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『図説メイドと執事の文化誌』 シャーン・エヴァンズ 著(原書房)

2013/09/26(木) 00:00:45 エッセイ・ノンフィクション THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
図説メイドと執事の文化誌図説メイドと執事の文化誌
(2012/09/24)
シャーン・エヴァンズ

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 ……何を思ったか、分厚いのに手にとっちゃった(笑)
 メイドカフェに行こうとも思わないし、執事さんに「お帰りなさいませ、お嬢様」なんて言われてもむず痒いのでお茶をよばれに行くことはないと思いますが。
 ミステリ好きにとって、イギリスの執事さんて結構なじみがありましてね。ついつい。




バンターさんて凄い人やったのねえ……。

というのがまず(笑)

執事といえば、ジーヴスさんが筆頭なのかもですが、わたしにとってはピーター・ウィムジイ卿の執事、アーヴィン・バンターさんなのですよ。

あと、漫画をよく読んでた頃の記憶で、もとなおこさんの『レディ・ヴィクトリアン』もちょうどこんな感じなので、ガヴァネスっちゅーのがどういう立ち位置なのかようやく納得できた気がします。

もともとそんなに詳しくないのでね、勉強になりましたw

家令と執事の違いとか、ナニーってそんなに偉かったのかとか。ナニーが出てくるミステリも読んだことがありましたしね。
紹介状ってそんなに重要なものだったのね。
あと、やっぱり使用人として向いてないというかタチの良くない庶民もいっぱいいたのね……。

家令・執事、シェフ・コック、ハウスキーパー、レディーズメイド、フットマンといった使用人の中でもエリートクラスの仕事と、キッチンメイドやランドリーメイドなどの下っ端さんたちの雲泥の差にびっくり。国全体が階級社会なのに、使用人たちの間の階級社会もがっちり。これはつらい。

現代人の感覚だとキツすぎて耐えられないというか、十九世紀くらいまでの貴族の生活ってとことん不合理でいやはや。

心優しいご領主、女主人様だったらまだ救われるけどそんなのごくごく少数で、何百万人もいた使用人のほとんどが人間扱いされてなかったし、老後を確実に保障してくれるものでもなかったらしいって、ねえ?

今でこそ、古き良きイギリスの伝統とかなんとか、上流貴族の大邸宅を見学してため息ついたり、ちょっとした非日常の憧れのようなものを抱いて執事さんだのメイドさんだのに萌えたりしますけど。
人間として見てもらえていなかった下っ端の使用人さんたちの苦労や愚痴や涙の上にそれがあるんですよね……。

ドロシー・L・セイヤーズはピーター卿を探偵に、バンターさんを機転の利きすぎる従僕として読みやすく描いてますけどあれは、実際に「フィクションのような存在」になってしまった代々裕福な大貴族とその執事という皮肉であり、時代の流れとわずかな愛惜の念が読者にも伝わるからかも。
そして、ハリエットの登場は、現実の女性の姿としてそのフィクションの中に描かれることのドリーム感。

執事やレディーズメイドやコックさん以外は人間と見なしていなかったと言ってもいい王族やご領主とそのレディたちにも、社交界なりの仕事があって下々のことに気を回していられなかったんでしょうが、もうちょっとその…労働環境の改善にもなんとかそのー(汗)

補修・復元された大邸宅の使用人さんたちの仕事場、粗末なベッド、電化されてないアイロンやオーブンなどの写真、執事さんを筆頭にした使用人さんたちの集合写真なんかもいっぱいあって、ああこの頃の人たちはこんな表情でこんな髪型と仕事着で一日のほとんどを休むことも無く働きづめでがんばってたんやなあ、としみじみ思います。
この人たちの写真、忘れたくないです。日本でいえば江戸時代のこと、そんなに昔のことじゃない。この人たちが居たからこそ、今わたしたちがイギリスの歴史と伝統を垣間見ることができるわけで。

使用人さんたちの過酷な労働と暮らしぶり、時代の変遷とともに廃れていく使用人さんたちの意味、読んでて正直つらい部分もありましたけど(現代人の端くれなので、文章を読むことはできてもなかなか実感できない)。
逆に、使用人さんたちのお小遣い稼ぎのことや、主人に対する復讐のこと、役得やスキャンダルの横流しのこと、それくらいのわずかな楽しみがないとねえ、と苦笑い。
少数ながら優しいご領主やレディのお屋敷で働いていた人たちが、日々の過酷さに対する気晴らしとして催されたという使用人さんたちのためのパーティのあたり、ホッとしました。
でもやっぱり、産業革命や第一次大戦で変わっていくイギリスの社会、経済的に使用人を置く余裕のなくなった主人に解雇された使用人さんたち、頂点に君臨した執事さんでさえ老後は惨めで孤独なひとが多かったという現実に、人間の運命なんてほんとどうなるか分からんもんだねえ……、と複雑なため息。

大英帝国の時代のことを勉強するには、良い一冊だと思います。

(2013.7.18 読了)
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