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『体育館の殺人』 青崎有吾 著 

2013/02/15(金) 20:15:49 青崎有吾 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
体育館の殺人体育館の殺人
(2012/10/11)
青崎 有吾

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 本ミスの上位にランクインしたこの作品、遅ればせながら読了。
 ああなるほどねえ、確かに本格好きが泣いて喜ぶガッチガチのロジカルなミステリだw面白かったです。うん。
 これを現役の大学生が書いたってんだからもう、世の中凄い才能持ってる若い人はたくさんいるんでしょうねえ……。
 (ちなみに、この作品を読了後、2013本ミスベストのレビューを通読しました。読み方間違ってなくてホッ。)



いやー、すごい新人さんだなあと思いました。

選評にあるように、ロジックが堅牢かというと?となりますけど。
確かに、有栖川先生の作品のような印象がありました。ロジカルなド本格といえば有栖川先生か法月先生でしょう。
で、鮎川賞を受賞。
いいんじゃないですか~w
これからどんどんこの作風を磨いていってほしい。
有栖川先生や法月先生がエラリー・クイーンの衣鉢を受け継ぐミステリを書かれているように、青崎さんは有栖川先生や法月先生の作品のような強靭さを目指せばいいと思います。次代のロジカルミステリの書き手さんとして。

さっきも書きましたけど、この作品が鮎川賞受賞。
ロジックは新人離れして謎解きは丁寧で、見事なパズラー。ブラボーです。

そしてそれだけじゃなくて、おそらく、探偵役の彼のキャラ設定とロジカルな謎解きのギャップがまずウケたんではないかと思う。
ヲタクで変人っぽいのに、天才の部類に入る頭の回転の良さと人を食ったような態度が名探偵というテンプレートに嵌まってた。

あと、柚乃ちゃんたち、脇を固める高校生たちの生き生きとした描写も、現役の学生さんだからほんの少し前のことを思い出せばいいだけで、きっと書きやすかったと思います。
その分、社会人チーム(刑事さんたち)がちょっと薄っぺらいかな。特に仙堂さんや白戸さんは刑事ドラマのデフォルトか今までの数々のミステリを読んできて出来上がった感じの。まあこれはしょうがない、社会人になって道理を引っ込めてでも無理を通そうとするようなおっさんやおばさんがうじゃうじゃいる社会の中に飛び込んだらきっと、もっと深みのある人物描写になるはず。

傘一本で、容疑者にされかけた生徒の嫌疑を晴らすだけじゃなく、真犯人の特定に至るまでを、傘の骨まで使い切るその思い切りのよさは拍手。
そして、傘といえば雨、この雨の効果的な伏線も。うん。
長編で、死体がひとつだけってのは厳しい、というのは、有栖川先生の某長編作品のレビューによく見られた話で。
実際、殺人事件がひとつだけ、それで長編を書くというのは、難しいだろうと思う。途中で飽きてくるというか刺激がなくなるというか。
それを最後まで退屈させずに読ませただけでも、リーダビリティは素晴らしいです。ラストに一ひねりしてあるのもイイ。

傘のロジックと同様、あるいはそれ以上にわたしは、体育館の放送室でのアレの謎解きが好きかも。
何が伏線なのかはめっちゃ分かりやすいんですけどね、密室の謎や犯人の動機に繋がってるからか、食い入るように読んでた。

たぶん、著者の青崎さんは、本当に読みたいものを書いたんじゃないかなあと。
だって、こんなロジカルな謎解きの本格ミステリが大好物のわたしは本当に楽しく読んだもん。
青いのも粗が目立つのも、ロジックに偏重したために他に気を逸らせなかったからこそ、だと思います。

これを読んでて、先日感想書いた『0番目の事件簿』のアレ、ド素人ながらあながち間違ってもなかったのかな、とニンマリ。
「いま、ミステリ作家を目指してる人は、習作とはいえここに収録されてるものよりももっと洗練されたものを書いてると思う」ってやつ。
この青崎さんがまさにそんな感じじゃないですか?選評で指摘された部分を改稿しているというのを割り引いても、凄いことだと思う。
嬉しいなあ、こういうパズラーを書ける若い人、若いも若いまだ大学生だ、そんな人がデビューしてきてくれた!
本格ミステリの未来は明るいよ!

梓崎さんが、まるで純文学のような美しい情景と、ひたひたと静かに暗闇のひそやかな物語を紡ぐ本格ミステリ作家さんであるとしたら、
青崎さんは、ミステリアニメかドラマのようなビジュアルと軽やかなステップと機関銃のようなおしゃべりで聴かせる本格ミステリ作家さんみたい。
どちらがいいというのではなく、
どちらも先がめっちゃくちゃ楽しみ。
青崎さんには、この軽やかさを持ち続けてほしいなあ。
軽薄という意味じゃなく、脳みそをぎゅうぎゅうに絞りながらも娯楽として楽しく読めるミステリを書き続けて欲しい。

東京創元社さんは素晴らしい新人さんを幾人もお世話することができて、ウホウホなんじゃないでしょうかねw


(2012.10 東京創元社)
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