こんな本読みました。

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『ビタースイートワルツ Bittersweet Waltz』 小路幸也 著

2014/09/11(木) 23:53:25 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
ビタースイートワルツ Bittersweet Waltzビタースイートワルツ Bittersweet Waltz
(2014/07/10)
小路 幸也

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 『モーニング』、『コーヒーブルース』に続く、〈ダイシリーズ〉第三弾。相変わらずよろず相談所と探偵事務所と喫茶店が一緒くたになったような〈弓島珈琲〉です。
 面白かったー!かなりヘヴィですが読後感は爽やか♪
 この一冊でももちろん愉しめますが、自称・小路さんフリークのわたしの意見としては、前二作を読んでからの方が、ダイさんはじめ登場人物それぞれの成長と練熟と存在する意味が分かってより深く理解できると思います。





このシリーズ、小路さんの作品の中でも結構ヘヴィなんですよね。事件の核心は。
それをダイさんや丹下さんたちキャラクタの軽妙なやりとりとフットワークの良さで、するすると読ませてしまう。
この新作も変わらず。

ただ、印象が少し違うかな、と思って振り返ってみると、『モーニング』の主役(主人公じゃなくストーリーの核)は淳平さんだったこととダイさんの仕事〈弓島珈琲〉のマスターというのが奥に引っ込んでたのですが、次作『コーヒーブルース』は100%〈弓島珈琲〉を中心にしてダイさんが文字通り主役になったことで、ダイさんという人物と〈弓島珈琲〉の骨格がしっかり組みあがったんです。そしてこの新作『ビタースイートワルツ』は〈弓島珈琲〉を仲間達のベースキャンプに据えて物語を支配するのが三栖さんということで、ダイさんにも〈弓島珈琲〉にも存在感というか箔というか、そういうものが備わったなあって思いました。

『コーヒーブルース』が1991年の出来事で、リアルではバブルが弾けたもののまだ社会全体はその残光とでもいうようなものでパワーがあったんですけど。でも携帯電話がまだ必需品ということもなかった時代。作品中でも公衆電話が大活躍ですが、それはそれでキャラクタは必死に闇雲に走ってた。
それが2000年『ビタースイートワルツ』では携帯が必須アイテムになってる。PCで調べ物が当たり前になってる。ダイさんや純也くんたちは明確に目的地を見て走ってる。時間のロスが減って便利な時代になったけど、一昔前は、ひたすらに大切な人のことだけを想いながら全力疾走してたんですよね。そういうのも悪くないなあって。でもそれがノスタルジーになるのももうすぐ。

またしても、人探し。
姿を見せない人が二人。しかも一方は、命の危険があるかもしれない。
これ、どこでどう繋がるんだろう、と思いつつ読んでいて、カチリと繋がったときは「これで事件が解決するのね!」と思えるほど楽観的になるのに、やっぱりどうしても詰んでしまう。
前作よりももっと強く思いました、「これ、解決するの……?」って(苦笑)
しかーし。
この風呂敷がまた見事に畳まれていく。
「信頼」と「友情」で。
今回は、底の知れない三栖さんにまつわる展開だけに、信頼も友情もなかなかハードです。
自分の過去のことをほとんど話さないばかりか、当然ながら仕事のことも話せない、つまり三栖さんのことをよく知らない、そんなダイさんたちが、それでも三栖さんのために脳みそ振り絞って考え考え、三栖さんにたどり着く。三栖さんに導かれて。そしてそれも全部、計画書を書いた人がいた。メタの中のメタみたいですね。
(この人と三栖さんで、薄い本が出てもおかしくないw)(でも小路作品の二次ってあまり聞かないねえ。誰か書いてほしい気もする……けど、原作が既に萌要素満載w)

一番驚いたのはやっぱり、橋爪さんでしょうか。
三栖さんの、本質的な部分は何も変わっていないが「罪」でそれを封印して、ひたすらに償いの人生を選び続けているという評が、なによりも重く響きますね。
宿命と運命を明確に区別したような。
ダイさんにしても、根本的な部分でももう赦す赦さないという範疇を超えてる感じがしました。
本質が刹那的な人格が、どうしたらここまで自我を抑えられるのか。橋爪さんというキャラクタの重みを、読みながらずーっと考えていたような気がします。

本当に、どこがどう繋がるのか、読み進めていけばいくほど謎だらけ。謎の小島がぼこぼこと生まれて大きくなっていくのに橋がなかなか架からない。
やっとぜんぶが見えたとき、事件の中心にいたのは「信頼」も「友情」もちょっとずつ忘れてしまった人。
一人の思い込みや余裕のなさが、こんなに多くの人たちを巻き込んでしまって、普通だったらいたたまれないなあ。でもそれすら、「無事でよかった」と赦してくれる人たちだから、みんなそれぞれの苦い記憶や悲しみを持ち寄ってるのかも……、と思える懐の深さ。

そうそう、あゆみちゃん、いくらベタ惚れだからって、ダイさん自身のことはともかく自分が会ったこともない淳平さんたちのことまで親友に喋るってのはさ、話す前にダイさんにひとこと断り入れといた方がいいよ?っておばちゃんちょっと苦笑いしちゃったよ。いくら今回は事件解決の鍵になったとは言ってもね……。
ということで、あゆみちゃん結構必死の巻(苦笑)
そりゃあね、好きな人に昔婚約者が居てしかも事件絡みで死んでしまった、というのは焦るよね、死者には勝てないよね、うんうん。
『モーニング』で、この二人がどうなるのかは分かってるだけに。確か、あと五年はこのまんま(笑)

茜さんのときも、そして夏乃さんにしても、ダイさんという人は、自然な流れの中での関係性というものを非常に大事にする人だと思う。
決して周りに流されるのではなくて、自分の意思で流れに乗る。そしてその流れを端折らずに、自分の中に畳んで重ねていくような人に思えるんです。
あゆみちゃんに対する躊躇いは至極ごもっともで、けしかけてる周りもそれは承知してて。
ダイさんの語りの中には出てこないけど、あゆみちゃんとのことも実は「勘/本能のようなもの」と本当はハッキリと言いたいような、それが「自然な流れの関係性」じゃないかと思うんですよね。
だからこそ、佳境に入ったあのシーンで、改めてあゆみちゃんを見てそこに大人の女性への移ろいを感じたダイさんの語りが効いてきて、シリーズの次回作に繋がるんでしょうきっと。

って何言うてんのわたし。

夏乃さん。
ラストシーンで、お父さん、吉村さんが出てきます。
その吉村さんが、娘の元婚約者で、元部下にかけた言葉に泣きそうになった。
いや、橋爪さんの件でもそうですが、吉村さんの苦しみと憎しみは凄まじかったはずなんですよね。『コーヒーブルース』であんな事件に発展するほどに。
事件が無かったら自慢の婿になってただろうダイさんに、「早く結婚しろ」と言えるまでに、いったいどれだけの葛藤があったのか。いくら頻繁にまた会うようになったと言っても、どんな思いでこの言葉をかけたのか。
今回わたしが一番心に残ったのは、このシーンでした。

女子力っていうのとは違うけど、甲賀さん、好きw
三栖さんGJ。このひと悲しませたら、ぶっ飛ばすよ?

小路さんの小説に多く登場する、天才的に頭のいい人。
成績だけじゃなくて、何事もしっかりと考えられる人。
もう成績はどうしようもないけど、わたしもちゃんと考えられる人でありたい。十手先なんて無理でも、明日の一歩くらいは考えておきたい。
だからそれには、今日をちゃんと生きないとね。

(2014.7.11 読了)
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