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『イン・ザ・ブラッド』ジャック・カーリイ 著

2014/03/11(火) 02:55:23 ジャック・カーリイ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
イン・ザ・ブラッド (文春文庫)イン・ザ・ブラッド (文春文庫)
(2013/10/10)
ジャック カーリイ

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 大好きなカーソン・ライダーシリーズの邦訳第五弾。相変わらず、ミステリとしても小説としても巧いなあカーリイさん。
 ただ、これまでもそうでしたけど、なかなかに描写がエグイとか生々しいとかなので、そういうのが苦手なかたにはお勧めできないんですけどね、でも読まないのはもったいないですよー、マジで面白いから。
 ……などと書きつつ、読み終えるのに結構な時間がかかった新作なのでした……。






理由はですね、これまでの前四作品と、展開が違うんです。
これまでの作品は、凄惨な事件が起きてカーソンとハリーが出動して仲良しさんなやりとりを愉しみつつも事件の核心にまっしぐらに近づいていくのを愉しむというか、解決シーンまでの手がかりや伏線が全部回収されたことに拍手しつつ明らかになった真相へはほぼ一直線だったので、スカッとした爽快感みたいなものがあったんですよね。どんでん返しのインパクトも桁外れで。

ところが、この第五弾は、新しいタイプのカーソンシリーズ。
カーソンとハリーが事件を追って少しずつ犯人を追い詰めて真相を読者に見せてくれるのは変わりないんですけど、今までは、擬音でいうとキューッというかシュルシュルっというかバババババッというか(苦笑)、とにかくそれまでの展開が真相の一点にすべて集約されていくタイプだったんですが。
今回は、平行する大きな事件がふたつ、その周辺でちらちらする妙な事件と、人種差別の闇が絡まりあって、もちろん終盤になってすべてがつながるんですがなんというか驚きではなくジグソーパズルのようでもなく、ただただ作者の指し示したその場所に画鋲を刺していったら一枚の絵になったね、という、画家が大きな絵を描いたような印象です。
真相がひとつじゃなくて、あっちの真相とこっちの真相があってそれが連動していたんです。
それがしっかりと「物語」になってる。

それでもがっつりミステリです。巧いなあ。本当に。

カーソン自身に感じる違和感も、ちょっとしたご近所さんとの会話も、すべて意味があって。
そしてキャラクタのすべてに登場する意味があって、みんなに闇がある。
作者が一番分かりやすく狙って創ったのが保安官でしょうね。
名前のついた登場人物がかなり多いんですけど、書き分けが上手いのでこんがらがりもせず、それでいて「コイツの存在にはどんな意味が?」と吟味しながら、クライマックスでは「あーココでつながるのか!」と膝を打ちつつ読みました。

スカラー殺害事件の犯人は誰か?
赤ちゃんを誘拐したのは誰か?
犯人は、……有栖川先生の某作を思い出した。
誰がいい人で誰が悪い人か?という分かりやすさじゃなくて、人間誰しもが抱えてる闇を隠した人と凶器にした人。
ポーカーフェイスを作れる人と作れない人。
カーソンは、こういうミステリの語り手としては、捜査側の人間として当然なんでしょうけどポーカーフェイスが上手いです、読者に対して。
だから、語り手のカーソン自身と事件の両方を追う読者は、ハリーやクレアの視線とセリフにも一段と注意して見ないといけない。
なのに今回は、ハリーまでもが自分達が救い上げた赤ちゃんの存在とあからさまな黒人差別に半狂乱になるもんだから、カーソンとハリーの両方を注意しないといけないんですよね。

カーソンとハリーとの気心知れたやりとり、二人して命の危険にに何度もさらされるサスペンス、複雑な構図を解きほぐしていく二人の地道な聞き込みと資料集めでの疲労感と達成感。
相棒ものとして、本当に贅沢な読み心地です。

イン・ザ・ブラッド。
アメリカを中心に、白人至上主義と黒人差別が根強くはびこる土地柄。
でも、きっと本当は遺伝子レベルでの血の選別へのアイロニー。
日本では少ないですが、ハーフやクオーターの人たちのように日本以外の国の遺伝子を持つ人は、まず外見からして美しいっていいますよね。
猫でも、純血種よりミックス、雑種である方が健康だというのが一般的です。同じ生命レベルで言えば、人間だって同じことかも。

わたしはこのシリーズで誰が一番お気に入りかって、カーソンの呪い、ジェレミーお兄様です。
今回ジェレミー様はまったく出てきません……くすん。(カーソンが過去を回想するときに、前作『ブラッド・ブラザー』で判明したこととその後の兄弟のことをほんの数行で教えてくれただけ……)
解説にあるように、この「ジェレミーの影響がまったくない」ことが、相棒ハリーの存在をよりクローズアップさせていて、それがこの第五弾を新境地的なものにしたんでしょうね、納得。
それがいいことなのかどうかは、ジェレミー様贔屓のわたしには判断できないんですけど。
あまり正常とはいえないジェレミー様ですが、悪魔のような突き抜けた視線や思考は、兄の存在それだけで弟の自制を促してたような気がするので……。

本国ではまだ続々とシリーズが出ているそうなので、早く続きを翻訳して出してくださいお願いします。


(2013.11.4 読了)
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