こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『裁判員法廷』 芦辺 拓 著
芦辺 拓 > 『裁判員法廷』 芦辺 拓 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『裁判員法廷』 芦辺 拓 著

2008/09/04(木) 08:32:56 芦辺 拓 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
そのものズバリ、法廷ミステリです。それ以外に言いようがない(笑)
 まだ時期尚早との意見を尻目に、導入がすぐそこまで迫ってきた裁判員制度。いくらテレビで説明されようと、やっぱり全然実感わかない。
 この作品はもちろんフィクションですが、もし万が一、自分が裁判員に選ばれてしまったら、一体どういう具合なのか?という…意味で、かなり参考になります。
 ということで、感想というよりご紹介。





そんなに驚くほど分厚いこともないこの作品、【審理】【評議】【自白】の三つが収められています。

で。<プロローグにかわるメッセージ>として作者から読者へ、大事なことが書かれています。「あなた」とは、読者である私のこと。
ただし、この三つの事件は独立して……います(このタメは何でしょう?読んでみると分かります/笑)。三つとも、「あなた」と誘導される目線があり、その法廷の中にいます。

【審理】【評議】【自白】とも、裁判長および職業裁判員と担当検事、弁護人は同じ人物です。特に弁護人は、芦辺先生のシリーズ探偵である森江春策。だからこそ、ファンにとってはミステリなんですよ。森江春策なら事件の真相に迫れるはずっ!てね。

またこの三篇とも被告人と弁護人には非常に不利な、ましてや最後の【自白】なんて被告人が自分がやりました、と述べることから始まるんですから、さあ森江サンは一体どうやって、この圧倒的に不利な態勢を覆すんだろうか、とぐいぐい引っ張られていきます。

裁判員六名が裁判長と並んでこの法廷を観察し、検察側の証人と弁護人側の反対尋問、それにより開示される事件のディテール、それらをどう捉え有罪無罪と量刑を下すのか、もし私がいつか、裁判員に選ばれてしまったら、こんなに冷静でいられるだろうか…?と、思ってしまうほど、読み応えがあります。
「あなた」と目線を誘導されている所為でもあるのでしょうが、裁判員の意見をなるべく虚心に聞こう(読み取ろう)とするし、裁判長と裁判官の言葉には重みがあります。

この三篇とも、事件そのものは独立してるし被告人も六名の裁判員ももちろん別人、なのになんかどっかで繋がってるような、ヘンな気がします。
が、それ、作者である芦辺先生の思う壺なんですよー!(笑)
ただの社会派じゃなく、本格ミステリの書き手なんです芦辺先生は。
読者である私が「あなた」という目線に慣れてきたところで、いやー最後はヤラレマシタ★★見事に騙されたー!

この騙された、という気持ちを快感と取るかふざけんなと取るかでミステリ読みの資質があるかないかが分かるかも☆

裁判の進め方としてはもちろん法廷物、でも検事側の主張や証人尋問の矛盾を突く様は間違いなく本格ミステリです。森江春策を弁護人と見えるのか探偵にしか見えないか(笑)

とにかくものすごく読みやすいのに、ぎゅっと中身の詰まった作品です。
裁判員制度というものの、現実と理想が現れているようにも思います。

おそらく、実際この制度が始まって現実味が増してきたら、この中の三篇は理想に過ぎるかもしれない。現実はもっと醜悪で歪んでいて、それでいて短絡的で救いようが無いかもしれない。たとえば、あの秋葉原の通り魔大量殺人なんかだと、もう市井の裁判員には手に負えないほど荷の勝ちすぎた裁判になるのでしょうが、裁判員として刑を下す立場にいる以上、目を背けることも許されない。
もしそんな事件を担当することになってしまったら………一体私はどうするだろう……裁判員は一たび事件にかかわったらその内容も考えも、一切家族にさえ話してはいけない決まりですから、自分の胸の中に納めきれるだろうか……。

また裁判員同士のコミュニケーションが、これほど円滑に進むのかという不安もありますね。
現実、社会的立場を全て一時停止して法廷に居なくてはいけないというだけでも、かなりのストレスです。
そして、今の日本人が、他人の意見を静かに聞き自分の意見を客観的に説明し、冷静に話し合い裁判長や裁判官に礼節を尽くすほど、成熟しているのだろうか。私には反対に、自分の意見ばかりを主張して逆にひっくり返されたりしたら逆ギレしそうな人種が今の日本人であるように思えて仕方無い。

果たして裁判員制度を導入するには、もう少し、いやもっともっと時間をかけて検討するべきだったんじゃないか。素人の裁判員が、冷静に判断を下せるくらいにまでもっと吟味を重ねてあらゆる想定を考えておくべきなんじゃないだろうか。

そんなことをつくづくと考えされられた、その意味でも一読の価値のある作品です。

多分今年のミステリ界でもベスト級だと思う。

法廷ものと本格ミステリが見事に融合した、名作です。
未読のかたは是非。

(2008.08.11)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。