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『巴之丞鹿の子 猿若町捕物帳』 近藤史恵 著

2008/09/04(木) 08:25:41 近藤史恵 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 7年前なんですよ、この作品の刊行。それも幻冬舎文庫書き下ろし。その所為か、新刊書店では全く見かけないわ、あまぞんの中古だと457円の文庫が何と1600円以上の値がついてるわで、図書館で運よく借りられたことにホッとしてます。一刻も早い復刊をのぞーむ!!このシリーズは是非ともコンプリートするべき! 
 ということで、読了されているかたの方が少ないだろうこの作品は、事細かに感想を書かずに、なるべく皆様の琴線に触れることができるように、ご紹介したいと思います。




裏表紙のあらすじをまるっと抜粋しますと。

<江戸の町で娘だけを狙った連続殺人が起きる。南町奉行所同心・玉島千蔭(ちかげ)は殺された娘が皆「巴之丞鹿の子」という人気役者の名がついた帯揚げをしていたことを不審に思う。巴之丞に会いに猿若町へ出かけた千蔭は、殺人に使われた鹿の子には偽物が存在すると聞かされる。犯人の狙いは一体何なのか?時代ミステリー小説シリーズ第1作> 

つまり探偵役はこの玉島千蔭さんという同心。ですが、シリーズを通しての目線は、千蔭さんの小者(従者というか側仕えの部下のような人)である八十吉さんのものなんです。三人称ではあるけれども、千蔭さんという人の描写や八十吉さんの内面も客観的ですね。

そして、このシリーズ1作目で早くもレギュラーメンバーの殆どが顔を揃えます。
巴之丞も、彼に瓜二つの梅が枝も、惣太や利吉もその性格をしっかり与えられていて、場面場面で活躍しています。

この連続殺人事件に人気役者の舞台上に使う帯揚げのレプリカを使い、さらにそれにも二重の裏があって、終盤、事件の真相が判明した頃にはかなり周到に計画されている様相に、少し背筋がぞくっとしました。
帯揚げだけじゃなく、犯人の動機や事件の真相そのものが二重底のようになっていて、そんな伏線あったかなー?とあちこちページを戻って確認。これは凄いですよ。全く気がつかなかったです私。
また、事件を追う千蔭さんの動きと、お袖という娘の動きが交代で差し挟まれていて、どこで交差するのかと思っていたら……。いいとこ、このお袖ちゃんが次の犠牲者になるんじゃないかなーくらいは誰でも気付くでしょうが、これが一つに結びついた時はびっくりしました。このお袖ちゃんのパートがなんで同時進行しているのかと不思議に思っていると、実はめっちゃ重要なんですよ。
まあミステリに重要でない伏線なんて無いんですけどね。

近藤先生の作品は特に、この犯人というか人間の悪意というものが綺麗に配置されていて、それでいて全体の文章に余剰や過剰が全くないほどシンプルで読みやすい。上品というよりも、淡々と進んでいくといった感じです。あまりにマニアックなパズル的だったりトリッキーだったりするミステリはちょっと…という人でも、近藤先生のものならするする読めると思います。
おまけに、時代ミステリーだろうと梨園の世界であろうと、スポーツものであろうと、読む側に専門知識は必要なく、むしろその知識をもらったようでお得感がいっぱい♪
時代劇に興味が出てきたり、ツール・ド・フランスを観てみようかと言う気になったりと、こちらの世界を広げてくれます。

このシリーズは、この第1作と第2作は現在入手困難で、図書館で探すか古本屋さんを根気よくまわるかしないと読めないと思います。
ですが、今秋、第2作の『ほおずき地獄』が復刊されることが決まり、この第1作『巴之丞鹿の子』もおそらく何らかの動きがあるのではないかと。(第3作目の『にわか大根』は新刊として幻冬舎文庫から発売中。シリーズの短編集です)
チャンスがありましたら是非一度読んで見てください。

追記:近藤先生のブログで確認したら、『ほおずき地獄』だけじゃなくこの『巴之丞鹿の子』も同じく今秋に復刊予定。最新文庫の『にわか大根』と同じ光文社から文庫として出ます。ひゃっほう!!秋になったら本屋へGO!

(2008.07.11)
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