こんな本読みました。

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『闇のしもべ 上・下』イモジェン・ロバートスン

2014/01/04(土) 20:45:30 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT

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闇のしもべ 下 (英国式犯罪解剖学) (創元推理文庫)闇のしもべ 下 (英国式犯罪解剖学) (創元推理文庫)
(2012/09/21)
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 まったくノーチェックだったんですが、「英国式犯罪解剖学」というサブタイトルと、訳者あとがきを斜め読み(ネタを割ってる可能性があるので、ざっとしか目に入れない)、それと東京創元社の新刊案内でこのシリーズの続編が出ることを総合して、評判いいのかな面白いのかな、と読んでみました。
 うん、面白かったです!
 いろいろ考えてしまったこともあったんですけど、それはそれとして上下巻をほぼ一気読みでした。
 昨年末の2013本ミスにランクインすることはなかったけど、アンケートで某ミス研さんが一票入れられていたのでまあ悪くない作品じゃないかな、と補足することで、わたしの頼りない個人的主観に少しの強度を持たせてみたりして。
 未読のかたは、読了後にお付き合いくださいね。




人付き合いをまったくしない解剖学者クラウザーと、名門貴族ではなくてもそこそこ社交界を知っているくらいには中流階級よりは上の家柄の提督夫人ハリエットのコンビが事件を追いかけ続けてとうとう真相にたどり着くわけですが。

まず、この「ハリエット」という女性キャラ。
そして貴族。
これは明らかに、セイヤーズのピーター卿へのオマージュというか本歌取りというか。
ハリエットのキャラ造形とか、ピーター卿のハリエットとよく似てるし。

クラウザーも奇人で影があって推理能力が高くて。下々の人間と交わることにも抵抗ないし、上流貴族の女性に対する感情も。
セイヤーズが書いた、ピーター卿の時代設定よりもあえて古い年代の、それこそ大貴族の威光が燦々と降り注ぐ時代のイギリスを舞台にすることで、「貴族階級」への食い込み方をセイヤーズより深くしたような。そんな印象です。

ウエスト・サセックスでのクラウザーとハリエットのパートとともに、ロンドンでのアレクサンダー一家のパート、そして、軍人としてアリメカで戦っていたヒュー・ソーンリーのパート。
この三つが、最初はバラバラに、やがて登場人物たちにも読者にもつながりが見えてきて、収斂していく。
別に目新しい手法じゃないけど、巻き込まれるキャラクタの不安や恐怖の盛り上がり方がうまいです。
ただ、スーザンとジョナサン姉弟、またハリエットとレイチェル姉妹、グレイヴスやマイクルスといった悪者じゃない方のキャラクタは書き分けがはっきりしてるんですが、襲撃者に恐喝者とか腹黒い人や聞き込みにいく村の住人とか、ソーンリー邸とウェスターマン家のメイドや従僕たち、あとスーザンたちを守る人たちとかに、見た目や名前にもうちょっと区別が欲しかったかな……あの人とこの人が同一人物っぽくなったりしたのはわたしの脳みそが残念だからですかそうですか。

事件の黒幕を隠してるわけじゃないけど、嫌疑がすべてヒュー・ソーンリーに向かってることと本人が荒れてることで、共犯の疑いをもちつつ読んでいた上巻。
事件を追うふたりに、黒幕が次第に表に出てくるようになってはっきりとした悪意を見せ付ける下巻。
そして、幼い姉弟の運命。
ページをめくる手が止まらなかったですよ。少なくともスーザンたちが保護されるまでは。
サプライズやどんでん返しはないです。
ただ、すべてがひとつの線に繋がっていく、そのクラウザーさんの推理が気持ちいいです。伏線ぜんぶ回収してる、よね?

事件の真相っていうのがなんとも瘴気の漂うイヤ~なアレなんですけど、やっぱりこういうときは個人的憎しみの根深い方が強いのね。
アイツがこんな小者に思えるくらいには。
そんな小者に長い間苦しめられてきた人たちですが、貴族ってだけで庶民をもてあそんだり虐げたりしてきた歴史も否定できないというのが、一握りの賢明で前向きな本当の紳士(貴族)を苦しめてるわけで。

ソーンリー家の未来は明るいかもしれませんが、そのぶん過去の影が濃すぎる。
この物語の本当の主役は、ヒュー・ソーンリーだと思いますね。
たぶん、読者は彼を憎めないはず。
エピローグでそれが裏打ちされました。かなしいねえ……。
ヒューに残されたたったひとつの希望である子供達とのギリギリの対面シーン、よかったです……ヒューの顔の傷痕を恐れなかった2人…。

で、クラウザーとハリエットのコンビに、レイチェルやマイクルズといった善良な人々の活躍で、根深く暗く悲しい事件は終止符を打たれたわけですが。
ひとつだけ。
わたしねえ、判事に脅されたクラウザーの過去や出自のついての秘密、あれは続編までひっぱるんだと思ってました。
こんなにアッサリばらすとは。
クラウザーと判事の険悪なやりとりは、続編でも見られるんでしょうけど、クラウザーが強く出られない弱みを判事が握ってるという緊張感を早々に手放すのが意外でした。
まあ、だからこそクラウザーに、マイクルズという頼れる味方がついたし、ヒューもクラウザーと共振できたとも言えますが。
ハリエットは、クラウザーにとっては救いの女神であり、疫病神でもあるんでしょうね、事件が終わっても。
少なくともハリエットは、勢いで口走ったり行動したりすることをちょっとだけでも控えてくれるといいよね、クラウザーさん?(笑)

続編では、ハリエットのダンナさんが出てきたり、下卑た判事がまた粘着したり、あの愉快な人やあの頼れる人やあの優しい人も登場するのかな。だといいな。
それと、クラウザーさんの師匠の先生も。
クラウザーさんの過去につながる人が登場しても面白そうです。
はい、続編読みますよー。

(2013.8.23 読了)
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