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『魔法の夜: 竜宮ホテル』 村山早紀 著

2014/03/12(水) 01:52:02 村山早紀 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
魔法の夜: 竜宮ホテル (徳間文庫)魔法の夜: 竜宮ホテル (徳間文庫)
(2013/12/06)
村山 早紀

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 …………涙腺決壊……。
 ここ最近の村山先生の新刊はどちらかというと笑顔になってるような、泣くより笑ってる自分の方が多くて、耐性ついてきたかなー涙よりも笑ってるほうがいいかなーと思ったりもしたんですが。
 村山先生、本気出してきました……!いえずっと本気の先生ですが今回は何かが違う。なんだこれ!泣かずに読める人がこの世の中にいるのか。いや居ない。反語。
 この文庫の最初からさいごまでが、村山先生からのクリスマスプレゼント……いや、違うな、でっかい樅の木、綺麗なクリスマスツリーですね。
 大切な人へのクリスマスプレゼントにうってつけの一冊です。超超オススメ!





本当に、クリスマスツリーのような一冊。
一話ごとのお話の輝きが、響呼さんやひなぎくちゃんはじめ優しくてあたたかいキャラクタのひとりひとりが、ツリーのモールのようにぴかぴか光ってる、そんなイメージでした。

なんでわたし、サンタクロースを信じなかったんだろう。

村山先生のお話は、あたたかくて楽しくて優しい部分と、悲しみや痛みを抱えて俯いてるような部分とが車の両輪のようで、ただ優しいだけのものでも、ただ痛いだけのものでもないんですが、
この『魔法の夜』は、優しさも悲しみもぬくもりも痛みも、すべてがF1タイヤなみの高性能(微妙な例え…)。クリスマス仕様とでもいいますか。

第一話は、煌びやかなクリスマスパーティでの作家さんたちの大人の世界とピュアな子供の世界との交差、そしてまた人間の世界と魔法使いが交差すること、生と死が交わること、記憶と未来が並列であること……いろんなドラマがもりだくさんです。
なんだろう今すぐクリスマスパーティに行きたい!おめかしして、ホテルのロビーや広間で笑いさざめく人々をカーテンの陰から見ていたい!感化されすぎです。

寅彦くんと響呼さんの初心なやりとりと、それを見守る竜宮ホテルの住人や、あのスーパー天の邪鬼な作家さんとその奥様の視線も優しくて、そしてその中には常識と時間を超越した人がいっぱいいるので、長い目でみてあげてもいいような。このパーティで美しく着飾った響呼さんを見て何かを決心したかもしれない(とわたしは思った)寅彦くんですが、そんな寅彦くんと響呼さんの背中を押すのはきっと「クリスマスの奇跡」という直に話したこともない神様からのプレゼントではなくて、毎日言葉を交わす「竜宮ホテル一同」みたいな感じじゃないかな。

ひなぎくちゃんとくだぎつねちゃんたちが可愛くて可愛くてもう!ぎゅーってしたい!撫でくりまわしたい!
そして、響呼さんの気持ちを察することができるようになってきたひなぎくちゃんの成長と、反面やっぱり天然な心をいつまでも見ていたい親戚のオバサン気分。
そうそう、今回、満ちる先生がイイ味だしてましたねー(笑)
こんなお姉さんいたらいいなあと思う。ちょっとキツイところもあるけどw
序盤の、ホテルの住人たちのコントみたいな楽しいやりとりは、ここが響呼さんのホームなんだなあ、と、くつろいだ気分にさせてくれました。

