こんな本読みました。

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『大鴉の啼く冬』 アン・クリーヴス 著 (創元推理文庫)

2013/09/25(水) 23:53:58 アン・クリーヴス THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)大鴉の啼く冬 (創元推理文庫)
(2007/07)
アン クリーヴス

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 今頃読了。遅ればせすぎて面目なさすぎ。
 いやでもこれ、以前に一度、読もうとしてるんです。たぶん。今回改めて読み始めて、「あれ?もしかしてこれ前に読んでる?」と思って読書メモをずーっと遡って、このブログのアーカイブも見て、でもタイトルすら書いてない。けどこのシーンは記憶にある…?
 ということで、前回読もうとして途中で投げて、そのまま積んでたらしいです。いったいいつだよ。覚えてないよ。
 今回さいごまで読んだいまのわたしは、前回投げた自分を投げ飛ばしたいです。





イギリス本島よりも北東にあるシェトランド諸島って、こんなんなんですか……?
イギリスすら行ったことないのに、こんな寒くて陰鬱で静かな佇まいの絵画のような離島なんてイメージするのも難しい。

イギリスが舞台のミステリって、フーダニットにしてもハウダニットにしても、その土地土地の情景や性格付けされたものや何かが影響するとはいえ。
この作品はそれが見事にエレガントに嵌まってて〈シェトランド四重奏〉の第一弾ってこれはシリーズ世界がすばらしくゆるぎないだろうということを期待させてくれる上々の嚆矢ではないですか。

ポーの『大鴉』はリスペクト程度かな、と思ったら、すごいよねえ、あの世界がちゃんと取り込まれてるし。
色彩の少ない風景の、大鴉の存在感。大鴉は黒の象徴。これ以上目立つ色はないだろう、はっきりした色。

刑事さんが捜査に乗り込んでくるけど特権意識で島の住民を見下すことも排除することもなく、警部さんたちと住民が双方ともに考え抜いていてバランスがいいので、読んでいて不快感がないのです。

娘を亡くした親の姿、娘を亡くさずに済んだ親の気持ち、娘の気持ちと心を捉えそこなった親の後悔……、第一容疑者と見なされ続ける老人の心と涙、自信過剰な男達の弱さ……、除け者にされるつらさと悲しみ、誰かの特別になりたい気持ち……、登場するキャラクタは、刑事さんにいたるまですべてのひとに、隠しきれない弱さがありました。
でも、作品全体に漂う品のよさと隙のない風景、心を悪魔に売り渡したような下卑たひとが一人もいないので、読みやすいです。

知的障害のある老人、マグナスを誰もが怪しいというのに、マグナスにそんな犯罪ができるとは思えない、子供のような純真さと素直さ。それと集中力のなさ。
読者も、ペレス警部も、最初は心証的に、このマグナスではないだろう、と思うんですが。
フーダニットとしても一番の手がかりが明確になったとき、確信に変わりますよね。
ペレス警部と同じように。
もともと、作者はマグナスを残虐な真犯人として登場させてはいないだろうというのが分かってるので(もし仮に彼が命を奪う原因になったとしてもそれは故殺だろう、と)、このぽっかり浮かび上がった手がかりが容疑者をかなり絞り込んでくれます。
だからこそ、キャサリンを殺した真犯人の動機と心の歪みは、異質さが際立ちます。
裁判となったとき、精神鑑定が必要かそうでないかギリギリのラインだと思うし、精神鑑定を受けてもたぶん殺害当時は100%正気を保ったままだったろうと思います。それくらい、普通のひとでした。どこにでもいる普通のひとが、いびつな心を抱えていることも、また普通にあること。

狭い島のなか、昔からの住民は全員が知り合いで、よそ者はすぐに判別できるうえにいつまでもよそ者のままで、気心の知れた相手だろうがよそ者だろうが、秘密らしい秘密をもてない環境にありながら、だれも真犯人の気持ちや行動に隠された本当の心に気づかなかったという、皮肉な「無関心」。

濃密でサスペンスフルなドロドロの人間関係を描写したミステリは大の苦手なんですが、この作品は、そういう濃密でサスペンスフルでいがみ合いや嘲笑が渦巻いているにもかかわらず、優しい気持ちのやりとりが印象深いせいか澄んでいるような気がします。
ミステリのためのキャラクタでありながら、ミステリの駒になっていない、相手を思いやる心や好きなひとに気に入られたい気持ちまでがあけすけな、美しくて退屈な島の風景によくマッチした静謐な世界。
つまり好きだーこのシリーズ。
急いで、シリーズ第二弾を読みますとも!

(2013.7.16 読了)
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