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『漂流巌流島』 高井 忍 著

2008/09/04(木) 08:34:49 高井 忍 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ミステリ・フロンティアの7月の新刊。
 それだけなら別にどうってこともなかったんですが、この作品の煽り文句がすごい!
 <綾辻行人・有栖川有栖両氏が絶賛>
 安楽椅子探偵コンビのお墨付きとは!ふふふ。これだけでも読む気満々ですよ(笑)
 第2回ミステリーズ!新人賞受賞作を含む連作短編集。
 高井さんのデビュー作になるそうで、今後がめっちゃ楽しみな作家さんがまた1人。是非とも皆様にご紹介したいのです。




えーと。
表紙の中のあらすじをまるっと抜粋。

<宮本武蔵は決闘に遅れなかった!?赤穂浪士は浅野内匠頭が殿中刃傷に及んだ理由を知らなかった!?近藤勇は池田屋事件を無理やり起こしていた!?鍵屋ノ辻の仇討ちは都合よく行きすぎた!?>

つまり。巌流島の宮本武蔵と佐々木小次郎のアレとか、十二月になると毎年テレビで放送される忠臣蔵とか、幕末のゴタゴタとか、荒木又右衛門のアレとか。
そんな有名すぎるほど有名な歴史上の事件について、実は隠された裏があったんじゃないか?テレビの時代劇を鵜呑みにしすぎてないか?という、<挑戦的歴史ミステリ>。

実はですね、私、歴史は大好きですが、守備範囲は古代史とか百歩譲って中世までなんですよ。時代を遡れば遡るほどわくわくする。文字としてかなり資料が残ってる江戸時代や、まして明治以降の近代史なんて、全くもって興味ございません(笑)
まあ日本人の常識として、巌流島の決闘は誰と誰のことか、とか赤穂浪士の討ち入りまでの色々とか(余談ですが、数ある忠臣蔵の中では、かなり昔の大河ドラマ『峠の群像』が一番好きw)、また京都人、京都南部に住んでりゃ嫌でも目に付く幕末のあれやこれやのおかげで、大雑把なことは知ってますよ。
ああ、最近の大河ドラマでスマップのカトリくんが頑張ってた新撰組のおかげで記憶に新しい人も多いかな。

本来は、名探偵や語り手が殺人事件の只中にいて、生々しい手触りで事件を解いていくミステリが一番好きなんです私。
どっちかっていうと、人の生死に関わらない日常の謎系は、よほど好きな作家さんでない限りあまり読まない。

ところが、この作品の上手いところは、近代史を語る上でどれも生暖かい血がどばどば飛び散ってる、一人ひとりの生命のかなり軽い大義至上主義の時代の事件を取り扱っているんですね、事件の真相がどうあれ事件があったことは厳然たる事実。
だから、凄惨極まるスプラッタにはならずに、でも、どーでもいいやんかそんなこと…てな冷めた目線にもならない、適度な緊張感があるんです。
挑戦的歴史ミステリとは良く言ったもの。
もっとも、東京創元社からのメルマガでの作者によるあとがきを読むと、挑戦的、というのは予想外だったようですけれどね。

また、漫画みたいに探偵がタイムスリップして過去に行ってしまうとかそんな奇天烈なものではなくて、予算も時間もないやっつけ仕事的な映画監督と新米脚本家が、次の映画のプロットの為にこれらの事件の資料を漁り、それを検証していく流れに沿って矛盾点を洗い出す、という、無理のない展開です。

なので、その資料をつき合わせている時に出てくる江戸時代の書状の文体、「…ナントカで候」とか、そういうところに若干の労力は必要ですが、話の流れそのものはめっちゃ読みやすいんですよ。名探偵の三津木監督と新米脚本家の「ぼく」、途中からはアイドル女優やスタッフの2人も加わってきますけど、キャラ設定にイヤミなところもないし、三津木監督がバチバチっとくるそのあたりの描写は、まさしく名探偵のそれです。ミステリ好きにはたまりませんて♪

で、件の新人賞を取った表題作の【漂流巌流島】。
はいはい、安楽椅子探偵コンビの先生方が絶賛、という意味がよーくわかります!
まさか、巌流島の決闘が××××トリックだったとは…!ひゃーこりゃびっくり!眼からウロコでした。
通常、知られている宮本武蔵と佐々木小次郎に、これほどの人間関係が絡んでいるとは、全く知りませんでしたよ。
また、巌流島に関する後の時代の資料がこんなにたくさんあるのなら、そりゃ伝承は様々になってしまうし、曰く因縁もてんこ盛りでもう複雑怪奇というか…、とにかく私達が普通に知っている巌流島の決闘が、なんだか違うものに見えてくる。
作者が資料や伝記、またネットと膝付き合わせて纏め上げたらしい、この新しい謎解きはマジで読み応えがあります。

まあこの巌流島が一番ミステリっぽいと言うと語弊があるかもですが、赤穂浪士の討ち入りという元禄の一大事が、後々までいかに幕閣・大名・武家社会に影響を及ぼしたかというそんな殿中刃傷沙汰の数々なんて知らなかったし。
新撰組にしたってその頃の京都人からすればあまりありがたくない集団やったから、池田屋事件がどれほど明治維新まで尾を引いたか、また新撰組とりわけ近藤勇に関してこんなバックグラウンドがあったのか、とか。
荒木又右衛門の名前くらいは知ってても、鍵屋ノ辻の仇討ちの詳細を知らなかった私には、その事件の背景にあの軍団…もとい(笑)集団が絡んでたらしいとか、いや面白い歴史読物でしたよ。

注意。さっき私、江戸時代の書状の文体に苦労した、と書きましたが、えーとこれは丁寧に読んだ方がいいです。
なにせこうしてかき集めた資料を元に矛盾点を洗い出してミステリ仕立てにしてあるから、もちろん伏線もこの中に含まれます。
多少読み飛ばしても大丈夫かなと思った私は、大ばか者でございました…。

史実を今更根底からひっくり返すほどの破壊力ではなくて、当時の関係者があえて伏せた事柄、知られたくないからくり、そういうものを読み所にしているこの連作短編集、時代劇がお好きなら絶対楽しいですし、そうでなくても冗長な部分がないからぐいぐいと読み込める。
最近のミステリ・フロンティアの中では久々のヒットですよ♪
ましてやこの高井 忍さんて、これがデビュー作。受賞作の『漂流巌流島』は2005年に発表されたということで、かなりのインターバルがありましたが、これから一体どんな作品を書かれるのか、もうわくわくします。ちょっと脱線するけれども、この高井さんて京都の人なんですね。立命館の出身。京大出身の綾辻先生、同志社の有栖川先生、他、関西とりわけ京都に縁のある先生方は多いですが、この高井さんもこれからその仲間入りをされるのかな。

今回、図書館で借りましたが、うん、買ってもいいですこれならw
ということで、お勧めミステリでした!

(2008.0811)
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