こんな本読みました。

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『服用禁止』アントニイ・バークリー 著

2014/09/11(木) 23:57:17 アントニイ・バークリー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
服用禁止 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)服用禁止 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)
(2014/03/31)
アントニイ バークリー

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 アントニイ・バークリーという黄金期イギリスの本格ミステリ作家。この作家がどんなミステリを書いていたかを知ってる人だけが愉しめる作品だと思います……(苦笑)




わたし、シャーロック・ホームズにはそれほど心を動かされなかったんですけど、エラリー・クイーンの初期国名シリーズのような颯爽とした都会的な探偵はヒーローとして認識してます。小説としてあくまで謎解きの装置であり、間違ったり失敗したりはするけど最終的には真相にたどり着く。人間としての苦悩を読者に見せるのは読み物としては良いことなんでしょうけどわたしはそれより、何の懊悩も葛藤も見せずにただ謎を追って真実を知りたいだけの人が探偵であるほうが、オーソドックスなパズラーを読んでるなあって思える。
要は、名探偵は真犯人をとことん追い詰めて、読者をスッキリ爽快にさせてほしいんです。ものすごくシンプルに語るなら。

その意味で、バークリーの作品は明らかに正反対です。
メイ探偵は迷探偵で、推理はただ積み上げられていく一方で、真犯人は探偵より上を行ってる。
名探偵の扱いが雑というかコケにされてるというか、しかしそれでも本格ミステリとして面白いところがまたバークリーの凄さ。

そしてこの作品ですが……。
面白いです。
特に、〈読者への挑戦状〉まではもうぐいぐい一気読み。
登場人物一覧を見て、容疑者がやけに少ないのを心配したくらいなんですが、いやーよく廻したなあと。
容疑が全員にかかってるわけじゃない、一番の嫌疑濃厚な人物が本当は犯人なのかそうでないのか?というのが、作品内での登場人物たちの関心なわけです。
でも、読者は違うよね?
この中の誰が犯人なのか?と思いながら読む。
この語り手でさえ、犯人の可能性はある。
そして、途中から登場してきて、かつこの一覧の中に名前が無いのならこの人は容疑者じゃないのね?というのも暗黙の了解。
これは現代のミステリ読みだから言えることなのか、それともこのバークリーの時代でも同じだったのか、で評価変わるんじゃないかと思う。
そういう読み方をするミステリ好きだから、途中で「ぶわっさー!」と広げられた風呂敷をどう捉えるかというと……「煙幕だよね?」とならないでしょうか?
なので。
〈読者への挑戦〉まで来て、アレとかあの人とかは先入観から排除してしまいました。
あとで謎解きのシーンでちゃんと理屈がついてて逆にびっくりしたわ(こらこら)
いやそれにしても。

ど う し た ら い い ん で す か こ れ (苦笑)

この推理で合ってるのよね……?
それすら分からなくなるエンディング。
もし、この推理が間違っていたとして、犯人と名指しされた人が、得意げに推理してるのを見てて可哀想になって「ハイハイ自分が犯人ですよアナタの気が済むなら認めてあげるし私はそれでいいけどもう証明できないし世間的には別の形で処理されちゃってるからその推理は他の誰も信じてくれないから黙ってた方がアナタのためですよ」と思ってああいう態度に出た可能性だってある、んですよね……。

ここまで読んできて、読者への挑戦状までポーンと切ってきて、こういう幕切れっていうのはよほどミステリに慣れ親しんでる読者ならともかく普通の読者が満足しないだろうことは予測できるので、他のどのミステリ作家さんもそうそうできることじゃないと思う。
バークリーだから許されるというか。

それとね。
真相とは関係ないし、特に伏線でもないんですけど。
ガイジンさんの名前ってなんでこう、姓になったり名になったりするの!「フランシス」が二人出てきてびっくりしたわ……。
日本人でいえば、「佐藤田中」とか「山田鈴木」とかそんな名前ってことですよねえ。ああもう(苦笑)

アンフェアなところはどこにもなく、最終的な推理に不自然さは感じなかった。ただ煙幕が書割みたいやな~とは思いましたけど。言いすぎかな。

で、たぶんこれが一番のネタばらしになるのかもしれませんが……、

〈読者への挑戦状〉の、問い四番目。この設問が、探偵役と犯人の決着を暗示してるし、バークリー作品の醍醐味だと思う。
探偵はヒーローにしてもらえない、バークリーの。

なんだか釈然としない気持ちと、まあバークリーだしこれでいいかと苦笑いで強制終了やむなしと思う気持ちが半々です。
まぁでも、面白くて一気読みしたからいいのだ!うん。

(2014.7.21 読了)
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