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『緋色の十字章  警察署長ブルーノ』マーティン・ウォーカー 著

2014/01/04(土) 20:49:39 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
緋色の十字章 (警察署長ブルーノ) (創元推理文庫)緋色の十字章 (警察署長ブルーノ) (創元推理文庫)
(2011/11/11)
マーティン・ウォーカー

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 東京創元社のHPで何気なーく海外ミステリのリストを遡っててふと目に付いたのでメモしておいたものの中から読んでみました。
 うん、これはテーマというか展開がどんどんヘヴィになっていくので読み応えありました。でも楽しく読めました。
 いろんなトリビアも仕入れられるし、お腹はすくし、美女のドレスの衣擦れの音が聞こえてきそうだし、物語は繊細だし。よかったです。
 そうそう、有栖川先生のことも思い出しました。なぜでしょう?答えはウェブで、じゃなかった、続きで。あ、ウェブで合ってるのか(おい)




早速ですが答え。

この作品、長編です。連作短編でもなければ、章に割ってあるわけでもなく、本当に一続きの長編。
で、殺人事件が起こるんですが、被害者は一人だけです。めちゃくちゃ残忍な殺され方をしているものの、殺人事件そのものは一件だけ。
有栖川先生を思い出したのは、とある長編の文庫解説だったか何かに、「たった一件(被害者がたった一人)の殺人事件で長編をぐいぐいとさいごまで飽きさせずに読ませるのがすごい(わたしの記憶による意訳)」と書かれていたのがずっと心に残ってて、この作品もその言葉がぴったりくるなあ、と思ったからなのでした。ちゃんちゃん。

いやでも本当に、イギリス人作家さんが書いたのこれ?
フランスの人かと思うよ~、主人公は女性にモテモテで捜査の合間にそういう空想を働かせたり実際ある美女と恋人同士になったりするしー。フレンチミステリに多いでしょう、こういうの(苦笑)
イギリスのミステリってもっとこう暗くて人々は静かで出会った異性とどうこうなろうとかそういうのがあってもおおっぴらにしないというか。
意外でした。
イギリス料理が何故不味いのか、その理由を知りました!なるほどねえ。

冒頭部分のブルーノ署長の仕事ぶりやパレードの様子は、まだそこだけしか読んでない(読み始めだから当たり前ですが)時点では、片田舎のひとつの光景、村のしきたりとかルールにのっとった日常と安心感に混ざるほんの少しの退屈と村人全員が大家族のようなイメージ、そんな感じでさらっと通り過ぎました。
けれども。
真相が少しずつ明らかになって、最後に全貌が見渡せた目でブルーノ署長と一緒にもう一度冒頭のあのパレードのシーンを思い出すと、ブルーノさんとともにわたし達もなんて深く暗い深淵を見てしまったんだろう…とやるせなくなりました。

被害者の胸に血みどろの鉤十字が刻まれていたというあらすじで、読む前からナチスに関わることだろうという予想はしてたんですが……。
日本が極東で未だに第二次大戦の諸々が終わっていないように、フランスのこんな小さな田舎の村にも戦争の影はまだ落ちていて、ましてフランスはヨーロッパ大陸の国としてそりゃもう歴史的に征服とか占領とか革命とか独立とか日本人には想像できないくらい複雑な時代の延長線上に現代があるわけなんですね……ヨーロッパの人たちって、歴史の勉強にどれだけの時間を使うんですか?

最初は、「EU」に対する「フランス」のちょっとした抵抗や報復や衝突回避の妙を愉しんでいたのに……。
じゃがいもが、こんなにやりきれない事件になるとは。

とにかく、事件が人を呼ぶ。ブルーノさんに挨拶する。
信頼できる刑事さんたちも、役立たずで風見鶏っぽい人も、暴徒や犯罪組織も、感じのいいイギリス人も、それから…。
最初は、さっきも書いたように村の表面的な紹介とか、ブルーノさんの過去も含めた現在のイケメンっぷりとか、あとなんと言っても超コレステロール値の高そうででも超美味しそうな村での料理と食事シーンとか。警察機関がちゃんと機能してるのでコージーじゃないんですけど、まるでコージーのよう、っていう解説の吉野さんの言葉に深く深くうなずきます。
ところが、事件現場でブルーノさんがずっと引っかかってた「持ち去られたもの」と、ある容疑者を拘留するには数が少ない上に貧弱な証拠を固めるための捜査の過程で分かった、秘密。隠されていたもの、知らなかったこと、村全体が傷つき崩壊しそうな真相。
わやわやといくつものフラフープが回ってるなかを、フラフープを落とさないようにぶつからないように慎重に進んでいくと、そこは時間が戻った過去のずたずたになった村の風景だった、という。
こんなに傷ついた村を、少しずつ再生させて観光客を呼べるまでになった裏に、どれだけの涙を詰め込んだんでしょうね、この小説は。まるで村そのものが泣きながら、殺人に至った経緯を話しているかのようでした。

推理というよりは地道な捜査、警察小説なんですがでもやっぱりフーダニット。その前にはホワイダニット。
最初はロハスな印象のスローペースでも、どんどん加速していきます。
そして、この収拾のつけ方、真犯人の指摘するシーン、刑事さんたちの気持ちを上向かせるだけの材料(別件)の魅力、これは日本のミステリではあまりないと思う。ある意味で、日本人は警察の存在と法律を社会の秩序として個人よりも上に置く不健康なほどの健全さ、からかな。

だんだん何書いてるんだか分からなくなってきました。

美食とワインに酔いしれ、スポーツを楽しみ、家と庭を調え、村のルールを守りながらも少しずつ変化させる柔軟さと知恵と笑顔で乗り切り、大切な村の人々のために暴力にも屈しない。誰もが事件を解決するために助力を惜しまない。気持ちのいい村を舞台にした、人間の業と正義と心を試すお話です。

続編も出てるようなので、早速読まねば!

(2013.8.27 読了)
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