で、今回、わたしのツボはそう、安斎先生ですよ!なんですかこの人!たまらんwww
なんで寅彦くん気がつかないんだ……まだまだ若いのう……ふっ。

二話目の「雪の歌 星の声」。
猫好きさん、ここでたぶん崩れると思う……堪えきれんかった……(泣)
愛理ちゃん、こんなに優しいお嬢さんなのに、彼女にも影が。
ことりんにも、誰にも言わなかった影の姿、本当の自分の声が。
ペルさんの祈り、なんだろう、祈りよりも願いよりももっと根源的な、「神様って何?」という魂の叫び。
神様がもしもいるなら、万物すべてを愛するはずで、人間の魂しか救い上げてくれない神様は神様じゃないと思う。よ、ペルさん。
でもできることなら、もっと生きて愛理ちゃんと毎日、お鼻つんつんの「おはよう、おやすみ、何食べたの?」のあいさつ、したかったよね……。
このお話は、親と子、家族、友達、いろんな関係のエピソードが多重構造になってて。
ああそういえば一話目のお話でも思ったけど、結局人間は影を持つ生き物で、光に憧れて、でも影を「記憶」に変換して大切に思える複雑さも持ち合わせてるので、きっと神様は人間をそれほどヤワには造ってないんだと思います。いくらでも強くなれる。
愛理ちゃんのように傷つきながら優しく、ことりんや満ちる先生のように笑顔で、ペルさんのように純粋に。

そういえば、響呼さんのサイン会のシーン、わたしちょっとドキッとしたんですけど……ことりんみたいな可愛いお嬢さんてことじゃないですよ、ええとその……気持ちが先走りすぎて列のトップバッターだったとか、白のコートとか…どこかで見たことあるような(滝汗)
ま、まさかですよね?

そしてラストエピソード、「魔法の夜」
倒れるかと思いました……これはあきまへん……(号泣)
ひなぎくちゃんの笑顔がガラス窓に写って幸せなひとときを過ごす向こうで、魂が。
たぶんこれが、クリスマスなんですよね。
Band Aidの「Do They Know It's Christmas?」の歌詞を思い出した……。
あとがきでようやくはっきりとわかりました。
この雪の欠片のひとつひとつは、東日本大震災で失われた命の重み。突然の悲劇に見舞われた魂への鎮魂。
また、あたたかくて楽しいこの世界に生まれてきてほしい、という村山先生の祈り。
あの大震災から、村山先生が、東北と日本全体が受けた傷をひとときも忘れることなく、そして今ネットで多くの人たちが心無い罵倒や中傷を浴びせることへの嘆きと怒り。

そう、村山先生って、実はめっちゃシニカルで怒ると怖いかたなんだと思うのです。

響呼さんを作家設定にしたからだと思いますが、先生のたくさんのシリーズキャラのなかでもたぶん一番先生に近いのがこの響呼さんで。
言葉を、約束を、未来を信じて、祈りを物語に託して、わたし達読者に届けてくださる村山先生は、一方でリアリストでもいらっしゃるので、怒りや悲しみやなんかを行間に埋めて、ファンタジーとリアリティを同時に紡いでいらっしゃる。
怒りを文章に叩き付けることは、誰でもできます。ツイッターで一言、罵倒するだけでも言霊になります。
その感情を抑えること、だれにでも届く優しくて分かりやすい言葉で、実は怒りを伝えるには、どれだけの技術と努力と気力がいるのかな、と。
(さっき書いた、「Do They Know It's Christmas?」の歌詞の、U2のボノがソロで歌ったあの一番肝心のあの部分に、よく似てるなと思ったんですよね)
売り言葉に買い言葉で心を武装させるより、優しい言葉で寄り添うことで心を開き、大切なことを埋め込んでいく。

そういう読み方をしてるからだと思うんですが、ひなぎくちゃんが里に宛てて書いてる手紙のパートと、響呼さん視点のパートの対比が鮮明で。
“北風と太陽”でも開かない頑なな心を開くには、涙の海におぼれたあとに訪れる、むきだしの心、まったくの「素」の顔を見せたときにしかそのチャンスはないのを、先生は物語の形で教えてくださってるような気がします。

ラストは、静かに永遠を思うクリスマス。
壮大さに飲み込まれました。

クリスマスというキラキラしたシーズンを舞台に、
光と影を同じだけ編みこんで、
生と死も糊でぴったりくっつけて、
みんなが悲しみと呪いを笑顔と祈りに昇華できるように、
幸せになるように、
そんな願いのこもった、すばらしいクリスマスプレゼントでした。

悲しい気持ち、つらい運命が無くなることはなくても、そのどこかにやすらぎを感じ取れますように。

この寒い夜に猫を捨てるバカ共が、自分のしたことに気がつきますように。

寒さに震える命に、暖かい毛布が届きますように。

この世界に生きるすべての命に、幸せが降りつもりますように……☆

(2013.12.6 読了)
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