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『大阪ラビリンス』 有栖川有栖 編

2014/11/30(日) 19:59:21 アンソロジー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
大阪ラビリンス (新潮文庫)大阪ラビリンス (新潮文庫)
(2014/08/28)
有栖川 有栖

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 すすすすみません今頃読了というこのていたらく(土下座)
 面白かった!それに尽きます。
 大阪をよく知らない人にも読んでほしい小説を集めた、と有栖川先生はおっしゃってましたけど、どうやろう、かなりディープな大阪だと思うので(特に言葉が。テレビなどで最近の芸人さんの言葉には慣れていても、生粋の大阪の言葉は古典落語の中くらいにしか残ってないような気がする)、ハードル高いかもしれない。京都のわたしも最近ようやく大阪にちょこちょこ行くようになりましたけど、このディープさは気を抜いたら置いていかれそうでした。
 でも!とにかくオススメなのですよ!



「発表順に収録した」という先生のお話どおり、なんでしょうかこの滑らかな読み心地。
先生のトークイベントなどを追っかけているうちに、上町台地のことや古い古い難波の歴史のこと、記憶力はよくないわたしですがそれなりに覚えたこともあります。
そんな、先生からいただいた知識が、これでもかと盛り込まれているのでいっそう楽しかったんですね、たぶん。

〈橋の上〉 宇野浩二
〈面影双紙〉 横溝正史
〈大阪の女〉 織田作之助
〈大阪の穴〉 小松左京
〈梅田地下オデッセイ〉 堀 晃
〈コンニャク八兵衛〉 田辺聖子
〈川に消えた賊〉 有明夏夫
〈おたふく〉 岩崎恵子
〈天幕と銀幕の見える場所〉 芦辺 拓
〈火花1/火花2〉 柴崎友香

純文からSFからミステリまで。
ミステリーか学生モノか、ごく限られた時代の時代小説ばっかりが氾濫する京都に比べて(偏見です。キッパリ)、大阪という町はゆるやかに流れる時間があってその積み重ねられた時間が崩れなかったんですよね。だからこういう穏やかで静かな大阪の小説がたくさんあるのかもしれないです。
京都はほら、朝廷は確かに千年以上ありましたけど、なんだかんだで時間の積み重ねが破壊され尽くすんですよね、ちっこい乱や変、大きいのは応仁の乱とか幕末から明治維新にかけてあたりは特に。そのたびに為政者が変わるもんやから、そっちを描く方に忙しくて、庶民が主役にはなれない。どうしたって権力争いの方が鮮烈で正直面白いもん。小説のモデルはだいたい権力の中枢に居る人とその周りの人たち。鎌倉時代からは武家が主役で京都なんてお飾りでしかなかったのに、明治維新で皇室が東京に行かはってからはもう、ただの地方都市のひとつですからね。

ここに収められた短編は、どれも庶民のお話、ゆったりした時間、匂いや音まで聞こえて来そうな生々しさ。小説なのかエッセイなのかわからなくなります。
半分リアル、半分ノスタルジー。ゆらゆら。

ミステリ好きとしてはやっぱり、ミステリは素直に読みやすい。横溝正史の作品は戦後の金田一モノではないですが、やっぱり因業渦巻く閉じ方でじくじくしました。
芦辺先生のはもう、大好き!暗号モノとして、それよりもっと粋な趣向に気付いたらもうブラボー!でニヤニヤしちゃったよwwwいやーんこれマジで好き♪

古い作品は、言葉も古風です。イントネーションもたぶん微妙に違うんでしょう、そこまではわたしには分からなかったんですが……。
余談ですが、以前、花園大学で綾辻先生と対談された公開講座のとき、有栖川先生がおっしゃった「大阪人と京都人の“秘密”の微妙なイントネーションの違い」が忘れられないです。あれは本当に目から鱗でしたよ、大阪と京都で単語のイントネーションにそんなに微妙な違いがあるとは。先生、耳がいいんだと思います。

トップバッターの宇野浩二さんの作品と、ラストの柴崎さんの作品の、子供の言葉遣いの変遷。柴崎さんの書く今の時代に至るまでに、そんなに気が遠くなるほどの時間は経っていないです。それでもここまで違う。もちろん風景も違う。でも断絶感はないです。古風の言葉を話してたかつての子供たちが、今の柴崎さんの作品に登場すれば確かに違和感ははありますけど、仮に昔と今の子供たちが鉢合わせしたとして、気質にそんなに違いはないはずで、すぐに打ち解けそうなイメージです。

わたし、純文はほとんど読まないので良い悪い以前に面白いかどうかの評価もできませんが、岩崎恵子さんの〈おたふく〉は好きです。おうどん食べたいわー。作りたいわー!(関西のおうどんを食べたことのあるかたなら、大阪をよく知らなくても生唾でてくると思うんですけどどうでしょう?)
さりげないあの伏線がラストシーンにチカチカと点滅して、胸がぎゅーっとしたというか、遣る瀬無くなりました。泣きそう。

堀晃さんの〈梅田地下オデッセイ〉、これはもう、あの梅田地下街のダンジョンを実際に知ると知らないとではぜんぜん違いますよね。知ってる人が読むと妙に怖くなると思う、あの地下迷宮を歩いていきなりこんなことに巻き込まれたら気が狂うわ……。
もしかして、わたしがいつも梅田で迷うのはこういうことなんやろかwww
とにかく、この小説の中だけじゃなくて、実際に梅田は地上も地下迷宮も生命体のように生きてるんだと思います。

繰り返しになりますが、古い言葉や古い光景の描写は、長生きしてるおじいちゃんおばあちゃんか、古典落語くらいにしか今のわたし達が耳にできるリアルな音源はないんじゃないのかなあ。
昔話を聞くみたいに読んだような気がします。

有栖川先生の〈あとがきに代えて〉で、それぞれの作品を丁寧に紹介されているので、シリーズとして改めて読もうとか、興味がわいた作家さんのほかの作品も読んでみようとか、いろいろ食指が動きます。
わたしは、宇野浩二さんの探偵小説前夜、といわれた作品をぜひとも読んでみたいし、有明夏夫さんのシリーズと、岩崎恵子さんの短編集も、必ず読みます。……いつか(←え)

とっかかるのは遅かったけど、読み始めたら夢中になりました。楽しかったです!

(2014.9.23 読了)
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