こんな本読みました。

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『竜宮ホテル』 村山早紀 著

2013/06/09(日) 18:11:12 村山早紀 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
竜宮ホテル (徳間文庫)竜宮ホテル (徳間文庫)
(2013/05/02)
村山 早紀

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 二年前、三笠書房の新レーベル立ち上げの時に、創刊の一冊として刊行された『竜宮ホテル 迷い猫』が、新たに徳間文庫から新装版として出ました。二年前もそれはそれは評判の良かった作品でしたが、レーベルが消滅してしまっては増刷も続編も出ませんからね…徳間書店の編集者さんに、この作品のことを分かってくれる人がいて、本当によかったです。
 新装版、なので、ストーリー全体は変わらないまでも、相当に加筆されていたりするようだったので、おまけに書き下ろし短編までついているので、二年前のを買って読んだ人は新装版も買った方がいいですマジ。



以前書いた感想を読み返してみるとまあ、なんとボコボコで雑な感想文だこと……しくしく(涙)

勘違いしてることもあったしさ……あうー。

で、あれ、こんな描写あったかな?と思って三笠版のを取り出して読んでみたら、序盤からもうかなり違ってました。加筆された部分、削られた部分。
なので三笠版のは忘れることにして、初読の気持ちで読みましたよわたし。

やっぱりひなぎくちゃんはラブリーでたまらん!
こんな姪っこほしい!

この新装版は、たぶん感じ方がふたつあると思うんですが……。
前の方が賑やかなトーンだと感じる人、この新装版はかなり内省的だなあと感じる人と、
今回の方が明るくて、するっと読めるという人と。

響呼さんのモノローグがかなり深く掘り下げられているなあと思いました。それだけ響呼さんの閉じ具合がパワーアップしてるし(苦笑)
ところがその響呼さんが、寅彦くんのお父さんとご挨拶することになったあたりから、ぶわっと開きましたね。そのコントラストの鮮やかさが印象的。

そして、同じことが立場を変えて、今度は日比木くんと響呼さんに。響呼さんの熱烈なファンで時空まで超えてる日比木くんの姿は、響呼さんにとって過去の自分。竜宮ホテルはやっぱり、過去現在未来を繋ぐランドマークであり、記憶の箱。

風早の街は、人の営みを大切に思う街です。電気やガスや水道のありがたみを、それを当たり前にあるものと思わずに感謝し続ける街です。
それと同じくらいに、山や海や太陽や土や風をはぐくみ樹木や花々を愛する街です。
だから、風早の夜景はすごく綺麗。
朝焼けも雨の後の水たまりも美しい。
見るものといわず街のすべてが、キラキラしてる。
戦争で焼けた街を復興させた人々の思いは、語り継がれていく。それが誇りでもある。

旅立つ魂、飛び立つ命を見守り、祝福する街は、旅人にとっては終の棲家にしたいくらいなんじゃないかなあ。
お盆のとき、この街に帰ってくるんだと思えるのは、幸せでしょうね。

今回わたしは、本のページをめくるたびに、すっとやわらかい風が吹くのを感じながら読みました。
神様の風じゃなくて、人間の手が、刷毛でさっと一撫でした感じ、その時に残る光の粒。
繊細で壊れやすくて、光の粒の一粒一粒にちゃんと命と意味がある。
ああ、チベット密教の砂絵曼荼羅を一心に描くお坊さんのような、そんな視線かもしれない。

響呼さんとお父さんのシーンは、やっぱりじーんとしたけど、今回は泣かなかったよ!お父さんの笑顔がものすごく良かった!響呼さんが見たかったのは、お父さんのこの笑顔でしょうから。
みんなね、大切な人であっても見知らぬ誰かであっても、とにかく笑顔が見たいんだからね。
そのために、仕事をしてお金を稼ぎ、ご飯をつくり、一緒に眠るんだから。製造業もサービス業も第一次産業もお医者さんも先生も作家さんも。

笑顔のために。

書き下ろしのひなぎくちゃんのお話の方がやばかった…また涙腺が……!
しろ子ちゃんの青い目が風に乗ってさばんなのらいおんを見る、そのシーンが目に浮かぶようです。
不思議であたたかい竜宮ホテルの住人であっても、別れは来る。
ひなぎくちゃんとしろ子ちゃんの友情と別れは、竜宮ホテルという魂に刻み付けられた、素敵なものでした。

竜宮ホテルといえば、創業者さんから寅彦さんまでみんな名前に十二支が入ってるので、十二支に入れなかった猫は、ひなぎくちゃんやしろ子ちゃんが逗留することでホテルを、世界を揺るぎなく完璧にしてくれる存在なんでしょうきっと。

猫といえば。
二年前、三笠書房f-Clan文庫してデビューした『竜宮ホテル 迷い猫』を、わたしは有栖川先生のサイン会の日に梅田の書店で友達の分と合わせて三冊買って。
そのサイン会の会場で、あれよあれよといううちに有栖川先生と奥様の両手には、まだ離乳もしてなかったイクちゃんが抱っこされて、めでたく貰われていったのでした。
今は弟分のたまくんと一緒に、幸せな作家猫さんになっています。
そんな思い出のある、『竜宮ホテル』、引き継がれることになって本当にうれしい。

すみません脱線しましたね。


村山先生の作品は、みんな、誰かと話をすること、風や山や木々や建物とだって話すこと、対話することをとても大事にしているなと思います。
たとえそれが物別れに終わることになったとしても、心を砕いて話し合った事実を糧にして、前を向こうとがんばる人たち。
憧れて遠くから見てるだけのシャイな人は、いつかその憧れの人と話せるように自分を高めようと。
今、大切な誰かと気安く話せる間柄であっても、慢心しないで自分を磨き続けようと。
風早の街の物語は、読者の心をピカピカに磨いてくれる、そして今の自分をありのまま見つめ、明日からはもっと笑顔をいっぱい見ようと自分を叱咤激励してくれる、そんな街のお話です。

いつか、響呼さんのお母さんが目覚めて、大人になっても心は傷つきやすいままの響呼さんと、可愛いひなぎくちゃん(+くだぎつね2匹)を抱きしめてくれるといいな☆

続編、楽しみに待ってます!
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