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『野兎を悼む春』 アン・クリーヴス 著

2014/03/11(火) 01:13:30 アン・クリーヴス THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
野兎を悼む春 (創元推理文庫)野兎を悼む春 (創元推理文庫)
(2011/07/27)
アン・クリーヴス

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 〈シェトランド四重奏〉の三作目です。冬→夏ときて今回は春。日本人としては、春夏秋冬のどこが最初でもいいけど順番どおりの刊行の方が収まりがいいと思うんですけど余計なお世話ですかそうですか。
 実を言うと、今回そんなに書くことがないんです、ミステリ的には。
 ただ、シェトランド諸島の小さな島の、人々の心理とか独特なコミュニティとかそういったものでこの長編が支えられていて、かえってその手腕にびっくりしました。



ということで。
本当にミステリ的な何かを書くには、地味すぎるというか特筆すべきものがないというか。言い過ぎかもしれませんが。
警部を悩ませるものは、不可能犯罪のトリックでもないし、怪しすぎるエキセントリックな容疑者に振り回されるのでもない、ただ事故や自殺といった事件性のないものとして済ませるには違和感がある、といった程度のものを、少しずつ突き詰めていって真相を探り出すストーリー。
今回の相棒は、前二作でコンビを組んだテイラー主任警部じゃなくて、今までの二作品で散々貶されたり使えない部下扱いだったり間違えてばかりのやつという評価しかなかった、サンディくん。

サンディくんの実家が事件の発端なので、普通こういう場合は捜査から外されると思うんですけど、まあ最初は事故だろうと思われてたので休暇としてかかわることを許されたんですね。
で、そのうちサンディくん自身が、家族のことで悩み苦しみ、深く傷つくことになるわけですけど、そうしてめきめきと成長していく姿はペレス警部だけじゃなくて読者もきっと目を瞠るでしょう。わたしもそうでした。

母と子、父と子の関係、絆、親戚のしがらみや妬み、……ちっちゃい島の狭いコミュニティしか知らないで暮らす人々の心と目線は、都会に暮らし都会を知る人のものとは決定的に何かが違ってて、どちらが良い悪いじゃなくて、人は誰でも逃げ場所が必要なんだな…と。

そして、仕事を持つことの意味も考えてしまいますね…。
仕事をしてお金を稼ぐことと、仕事を生きがいにすること、仕事を持つことで自分の存在価値を高めること。
第一次産業で成り立つ島で、女性がキャリアウーマンを夢見ることは、悪いことじゃないのに何故か空回りしたり罪悪感を持ったり。
フランのように芸術家であれば、認めてもらえるのかな。
ペレス警部やサンディくんが、刑事という職業のホームと、故郷という意味でのホームを両立させながら生きているのとは対照的です。

知らない人がいない島の中で見栄を張りあったり嫉妬したり蔑んだりすることなどで充満している小さな社会だと、過疎化とか都会にあこがれる気持ちとかいうのは、日本も海外の国々も関係なく普遍なものなのかも。
風通しが多少よくなって、若い人は自由を感じられるからね。基本的文化的な日々の生活と、秘密やプライベートをはっきり分けられるのが都会の生活だと思うから。
狭い村や島の中では、全員顔見知りのくせにそんな知り合いの誰かのスキャンダルに飛びつくほど刺激に飢えてて、よそ者はいつまでたってもよそ者で。
そんな島を愛したハティは、言ってみればスキャンダルに詳しすぎるほどだったミマを慕うことで、島そのものとシンクロしてたんでしょうね。
ミマを喪って、そのシンクロが外された。そしたらこの狭い島は、恐怖にも変わるでしょう。よそ者ってその恐怖を乗り越えて溶け込む努力をしないといけないんですからそりゃ大変ですよ。

遠く離れてみて故郷や親のありがたみが分かる。
近すぎると嫌悪する。
でも人間って、そんなループの中でもやっぱり、パートナーを求めて家庭を持って子供や孫と暮らしたいとか思うんですよね、だから嫌悪することも感謝することも当たり前だし、それでいい。
サンディくんの悩む姿が、読者に、都会に暮らす意味と故郷の哀愁との間で揺れる気持ちをひしひしと感じさせてくれました。

サンディくんにとって本当にいい上司のペレス警部。
人間の出来ももちろんですが、刑事が天職なんですよね。
ペレス警部って、なんとなく、鬼貫警部を思い出すんですわたし。
このシリーズが好きなのは、だからなのかな。

シェトランド四重奏シリーズの未読も、残り一冊。読むのがもったいない気がしてどうしようか。
読みますけどね。


(2013.9.17 読了)
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