こんな本読みました。

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『ハムレット復讐せよ』マイクル・イネス 著

2008/09/04(木) 08:31:35 マイクル・イネス THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ココを御覧になっているかたの中で、1937年に発表された英国ミステリを好んで読まれる嗜好はお持ちでしょうか?
 解説によると、この1937年という年は、古典ミステリの名作と言われる作品が数多く発表されたそうで、ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン名義を含め)の『火刑法廷』『四つの凶器』他、アンソニー・バークリーの『試行錯誤』など、いわゆる黄金時代ですね。
 図書館で借りてきたんですが、私が今手にしているこれは1997年の初版です。
 ところが、この作品は「翻訳が悪い」ということで有名だったそうで、1997年以前の昔、一体どんな訳だったのか、逆に興味がわきました(笑)
 こんな大昔の古典ミステリ、翻訳ものは読まないというかたは結構ですが、機会があれば読んでみようと考えておられるかたは、これより先にお進みになりませんよう。



なんでこの本を手に取ったかと言うと、もともと図書館でぐるっと見回している時に目にしてはいたんです。
そこに、先だって購入した同人誌『クラシック・ミステリのススメ』の中で紹介されているのを思い出し、さらにそのレビュアーのお1人が朱鷺野さんだったという偶然に、「ちょい分厚いけど、いっちょ読んでみるか」と。
それにマイクル・イネス(マイケル・イネスとも)は初読じゃないし大丈夫だろう!と借りてみたら……。

いやー苦労した!(笑)

ミステリとしての骨格ではなく、ハムレット及びシェイクスピアという世界についていけなくて(爆)

演劇鑑賞を趣味とされていたり、英米文学に興味のあるかたなら常識だろうシェイクスピアを、私は全く知らないんです。今まで読んだコトないし興味もないし。
ハムレットとかリア王とかそんなタイトルだけですね、かろうじて知ってるのって。
そんな訳で、最初は全然ノれないんですよ。
何が面白いのかが分からない。

おまけに。
登場人物が多すぎる!主な、と紹介されているだけで36人ですよ!その上、同じような職業だったり、似たような名前だったり。
さらに問題なのは。

この作品、英国のさる大公爵家の夫人の発案で、自分ち(勿論宮殿一歩手前の大邸宅)に親戚やら友達やら政財界のお偉方やらを招集して【ハムレット】の素人芝居をやろう、それを他の招待客の前で上演しよう!という物語なので、事件にかかわる登場人物がさらにハムレットのそれぞれの役を与えられている、という訳なんですよ。
もう何が何やらこんがらがって、冒頭の登場人物のページとハムレットの配役一覧のページに栞をはさんで、何度も行ったり来たりしてしまいました。

で、なんとか頑張って読み進めていくうちに、だんだんとコツがわかってきました。
ミステリとしての事件は、素人演者の1人で、英国政界の重鎮が芝居の最中に殺されることから動き出すのです。
その前にいろんな仕込みがありますよ、妙な犯罪予告が届いたりハムレット役のプロの俳優が大広間で即興で薄気味悪さを感じるほどの演技をして見せたり、公爵家当主の親戚が他のキャストと過去に因縁があったり、公爵夫人の訳分からない人付き合いの強引さにちょっと引いたり(笑)

ただ、第一の殺人(これは結局、連続殺人及び殺人未遂事件)がハムレットの芝居の最中の、それも被害者が役の上でも殺されるというまさにその場面なので、何かとハムレットに惑わされがちなんですが、最後まで読んで見るとこのハムレットは真犯人の自己表現であると同時にただのモチーフでもあるんです。
だから、ミステリとして動き出したならばもう、ハムレットやらシェイクスピアやらは軽く読み飛ばしてもいいんだ、ということに、遅ればせながら気付きました(笑)

贅沢言えば、事件現場である芝居のステージの見取り図が欲しかったな。
丁寧に読めばイメージはできますが、見取り図があった方がもっとよく人物の動きをトレースできたと思う。

