こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

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『奇譚を売る店』 芦辺 拓 著

2013/11/08(金) 01:05:07 芦辺 拓 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
奇譚を売る店奇譚を売る店
(2013/07/18)
芦辺 拓

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 がっちがちの本格ミステリプロパーである芦辺先生が、幻想怪奇な新刊を出されると知って読みたくて。
 はい、わくわくしつつ読みました。
 先に結論を書いてしまうなら、「やっぱり芦辺先生だった!」という怪奇な中にもミステリ魂のこもった一冊なのでした☆


---また買ってしまった。

六編とも、この一文で始まるんですが。

古本屋さんという存在について、書痴ならもう拍手するしかない、そんな感慨が言い訳のように述べられていて、ああ古本蒐集家というのは言い訳と自己正当化の間を行ったりきたりしてるんやねえ、とつくづく思いました。わたしそこまでじゃないし。

しかし。

これは、二番目の印象です。

まず、各話の前に、わたし--「私」---に話しかけられる、「はじめに」。
もちろん、最初はふーん、と思うだけだし、一話ずつ読み進めていくうちに、あの「はじめに」の趣向はこういうことだろう、と予想したりもするんですよね。
それともうひとつ。
文字が。字体が、ものすごく変わってる。正直にいえば、違和感。
Twitterで、この新作の紹介をされる芦辺先生のツイートを見てたので、ただ先生なりのこだわりで、作品の雰囲気を重視してこの字体を指定されたのかと思ってました。

いやー。思わず、「あっ!」って言いましたわたし(苦笑)
なんでそれに気がつかなかったんだーーーー!って。
これに似た感じの仕掛けは、『スチームオペラ』でもありましたよね。
「はじめに」のアレの意味は、こういうことでしたかー。

で、最終話のラスト、予想してた展開の半分は正解したけど、真相はもっと……なんていうか、ブラックホールに吸い込まれていくスパゲティ現象というやつ、あんな感じもしたし、昔テレビドラマの怪奇やオカルトモノで見たようなラストシーンでバッドエンドというより救いがなさすぎでどうしよう(涙)

でも、読後感がちっとも爽やかじゃないのに、なんでこんなに楽しいんだろう?

本が好き。
だからでしょうか。

とにかく、さっきも書いたけど、字体にしても、各話の扉に不気味に疾走する絵にしても、そしてもちろん全体的にも凝りまくり!こりっこりです(笑)
怪奇やオカルトっぽく、幻惑で眩暈がするような、そしてやっぱり、ミステリへの愛情と誇りをかけて。
一編一編そんなに長くないのに奥行きが果てしなくて、まるで鰻の寝床(の奥に異空間がつながってるか)のようなシンとした佇まいも感じました。

各話の、古本屋さんから買った本をとりあえず読むために入る喫茶店、たぶんぜんぶ同じお店ですよね。どんな道筋であろうとそこにたどり着いてしまうようで、古本屋さんと喫茶店は空間捻じ曲げて繋がってるとしか。

私。私。私。
いろんな私。
いろんな恐怖。

ひとりひとりの人生、同じものはひとつとして無いというのに、行き着く先は。

神様がわたしの人生をカチャ、カチャ、カチャ…、と一字一字人差し指一本で打ち出したストーリーをわたしは生きているのかもしれないのに神様に縋ったり恨んだり感謝したりするのは。
神様もまた、何かに突き動かされて飲み込まれるように一字一字を打ち出していなければいられない何かがあって、その神様の恐怖心に、ただの登場人物にすぎないわたしの声が届いて人差し指を惑わせることができるかもしれない、と思うからかな。

ちょっと妙な気分になりました(苦笑)

本が好きで書店めぐりが趣味で探偵小説に通じている読者はより楽しめるかもしれない、と思うのは、芦辺先生の作品と付き合いの長い人なら当然思うだろうし、
探偵小説や今の本格ミステリをあまり読まないけどこういう世にも奇妙なお話はなんとなく惹かれる、という人は、逆に探偵小説に興味を持ってもらえるかもしれませんよね。探偵小説についての薀蓄もりもり、あの雰囲気はそのままですからw

書痴であればあるほど、「本」に取り込まれ飲み込まれ食い尽くされる、そして自分のアイデンティティは本と一体化していく、虚無の穴に落ちていく。
本は、虚無なのかもしれない。
わたしは、虚無なのかもしれない。
残るのは、本か、魂か。

不思議な読み口でありますが、本好きには取りこぼせない一冊ではなかろうかと思います。


(2013.7.30読了)
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