方がはるかに儚い。
そして孤独。
誰かとつながってるとかつながってないとかじゃなくて、魂が彷徨うような、そんな孤独。
人は、みんな生まれるときも死ぬときも一人であるということを、思い知らされたような。

梨木さんの作品を全部読破してないのでなんとも言えないんですけど、少なくともわたしが読んできた長編に比べると、この作品集は静謐すぎます。寂しいです。
でも、これがたぶん、梨木作品の本質だろうと思います。

幻想的で、境界線が曖昧なのは一緒ですが。
不思議なもの、どこから出てきた?的なもの、そんなのも一緒ですが。
奇譚なのに少しだけリアル。

改めて〈丹生都比売〉を読んでみて、草壁皇子と持統天皇の解釈にやっぱり驚くんですけどね、でも違和感はないんですよね。皇子はたぶん、神の領域に近い人だったんでしょう。
現在の日本語と、分かってる範囲で奈良時代の言葉とは確かまったく違うんですよね。単語の読み方や意味が変化しているというより、外国語に近いという感じの。
沖縄の言葉や青森あたりの言葉が、日本の真ん中に生きる私たちには通訳なしにはさっぱり分からない聞き取れないという。
そして言葉は、歴史的に、朝廷(京都)を中心にして同心円状に日本に広まっていったという学説。
ということは、沖縄や青森あたりの言葉は、古い日本語の痕跡が残ってるんでしょうか。時代的に大和朝廷の時代の言葉ではないでしょうけど。
現代のわたし達がうたう歌の歌詞が、わたし達の読み書きする普通の言葉であるように、たとえば万葉集はあの時代の言葉が写し取られてるんですよね。
言葉が、文法が、単語の読みも意味もすべてが違うなら、社会倫理や常識も、現在のわたし達とは違うでしょう。
草壁皇子と持統女帝との、こういう解釈も、当時はアリだったのかも。後世の人間だから、ある程度の歴史を学んだことによる後付けかもしれんけど。

母・持統女帝の熾烈さに比べて、草壁皇子の儚さはもう吉野の神域そのもので、母でも手が届かなかったのかな、と。
息子が大津皇子だったらよかったのに、と何度も何度も思ったはずの母。それを感じ取っていた息子。
大津を滅ぼした以上、実の息子の人生も母が焼き尽くすしかなかったとは、夫である天武帝には想像もできない苦しみだったと思う。

この時代、難波~大和~近江~飛鳥の激動の時代のことをわたしは前にも書いたけど長岡良子さんのコミックス〈古代幻想ロマンシリーズ〉でどっぷり勉強しました(フィクションのキャラはともかく、時代の流れや実在の人物についてはちゃんと歴史の本読みました)。
なので、天智帝、壬申の乱、大友皇子側のこと、藤原一族の勃興、天皇家のややこしさ、いろいろと。ある連作で、天武帝の出自に独自解釈があったなぁそういえば(主人公・藤原不比等と持統女帝を際立たせるためだったとは思いますが、これも違和感なし)。また読み返したくなった。

あ、わたしのこの感想の中では、長岡良子さんのコミックスからの刷り込みにより「くさかべのみこ」で、「おおつのみこ」で、「おおとものみこ」、もっといえば「大海人皇子」は「おおしあまのみこ」という読み方です。
日本という国がまだ未完成で、なんとか自立しようとあがいていたこの頃。
あー楽しいわーこの時代!また勉強しようかな♪

この作品集に戻りますね。あと、〈コート〉と〈夏の朝〉が好きかな。
〈コート〉これは短いのに、ぎゅっと詰まってて感情揺さぶられました。姉の姿をコートに映して、そこに小さい頃の自分も添えて、ビデオに録るより生々しい。
お母さんの無邪気な罪深さまで。

〈夏の朝〉も娘と母親の。
緊張感もあり、母として正しくもあり、娘としての正統な拒絶もあり。
ネットでよく見る「中二病」みたいな、苦しさもあり。
守護する魂の存在感の大きさ。

生命力に満ち溢れた人がいれば、反対にひっそりと佇むような静かな魂の人もいる。
いろんな人が居て、世界は生きてる。
ただ、人はひとりひとり、みんな孤独。
生まれながらに、寂しい。
寂しさを良しとするかしないか。
泣くか笑うか。

ひたひたと沁みこんでくる寂しさと、魂の清らかさと、世界の美しさと。
いろんなものを持ち寄って、この作品集は「秋」に出たんだなあ、と思います。

寂しさが高く低く、心に響く作品集です。

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