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『風の竪琴弾き イルスの竪琴3』パトリシア・A・マキリップ著 

2013/04/17(水) 00:48:31 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
風の竪琴弾き (イルスの竪琴3) (創元推理文庫)風の竪琴弾き (イルスの竪琴3) (創元推理文庫)
(2011/08/30)
パトリシア・A・マキリップ

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 ふう。やっと読み終わりました、〈イルスの竪琴〉シリーズ三部作。はー…ちかれた(苦笑)元々がファンタジー読みじゃないからなあ。
 いやそれにしても、どうやったらこんな世界を思いついて、かつそれを描写できるんでしょうか。イマジネーションと文章力をふたつ、ぽーんと一人の女性に与えるなんて神様は不公平ですよ……。




はあぁぁぁぁ(ため息or深呼吸)。
マジで疲れた。
悪い意味じゃないですよ、ぐいぐい読ませられて現実に戻ったときの脱力感がすごいの。

ただ、この完結編は、確かに重い。
一巻目のモルゴンのパートと、二巻目のレーデルルのパートがわりと軽やかで楽しい場面もあり、和やかで牧歌的であっただけに、この三巻目の最初から最後までつづく緊張感は挫折してもおかしくなかったなあ、と読み終えてから思いました。
わたしのこんな感想でも興味を持たれて、これからこの物語を読んでみようかと思われたかたには、ぜひ、一巻目と二巻目の信頼や友情や愛情溢れる物語をしっかりと心に繋ぎとめておいて、それを思い出しながらこの完結編を読むといいですよ。

と言っても、この第三巻目が裏切りや不信に満ちているかというとそうじゃないです。むしろ、裏切りや殺意は一巻目と二巻目の方が濃い。この完結編は、それらを超越しようとする心のおおきさや深さや奥行きが果てしなくなるので、おまけにモルゴンやレーデルルはその旅路の半分以上が人間じゃないので(笑)、人間の小ささが逆に愛おしく懐かしくなるほどでした。

〈偉大なる者〉とは誰で、どこにいるのか。
モルゴンの命を執拗に狙う変身術者とは何者なのか。
魔法使いたちは敵か味方か。
そして、モルゴンは、どうなるのか。レーデルルと結婚できるのか。

モルゴンたちはえらい高尚な謎をずっと追いかけてますが、読者はぶっちゃけモルゴンとレーデルルの運命と行く末が知りたい。

竪琴弾き〈デス〉と年老いた魔法使い〈イルス〉。
モルゴンに深く結びついた存在。
〈大地のあるじたち〉と〈大地のあるじたちの子ども〉の違いや、〈偉大なる者〉と〈大地のあるじたち〉の関係性が最初はややこしくて、何回も巻末の「人名・地名リスト」にお世話になりましたさ……頭悪くてすみません。
〈偉大なる者〉とモルゴンの関係って、……これで、〈ヘドの領国支配者〉にだけ世継ぎの影が薄かったように感じたわけがわかった。いや、エリアードが世継ぎなんですが、モルゴンがどんどん能力を付けてとうとうヘドの領国支配者たる本能まで奪い返したとき、何故ヘドだけがそんなに簡単に毟り取られたり奪い返したりしてるんだろう、と思ったのですよ。なるほどねえ。そりゃ、モルゴンはヘドを超越するわけだ。

偉大なる者もいずれ死ぬ運命にある存在、であるからには、彼は「神」ではないわけで。
というか、この世界に「神」という言葉は一回も出てこない。
王国と、それぞれの領国を支配する為政者に生まれつき備わった本能としての魔力、魔法使いたちの存在、死者の魂までもが何百年も呪詛を吐く世界で、「神」とか「創造主」といった存在に丸投げしないで運命を切り開く胆力と運命に身を委ねる柔軟さによって世界を畏怖する人々。
信じるものは〈偉大なる者〉の存在ですが、その存在を否定したり死を受け入れたりする考え方は、宗教的なものではないですよね、カリスマじゃなく。
それよりももっと大切な信頼は、領国支配者同士の魂と魂の結びつきであり、自分の領土との繋がりであり。
それは、それぞれの国の世継ぎも概念でしかわからないもの。

信じるって、本能のひとつなんじゃないかな、と。

デスをどうしても殺せなかったモルゴンのジレンマはやっぱり愛情で、額の三ツ星と竪琴と剣によって課せられた宿命が重ければ重いほど、彼は信頼を得ていくようで皮肉なものです。そしてそれが人間らしい。憎しみの影に確かに残る愛情に引きずられ、若い人は苦労して苦労してシワを深くしてやっと一人前と認められる「苦労と努力第一主義」がファンタジーでも投影される、作者も読者も人間であることの理解の限界としての皮肉も感じましたよ。
ああいえ、モルゴンは、元々から領国支配者同士の結びつきにより信頼はされていましたが、失踪といっときは死亡説まで噂された二年の間に無垢で無知で朴訥な青年の面影がなくなってあまりの試練に面変わりしてしまったくらい表情や体つきが老成していたので、そんな有様を目の前にしたら助けたいって思うでしょうね。

人間の感情にも命にも一切の興味がない〈大地のあるじたち〉のやり方は理解を超えてますが、そんな敵キャラのなかでオーム博士が、思いあがった人間のいやらしさを一人で具現化してるようで、なんちゅーかこのひと逆に凄いんじゃ…。

傷つき死んでいった王や世継ぎもいますが、彼らも決して〈偉大なる者〉やモルゴンを怨んではいないだろうし、なんとか夜明けを迎えることができた王たちの涙と笑顔はモルゴンだけじゃなく読者のわたしまで救われる思いです。

ファンタジーで魔法ばんばん変身やテレポーテーションまで何でもこいですが、それでもモルゴンやレーデルルや竪琴弾きは疲れ果てています。
彼らのたったひとつ残された希望は、愛情。愛着。
世界の普遍ですね。

ああ、ひとつアホなことを書くとしたら。
モルゴンとレーデルルは、結婚前に一緒に旅をしてよかったです。
ペヴンの王冠を手に入れたってだけで、その時点で結婚してたらきっと離婚か別居してたんじゃないのこの二人(笑)
極限状態の中で、道々大ゲンカしたり口もきかなかったりしながらも、お互いを思いやるだけの愛情を深められてよかったねえ。

この世界を旅するのに、鳥にも狼にも虫にも魚にも草にもなれませんが、作者が「風」をわたし達読者の乗り物にしてくれました。
その風に乗って、わたしは狼の王ハールさんのところと、アストリン様に会いに行きたいですw


(創元推理文庫)
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