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『ヨハネスブルグの天使たち』 宮内悠介 著

2014/09/11(木) 23:09:11 宮内悠介 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2013/05/24)
宮内悠介

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 …………凄いもの読んでしまいました……。これはキツイ。
 SFなんですよ、SFなんですけどね、何て言うんだろう、SFってもっと非現実的というか今の価値観や概念とはまったく違うことを愉しむというかそういうのがいいなあ、と思ってるんですよわたしは。
 こんな、容易にイメージできてしまうような未来の姿を読んで、言葉なんて無いですよ……。




上手いです。構成が。

また、どれだけ瓦礫が積み上がっても生命や倫理や知恵が軽んじられてもそれでも這いつくばって生きる人たちのほんの幽かな希望の光を消さないでいてくれるストーリーに少しだけ救われます。

それでもどうしても、人間というものに絶望しそうになります。

この本の中に、神様は居ません。

でも、似たような存在なら、出てきます。
わたしはそれが、あのロボットを量産したこのいつとも分からない世界の日本じゃないかと思えます。

神様の全能感を指す言葉じゃないです。
普遍性というのとも違う。概念でもない。
ああ、本当に上手く言えません。

ただ、現実にわたし達が生きているこの日本という国はこのままだと、世界にとって諸刃の剣なのかもしれない。その危うさが、神様や信仰というものとよく似てるなあ、と、そう思ったんです。

この世界の人たちはみんな、このロボットに踊らされて未来を捻じ曲げられ、それでも逞しく強かに、必死に生きています。
その姿を、わたしは心の傷ひとつ付けずに読めるかな。たぶんこのDX9というロボットでさえ、感情はあるというのに、何が良くて何が悪いかという基準だけで読めるかな。
わたしはきっとこれからこの本を何度再読しようが、そのたびにさくさくと傷ついていくだろうと思います。

DX9というロボットや人々に当たり前に使われている技術や描かれている年代からはSFだと認識しますが、一方でその舞台はどこへ行っても現実世界の投影です。いまこの地球上に見られるいろんな戦場を、対立の構図までそっくり転写してあって、まるでDX9です。
何が現実で何がフィクションか、あいまいになってくる。
読者の意識と小説の意識が相互に入れ替わったか、または転写かもしれない。
倒錯。
という言葉がよぎりました。

時系列がバラバラなのかと思ったけど、DX9という存在の軸があるのと、複数の場所に登場してくる人物がその前のお話を踏まえているので繋がってるなとわかります。
構成が上手いと書いたけど、一話目のヨハネスブルグと最終話の北東京が合わせ鏡になっていて上手いというよりは美しかった。

瓦礫の中、砂埃や悪臭の漂う中、銃声や銃弾の飛び交う中、それぞれの国の中枢機関の姿がほぼ見えない中、悪意と憎悪と嘲笑と下心と打算の中を、命がけで駆け抜ける彼ら。

どんな未来が待ってるのか、どんな死が待ってるのか、応援も手助けもできないし拒まれるのが分かってるし、もどかしい気持ちになります。
それでも、埃まみれで体臭が強烈で笑顔なんてなくて常に駆け引きで目に光も希望も乗せない彼らに、わたしは何かを託したくなりました。
世界を変えて欲しい。
〈種子〉とはこういうことなのかもしれない。

読んで後悔はしてないけど、通り過ぎるようには読めない、読み手の責任を痛感する一冊でした。

(2014.5.16 読了)
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