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『21 twenty one』 小路幸也 著

2008/09/04(木) 08:23:30 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 3年前の『papyrus』で不定期連載されていた作品がやっと1冊にまとまりました。
 小路さんにとっては初の連載で、『東京バンドワゴン』が出る直前ですね。
 <21世紀に21歳になる21人の同級生>たちの、それぞれの物語。
 未読のかたは、ここで回れ右してくださいませ。




ミステリという訳じゃないんですが、前作の『モーニング Mourning』のように、「何故?どうして?」に貫かれた物語。
ただ前作は亡くなった人は事故だったり自殺宣言は××だったりでまだ陽性なのですが、この『21』は本当に自殺してしまった人を巡るお話です。その所為か、全体的にどうしようもない哀しみが満ちていて、もしも実際に自死を選んでしまった人が身近にいるかたには辛いかもしれません。
ていうか、小路さんご自身の身近などなたかが、こんな風に誰にも何も言わず本当にある日突然逝ってしまった、という経験をお持ちなんじゃないかと思ってしまいます。

小路さんがサイトのDiaryの中で触れられていますが、確かにこの『21』は、『HEARTBEAT』に繋がる部分もあるしもちろんシチュエーションとしては『モーニング』の裏表のようだし。でも『Q.O.L』や『東京公園』のテイストも感じるので、つまるところ小路幸也という作家さんの要素が詰まった作品なのだと思います。

まず最初に、21人の名簿及び近況及びお知らせ及びその他、というページがあるのです。2005年6月現在。

初っ端から白状しますと、私、あれ?と思ったんですよね。
少子化の影響で一学年のクラスが一つしかなくて、同級生が21人しかいないというのはおかしくはないですが、なんで?なんで1人だけ?と……。
21人の生年月日。
おかしい…いくら21人しかいなくても、これはありえへん……と。私もそうなんやもん。普通もう1人くらい居るよ絶対。
そしたらそれが、自殺してしまった半沢晶くんの根本的な哀しみであり恐怖だったというのが最後に分かった時は、笑うとか膝を打つとかやっぱりーと言うよりも、
私マジで小路さんとは波長が合ってるに違いない!
と勝手に確信いたしました(笑)

そして、教師の何気ない一言、全く悪意はなくむしろクラスの生徒全員の結束を強めるのに決定的だろう一言というのは、なんと恐ろしいものなのだろうかと。
イジメに加担するサイテーな教師も最悪ですが、悪気がなかったからって許されるとは限らない。晶くんの孤独は歳を重ねるごとに大きくなっていって、もう生きていることすら恐怖でしかないのなら、誰も救ってあげることはできなかっただろうし。

その晶くんの死の知らせを、25歳になったクラスメイトがそれぞれのキャラクタに因って受け止め、記憶に因って晶くんを甦らせるんですが、共通しているのはやはり、みんなに慕われていた先生の「21世紀に21歳になる21人」というフレーズに惑わされてしまっていること。
みんなそれぞれに晶くんの孤独な心に近付くことは出来たとしても、その恐怖に気付くことは出来なかったし、晶くんのパーソナリティはまずその外見であったという見解の一致のようなものを感じてしまって、………晶くんと同じ立場の私には、その絶望がすごくよく分かる。
もし中学生当時に誰か1人でも、というか先生がそのフレーズを言った時にすぐにそのことに気付いてくれていたら、そしたら先生のフォローはもっと適切だっただろうしクラスメイトにも萎縮しなくてすんだかもしれないと思うと、晶くんが哀れでなりません。

<twenty one>のサイト管理人として緊密に連絡を取りながら、25歳のその日までずっと怯えていただろう晶くんは、多分、リーダーの宮永くんよりもよく全体を見渡していただろうと思えます。
宮永くんと糸井くんコンビと絵里香・遥とのカップル、岩村くん祐子夫婦とミーナとの関係、松元夫妻の健やかさ、それぞれの過去と現在を、羨みながらでも決して仲間にはなれないと諦観していたような。

もしかしたら、25歳の今からでもせめて糸井くんに打ち明けられていれば、この孤独感は薄らいだかもしれない。それくらいには晶くんは一人一人をよく見ていたし、記念の水晶を遥ちゃんに託したのは、遥ちゃんを通じて糸井くんにアプローチしていたのかもしれない。

でも他の20人には、先生の言葉に誇りを持ってて今までその言葉を支えに生きてきたみんなには、それが当たり前で別に晶くんがそこまで気にすることすら思いつかなくて……。

おそらく、死の知らせを聞いてそれぞれが思い至ったそれぞれの出来事全てが、晶くんの死の真相の一端だろうと思います。
だから、多分晶くんは、そうして個々人に関わることで、記憶にとどめておいて欲しかったんですよね。クラス全体としては望めなくても。
贅沢やなあ晶くん。こんなに素敵なクラスメイトがいるのに。自分でも、みんなそんなこと気にしてないって分かってたはずやのに。
あの遺書は、先生がいつかみんなに見せるだろうことまで予見して書いたものだと思うから、それでみんなが涙してくれることまでわかってたはずやから、やっぱりあんたは贅沢もんだよ。

宮永くんと糸井くんは、兄弟とか親子とかいうよりも、『銀英伝』のラインハルトとキルヒアイスのような2人で1人、光と影の不可分、魂の双子、そんな関係だと思いました。多分、だからなかなか結婚にまで至らなかったんだと、宮永・絵里香ペアと糸井・遥ペアに複雑な理由があったとしても。恋愛関係でなくても強い友情以上で、分かちがたく完結した関係。

おそらく晶くんが心の底で求めていたのはこういう結びつき。それが男子でも女子でも良かった。サイトの管理人も、リュウジほどの才能に恵まれていなくてそれでも足掻き続けた音楽にしても、誰かと深く結び付くことが出来ればこれ程不安定にはならなかった。揺るぎ無い安定した関係、それだけのことだった。

今の時代、こんなに揺るがない人間関係を構築するのは難しいでしょう。
それでも自分の目の前に、求める理想に近い形があったら。
それを欲しいと望むのは、むしろ当然ですよね。
でも本当にそれを手に入れるには、一度自分の秘密を全て明らかにしないといけないとしたら。その勇気はどこから引っ張ってくればいい?


最終的に結婚した糸井くんと遥ちゃん。
もしも子どもが生まれたなら、それが男の子でも女の子でも、<晶>って名付けると思う。自死を選んだ晶くんのその孤独と絶望の意味を全部知ってしまったこの2人には、むしろそれが自然な気がします。

久しぶりに、仲の良かった高校時代のクラスメイトに会いたくなりました。
同窓会するって宣言してたけど、ほんまにあるのかなあ。あったらいいな。
みんな元気かな。

(2008.06.29)
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