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『妃は船を沈める』 有栖川有栖 著

2008/09/04(木) 08:27:13 有栖川有栖 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 思ったより早くに届きました。あまぞんさんありがとう!
 ハイ、【ジャーロ】掲載時に読んでますので、不躾にも有栖川先生ご本人に突撃した例の間違いがどうなったのか、とか、中編ふたつをくっつけてひとつの長編にするって、どういう加筆やら繋ぎ方をなさったのか、という視点で再読。
 うーむ。こうなったか。
 有栖川先生らしい、有栖川先生にしかできない<幕間>だと思います。
 【ジャーロ】紙上では未読で単行本を待ちわびていたからじっくりゆっくり味わって読もうというかたは、ココより先には全部読了なさってからお進みくださいませ。





作家編・火村シリーズは、登場人物が歳をとらない、サザエさん世界です。
で、この一連の物語のうちに、現実社会では“助教授”は“準教授”に呼び方が変わってしまいました。
よって第一部の『猿の左手』では火村先生は助教授のまま、第二部の『残酷な揺り籠』で準教授に。作中でも、ある登場人物に尋ねられて、火村先生自身がそう答えています。

ということは、この第一部と第二部の間には、厳然とした時間の流れがあって、火村先生やアリスさんを取り巻く状況も変わってるのに、やっぱり先生達は34歳のまま。福井であの時人魚を食べたとしか思えない(大笑)
いつもなら全く感じない違和感が、今回は結構引っかかりました。
火村先生やアリスさん始め、大阪府警のびっきー警部や鮫山警部補、森下君までが、『猿の左手事件』についてもやもやと蟠りを抱えて2年ほどを過ごした、という記述が明確にあったからでしょうか。

そのわだかまり、が、<幕間>に凝縮されているんですが、うーん、ソフィアならぬ小夜子姐さん、いい飲みっぷりですねえ!
この女主人、いい!年齢の所為かお商売柄か、お客さんをリラックスさせる腕と、外国名を付けて呼び合う稚気が同じレベルで同居してる。全くお酒を飲まない私でも、何かご飯を食べにいきたくなるお店です。実際にこういうお店を、有栖川先生はご存知なんでしょうか。

観覧車やら、アリスさんの女性観察やらはいつもの事ですが、火村先生と一緒にいるアリスさんと、1人で歩きながら1人でいる女性をじっくり観察するアリスさん。別人のようです(笑)。独身貴族でいるのに満足しているのか、それとも過去の辛い思い出がいつか甘美に書き変えられるのを待っているのか。
火村先生の深淵にもやきもきしますが、火村先生は自分の内に誰1人寄せ付けない部分を後生大事に持ってるのに対して、アリスさんは何かの弾みでどうにかなってしまいそうな。ワトソン君がホームズとの同居を解消して結婚したように。

ファンとしては、このままずっと火村先生とアリスさんの相棒ぶりを楽しみたいんですがねえ。

……ううむ。やっぱり私はダメかも、この新キャラクタの高柳真知子刑事。コマチさん。
美人の代名詞である“コマチ(小町)”を愛称にしてください、って自分から言う人、好きですか?現実にこんな人がいたら、かなり敬遠されるんじゃないかなあ。いくら、全然違う意味合いで言ったのだとしてもね(有栖川、が言いづらくてアリスになったのなら、高柳も言いづらかろうという)。
大体、その癖(だらしなくぶら下げているだけのネクタイをさらに緩める)から想像するのは勝手やけど、初対面の人にそんなごく個人的な、それもかなりデリケートなことを、無遠慮に訊くものでしょうか?ものすごく子どもっぽいと言うか空気が読めないと言うか……。
それに何より同じ女性として、「こんな人と友達になりたいなw」という魅力が全く感じられない!カサカサに乾いた女性に見える。森下君は可愛いのに…。

いくら有栖川先生ご自身が、男性キャラクタの書き分けに困って、じゃあ女性刑事にしてしまえ♪てなノリだったと暴露(笑)されても……。

有栖川先生の作品って、わりとこういう女性が多いよね。『スウェーデン館』はちょっと違うかな、でも『海奈良』のあの人もかなりエグいし、『朱色』の被害者の1人なんて「今日もお美しいですね」と言われて「ありがとう」って答える人やし。女性キャラで大丈夫なのって、篠宮のばあちゃんと小夜子姐さん、貴島朱美嬢と、『モロッコ水晶』の畝明海ちゃん、『英国庭園』の彼女くらい。そういや『白い兎』の女性2人は両方とも全く感情移入できなかったよ…。

話に戻りまして、まず何と言っても『猿の手』の解釈の違い!
実はこの怪奇小説は未読なんですが、アリスさんの口を通して語られるその内容を聞いて、まず誰もがゾンビの話だと思うよね。
なのにそれをクライムノベルとして読んだ火村先生(=有栖川先生ご本人)の、骨の髄までミステリなこと(笑)小説とは色んな読み方ができるものだという、素晴らしい一例だと思う。

そして第二部の事件の推理の方は、ほんっとーに危うい(笑)
「砂の上に築かれた楼閣なのに。ちゃんと建っているように見える。………」という述懐も分かります。(ただ、彼女がソレを言っちゃいかんが)
『猿の左手事件』の方がまだ、骨格がしっかりしてる。彼女が操ったこととはいえ、事件の真相と犯人の素性は読み応えのある綺麗なミステリ。
ただ、この“妃”が周囲の人を意識的にしろ無意識にしろ惑わす存在で、なおかつ妃自身、めっちゃ頭の回転が速いので、煙に巻かれたように事件の様相が蜃気楼のように見えるんです。車椅子のハンデなんて、あって無きが如しです(いや結局足引っ張られたけど)。
そんな人間が拳銃持っちゃいけません。
ほっといたらまわりの人間皆殺しです。

でも、容疑者に会う前に現場をざっと見渡した段階で、既にダンボールのガムテープに引っかかってた火村先生、すごいです。
こういうちょっとした違和感、その場にそぐわないものを見分ける才能が、名探偵の絶対条件ですから、それを見落としたら探偵失格になってしまったかもしれないのですが、そういう取りこぼしはないので安心して読めますね。

…そっか、同じ光文社刊やったから、タイトルを揃えたのでしょうか?
『白い兎が逃げる』
『妃は船を沈める』
……いえ、はしがきに、<幕間>に出てくるシーンが元になった、と先生は書いてらっしゃるのですが、どうにも私には、タイトルの最後の文字に韻を踏ませたような気がしてしょうがないです。勘繰りすぎですけれども。

事件に関する感想なんてほとんどなくてすいません。
アホな私に、トリックを見破ったりとかアリバイ崩しなんてできないので、ただ小説として楽しむだけなので。それでもミステリ読みかと言われると耳が痛い……。


(2008.07.20)
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