こんな本読みました。

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『江戸川乱歩の迷宮世界』

2014/09/12(金) 00:01:10 ミステリ評論・研究 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
江戸川乱歩の迷宮世界 (洋泉社MOOK)江戸川乱歩の迷宮世界 (洋泉社MOOK)
(2014/06/02)
不明

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 いやーもう江戸川乱歩でお腹いっぱい!読み応えありました。
 こういうムック本はいいですねえ。
 乱歩マニアだけじゃなく、広くミステリ好きとしてもじゅうぶんに楽しいです。



圧巻は、乱歩の全小説114作品の紹介と解説。もちろん、ジュヴナイルの少年探偵団シリーズもぜんぶ。これはすごい。
クリスティやカー、クイーンといった海外の巨星でこういうのはいくつもあるけど、日本の探偵作家でこれほど研究された人もいないだろうし、日本にも江戸川乱歩という巨人がいたことは、世界のミステリ好きに向けても胸を張れるなあって、思います。

わたし自身、乱歩の作品をすべて読んだわけじゃないし、ネタばらしを心配したんですけど大丈夫。小学生の頃は図書室で少年探偵団とか怪人二十面相とかのシリーズをひととおりを読んだけど大人向けとなると有名な作品しか読んでないですが、この全作品の解説は逆に、もっと読みたくなりました。

普段は非公開の、江戸川乱歩邸の蔵の内部、とんでもない稀覯本や自著棚の写真。
作品に登場する美女図鑑はこれドラマ化とは違う感じで楽しい。
大乱歩をリスペクトする現代作家さん(いや、リスペクトしていない現代作家さんは皆無でしょうが)のインタビュー。
その他、乱歩についての詳細なコラム。

こういうムックで感想書くことはないんですけど、さすが大乱歩なだけあってスルーさせてくれない(笑)
探偵小説に思いを馳せる、いいムック本だと思います。

わたしが一番印象深かったのは、〈写真で見る探偵作家・乱歩の生涯〉かな。
乱歩がただの平井太郎だった子供の頃の写真から順に見ていって、そしてラストがあれ。もう泣きそうになりました……。

思えば、わたしが生まれる前に江戸川乱歩は他界していたので、その存在の巨大さや功績をおおまかに知ってはいても、「江戸川乱歩」はいわゆるメルクマール的な人だったんです、今まで。
こうして自書に対する評価が低いとか、この作品気に入らないから旅に出るとか(苦笑)、初恋の噛み締め方がちょっと怖いとか(汗)、乱歩は乱歩で人間くさくて、
難しい言い回しをせずに読みやすい文章で書くからこそ変に自分を飾らないで探偵小説の評論や議論が中立で俯瞰的でいられたのかな、と思うと、乱歩の深さというか透明さが感じられました。

乱歩が亡くなったとき、巨星が墜ちたとき、いったいどれだけの喪失感が日本人の心を覆ったのかと想像してもまだたぶん追いつかないんだろうなあって。
不老不死じゃあるまいし、いずれそのときが来るのはわかっていても、この偉大な探偵小説作家を喪うことがどんなに寂しく悲しい出来事だったか。
もちろん、乱歩の志向を探偵小説に導いた黒岩涙香や、引き立てた森下雨村や小酒井不木、盛り立てたりお尻蹴っ飛ばしたりしながら励ました横溝正史といったこれまたものすごい人達がいなければ大乱歩もまたなかったわけですが、江戸川乱歩という存在の大きさははかり知れないものだったはず。
そのことを改めて思わせる、乱歩愛に満ちた一冊。

今すごく、『孤島の鬼』を再読したいです!『二銭銅貨』でも『D坂』でもいいな。うあー乱歩読みたい読み耽りたいぃぃぃぃぃ!

今までがそうであったようにこれからも老若男女問わず、乱歩作品が読書ライフの原体験であり続けるでしょう。
そうしてそこからたくさんの作品たくさんの作家による百花繚乱なミステリが求められ続けるはず。
日本のミステリの灯は、これからもずっと、江戸川乱歩によって守られていくんですね。

(2014.7.24 読了)
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