こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『蜂蜜秘密』 小路幸也 著 
小路幸也 > 『蜂蜜秘密』 小路幸也 著 

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『蜂蜜秘密』 小路幸也 著 

2013/02/27(水) 18:39:32 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
蜂蜜秘密蜂蜜秘密
(2013/02/14)
小路 幸也

商品詳細を見る


 可愛い可愛い超絶可愛い装丁の新作!
 連載の第一回目だけ読んでたんですが、こんなお話だったのね。
 児童書のような装丁なのに、実はかなりかっちりしたミステリーです(笑)
 (結構ネタばれってますので、未読のかたは自己責任でお願いします。肝心な部分はぼかしたつもりですが)



タイトルがね、まず独特じゃないですか、「はちみつひみつ」って。
小路さんの今までの作品はどちらかというと長ーいタイトルが多いですよね、または英単語とか。
こんなふうに、漢字四文字の、韻を踏んだダンスのようなタイトル、珍しいなあとずっと思ってたんですが。
(「はちみつひみつ」という音もですが、漢字の連なりも、虫→必でくるんくるんとステップしてるダンスみたいに見えませんか?)

読んでわかった。
確かにこれは「はちみつひみつ」としか付けようがないw
蜂蜜の、秘密。秘密の蜂蜜。
不思議な蜂蜜を巡る、不思議な少年の物語。

蜂蜜が健康にいいことはわたし達も普通に知ってますけど。
魔法の蜂蜜がある、と聞かされたら、さあどうするかなあ。
特に、大切な家族が病気になったり、たった一人の家族が老いていく恐怖を日々感じているとしたら。
それを阻止できるかもしれない蜂蜜が、どのルートであるにせよ入手できるとしたら。
欲しくなるんじゃないかな。いくらお金がかかっても。

そんな不思議な、貴重な蜂蜜をつくり、守る村。
門外不出ならぬ村外不出の秘密。掟。

レオは何をするためにポロウの村にやってきたのか。
蜂蜜の秘密とは、村の秘密とは何か。
サリーとジャック、そしてレオの前に立ちはだかる人物とは誰なのか。
何より、レオ、彼は何者なのか。
バッドエンドじゃなくてホッとしました(苦笑)

すべてが蜂蜜を守るために考えられた、近代文明を極力排除して質素に暮らす村の人たち。大人も子どもも。
村の外に出てもぜんぜん構わないし、一旦出た人が帰ってきてもいい。
村で暮らせばまた元気になる。都会でいっとき遊ぶくらいには魅力的な。

でも。
レオの秘密が明かされていくシーンの、レオから二人への問いかけに対して、最初なかなか考えられなくて気が散ってしまう二人の様子に、小さな世界でこぢんまりと暮らしてそれで満足しているというのは保守的を超えて思考停止状態なのかもしれないなあと思ったり。ちらりとね。
で、外の世界を存分に知っている人は、村に対する愛着や執着はほんの少し薄いかわりに良いことも悪いこともとにかく考えるクセがつくんだ。そう思う。

だからって、サリーやジャックが閉鎖的というのではなくて、むしろ純粋すぎて素直すぎて、心が柔らかい年齢のうちにレオに出会えたことが最大の恩恵だったんだろうなあと。
二人が守った村はその後も平穏無事に平和に過ごせていたから。

わたしがこの物語を読んでいてずーっと感じていたのは、繭。
表面はふわふわで白くて綺麗で、猫だったらいつまでもコロコロと転がして遊びたい。
けれども、レオという存在がまるで遺伝子組み換えの注射針のように繭の内部にすーっと入ってきて、内部は表面のふわふわがそれとは気づかないうちにみしみしとキシキシと作り変えられていく。その途上の、ぎゅーっとした、黒々としたもの、その変化を経て、繭の内部はサナギになっていって、「ポロウの蜂蜜」という蝶が飛び立っていく。そんなイメージ。

小路さんの作品に、わかりやすい「悪人」や「悪意」がどーんと前面にでてくることは滅多にないんですけど、今回のはまた変わった「悪意」というか「忌避」でしたねえ。
それも「秘密の蜂蜜」に関係してるんですけど、なんていうか、レオが対峙した人の「悪意の薄い邪気」って、そこらへんの悪意よりも怖いかも。
そして、やっぱり子ども達は純粋で勇敢で、大人達はいい人ばかりで、これも村の設定が上手いからですね。
〈水祭り〉のくだり、レオが本当に心底楽しそうなこと、靴のリレーに大笑いしたシーン、すごく印象的でした。
それと、トク先生の食事のシーン、両手合わせるアレ、あれってきっと「いただきます」ですよね!

このポロウの村のスピンオフというか別ルートの短編書き下ろしが『キサトア』の文庫版に収録されたのが大いに納得。
〈エキスパート〉の存在にも触れられてるから世界はリンクしていますが、それだけじゃなくて。
『キサトア』とこの『蜂蜜秘密』は、きょうだい作品なんですね。
このふたつの世界の主役は、ティーンエイジャー。そして少し特殊な能力を持つ、でも普通の子ども達。
大人の事情に負けることなく、自分と友達を強く信じ、自分の手で未来を切り拓く。
キサトアの舞台だった風の町が町全体で、今回のポロウの村が村全体で、大きな家族のように。
素敵な素敵な、優しい物語。

『キサトア』と、『蜂蜜秘密』。
どちらも、長く長く読み継がれて欲しい、大きくて優しい小説です。


(2013.2 文藝春秋)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。