こんな本読みました。

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『蕃東国年代記』 西崎 憲 著

2014/09/10(水) 17:14:19 西崎 憲 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
蕃東国年代記蕃東国年代記
(2010/12)
西崎 憲

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 ……わたしの今使ってるPC、「蕃」が変換できなくてですね……、アフィリで検索してアイテム呼び出して、その書影についてるタイトルからコピペしております……くすん。
 面白かったー。
 第七回京都水無月大賞の候補作である『世界の果ての庭』を読んで西崎憲さんにハマりまして、いそいそと二作目です。
 『世界の果ての庭』の感想はツイッターで呟いただけでしたね……ありゃ。
 平安時代の日本と、唐の時代の中国を混ぜたような、架空の国、蕃東国。ファンタジーです。




連作短編集。ですが、登場人物の主役は固定されていません。舞台の時代が、同時代。

〈雨竜見物〉
〈霧と煙〉
〈海林にて〉
〈有明中将〉
〈気獣と宝玉〉

の五編。

唐と倭国(日本)の影響を強く受けた国、という蕃東国。人名地名こそ中国っぽいですが、社会や文化、神話にいたるまで、ほぼ日本の歴史をベースにしてあるので馴染みやすいと思います。
……わたし、最初は「台湾みたいな感じ?」と思ってたんですけど、「日本海にある島国」ってことで、じゃあ佐渡島か?とかボケたことを……(汗)
ハードカバーの表紙を開いてすぐに、それらしい古地図があるじゃないですか……ちゃんと最初から見ましょう。

いや凝ってます。こんな古地図をイメージしてからプロットを組み立てたとして、どうしたって現実のピリピリする緊張感を思い起こさずにはいられない場所なんですがそういう面倒くさいことを一切感じさせない、幻想的でありながら飄々とした奇譚はセンスが必要ですよね。

何の予備知識もなくいきなり読み始めたので、最初はこの世界観に面食らいましたけどすぐに慣れて、どんどん読み進めていきました。
一話一話がそれぞれに個性があって印象的で、でも最後まで読み終えるとスッキリとひとつの幻想歴史ファンタジーになってた。満足感がありました。

日本の社会階層や歴史、日本の文学史をもじってあるので(万葉集とか古事記日本書紀、あと神話の神々の名前とか国生みとか)あんまり違和感ないし、日本の歴史を下敷きにしたファンタジーっていうのも面白いですね。
海外のファンタジーは、古代からの複雑な歴史と宗教観から、ドラマチックな神話やアーサー王の伝説とか、もってこいなテーマがなんぼでもあるけど。
日本は記紀とか万葉集とか竹取物語とか、歴史書なんだか文学なんだかはっきりしないところもあるから。竹取物語の五人の求婚者って実は…みたいな話がありますよね。

こうして日本の神話や歴史をベースにファンタジー、幻想小説にするには、不自然でない距離の架空の国がちょうどいいんですね。

なによりも一番、粋なことしはるなあ!と感心したのが、一話が閉じてその後にある、付記というのかコラム風というのか。
蕃東国の紹介であったり説明であったり、そういうものを、後世の研究資料からの引用という形やインタビューにして。
この、「後世の研究資料等」により、蕃東国は、実は現代まで続く国家であることを示しているわけですよ。
幻の島国でも、誰かの頭の中だけにあるユートピアでもなく、日本の一番近い隣国として。
短編五編の時代は日本でいえば平安中期から末期あたりだと思うんですが(陰陽師みたいなのは居るし、なにより「武家」が存在しますのでね)、蕃東国も日本と同じように歴史を積み重ねて現代まで続いているんですよ、という導きが。

典雅な時代に酔っていた読者の意識をふっとこちらに戻すのかと思いきや、その付記ですらファンタジーですから、二重の扉ですよ。
読者の心が、なかなか本当にリアルに戻って来られない(苦笑)。
いつまでもこの架空世界をたゆたっているような感覚でした。

最終話の〈気獣と宝玉〉が短編というよりは中編のボリュームがあって、一話目の〈雨竜見物〉と同じく主人公は宇内さま。
この人の飄々さが、最初と最後でこの一冊をきゅっと縛ってあるんですが、中の三編はその縛りから飛び出さない程度に動的で、じゃあ宇内さまの物語はあっさりしてるのかというとぜんぜんそんなことなくてリーダビリティがすごい。
面倒くさがりだという宇内さまですが、思いやりはあるし友情に篤いし好奇心旺盛でいい人なんですけど、大胆さと正義感と少しの狡さが混じってる、ほんのり黒いお方ですねw
そんなわけで、〈雨竜見物〉と〈気獣と宝玉〉は好きだなあと。
あと、〈有明中将〉も。
こんな風に、「罪深い人物」を描写するのもミステリっぽくていいなあ。

印象度の強弱はあれども、五編ともに時間が経ってもタイトルを見ただけですぐに物語が思い出せるくらいに、面白いです。

『世界の果ての庭』は、美術館の絵画一枚一枚の前に立って、その絵の奥に埋め込んである物語を読み取っているようなイメージのオムニバスだったですが。

こちらは幻想歴史ロマン。どっぷり浸って読みました。満足満足w

(2014.4.14  読了)
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