まあ、この複雑に見えるステージが伏線なんやから無理か(笑)

分厚いわりに、事件の流れが自然で取って付けた感がないのも良かった。
で、分厚いのはハムレットについての講釈だとか犯罪心理についての議論だとか古きよき英国の情景やらにページが割かれている所為で、事件だけを追ってみると実にシンプルなミステリなんですよ。いや、シンプルとは違うか、スパイがどうだの機密文書がどうだの、そこに金庫破りの泥棒の名前が出てきたりして事件は一つなのか二つなのか、繋がっているのかいないのか、スコットランドヤードのアプルビイ警部と共に頭を悩ませますが、それらが上手く絡み合っていて一つに溶け合っているんですよ。

で、アプルビイ警部の友人であり、素人芝居の演出担当でもある探偵作家、ジャイルズ・ゴットとアプルビイさん、推理に推理を重ねながら関係者を全員アリバイ調べするんですけど、これはイヂワルよねえ(笑)
ゴットさんが作家特有の直感やら閃きによって事件の真相が明らかになったようになってるんですが、実はそれ、ぜーーんぶ真犯人のミスリード!
この人物が犯人なんです今牢屋に入ってます、という報告と事件の概要を、関係者全員の前でゴットさんに長々と喋らせといて、それによるどんでん返しを狙ったアプルピイさん。大貴族とその縁者とその友人という顔ぶれを前にした友達に、赤っ恥かかせたね!そんなに公爵令嬢との結婚が妬ましかったのかい?(←違う)

一度は無関係と思われたスパイの存在が少しずつ濃くなってきて、最後にはそれが事件に深く結びついて、さらに真犯人のハムレットに対する思い入れの深さとかプライドとかが全体を複雑に見せていた。
怪しい人はそれなりに多くいるのに決め手に欠けアリバイは成立し、物的証拠が最後まで見つからないとくる。
そんな事件のクライマックス、ゴットさんの半分は当たっててもう半分は決定的な決め手に欠ける推理を無意識に反芻していた他の登場人物が、事件が起こってからの人間の動きや邸宅内の違和感に多方向から同時に光を当てて、ある人物を包囲していく様子は、緊迫感があってめっちゃ面白い!特にある女性が、その女性特有のカン働きで、刑事さん達には気付かなかったある一点を突き詰めていった、その明晰さには脱帽です。
そーかアレも伏線かあそこもそーだったのかー確かに憶えてるけど気にしてなかったよー!と、次々回収されていくパズルのピース。
伏線がものすごくさりげなくて、それがハムレットに振り回されて気が付かないんですよ。
そして事件の真相や犯人像は、これは凄いと思いました。
私、ミステリ読みとは言ってもめっちゃ偏ってるしそれこそ肌の合わない作家さんのは一度読んですぐに忘れるという不届き者なので、今までの読書経験と比べるのは甚だ間違ってますが、それでもこの真相は凄いし綺麗!あまりお目にかかれない、殺人事件でした。

そういえば、途中めっちゃ印象的な一節があるんです。
アプルビイ警部と容疑者の1人が、殺人というものの一面について討論しているんです。

「~~殆どどんな殺人も宣言であると言ったが、自己宣言というものは、結局はある種の露出狂と変わらないんだな。~~要するに、脚光を浴びようとする自己顕示欲の究極の現れ以外の何物でもない」

……これ、1937年に発表された作品ですよ、でもこの殺人という犯罪の性質の表現って、現在の無差別殺人において必ず出てくるキーワードがありますね。
殺人は声明・宣言である。自己顕示欲の現れである。
ぞっとしました。
殺人という犯罪は昔から変わらないのか、それともイネスは未来を予見していたのか。

ああまただらだらと長くなりました。
ここまでお付き合いくださって、ありがとうございました

(2008.08.06)
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