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『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』 佐々涼子 著

2013/02/01(金) 19:10:55 エッセイ・ノンフィクション THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
エンジェルフライト 国際霊柩送還士エンジェルフライト 国際霊柩送還士
(2012/11/26)
佐々 涼子

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 うーむ、集英社って、こういうノンフィクは特に良書出すなあ…。ていうか、開高健ノンフィクション賞ってすごいレベル高い。今まで読んだ三作品に外れなし!
 海外での遺体搬送や埋葬にはエンバーミングがワンセットかと思うほど当たり前になってますけど、日本では荼毘に付すという習慣からかエンバーミングの概念てまだぼんやりしてますよね。で、この本で書かれている会社で行われているのはエンバーミングとも違う。
 新年早々、「死」という重いテーマの一冊ですが、だからこそ読んでおけば、今年一年もこれからも、ムダにできる時間は一秒もないということに気がつくことができますよね。


海外で亡くなった日本人を迎え入れ、日本で亡くなった外国人を故国に還す、そのお手伝いと手続きを一手に引き受ける、日本で唯一の会社、エアハース・インターナショナル。
テレビのニュースで見る、海外で日本人が巻き込まれた事件事故について、そのご遺体を日本に還すために奔走しているのはほぼこの会社の社長と社員さんたちだそうです。

日本や海外での遺体ビジネスの不透明さ、直視できないほどのご遺体の修復、葬送ビジネスがマニュアル化していることの危惧と反対にエアハースの人たちの心尽くし…。とてもじゃないけど、わたしにできるとも耐えられるとも思えない世界。

大震災での数え切れないご遺体を前に、何を思ったのか…。

あまりにも静謐で冷たくて優しくてあたたかくて、泣きながらじんわりしてくる。

共同経営者であるふたりの好対照な仕事のしかた、事業継承者としてすべてを受け入れていく長男さん。
あまりに透徹していて峻厳で近寄りがたいなと思ったりしたんですが、もしもわたしが海外で事故に遭うか何かで死んでしまったときには、このエアハースの人たちにお世話になりたい。
運転手さんの人となりや姿勢が、一番わたしのような一般人に近いと思います。ホッとしたんですよね、この運転手さんの章。

遺体を修復し、静かに家まで送り届け、遺族に感謝されてもいずれ忘れ去られていく、エアハースの人たち。
誰かに認められたい、必要とされたいと願う承認欲求とは正反対の、誰かがやらなければいけないことを持てるものすべてを使って、ときには自分の身を削ってでもご遺体のためにご遺族のためにと奔走する。
そんな高潔さを、昔は誰もが持っていたのか、それともやっぱり特殊な仕事だからなのか、読み終えてしばらく経ってる今もなんとも言えませんが、エアハース・インターナショナルという会社が存在することで救われている人たちは日本にも世界にもいっぱいいること。承認欲求なんてちゃちなもの、近づくことも出来ません。

国際霊柩送還士という特殊な仕事を描いた本ですが、ビジネス書というのか、すべての働く人が読むのにもふさわしい本だと思います。
利恵社長のようにはできなくても、この人の姿と言葉は背筋がピシィッと伸びる気がしますよ。

「悔しい思いをしなければ仕事はできるようにならない、と彼女は断言するのである」(131ページ)

他にも心に残るシーンや言葉、グラビアの(たぶん長男さん)流れる汗の重さ、ご遺族の涙と感謝、遺体ビジネスの悪辣さ、いろいろあったんですが、わたしが一番心に残ったのはこの一文でした。
葬送ビジネスとか関係なく、日々生きる人間として、この向上心は座右の銘にしたいくらいです。色あせないし、ゴールでもない。ただいつも心のどこかに留め置きたい。
専業主婦のわたしですが、実を言うと、働き出すと他の事や家の事が一切できなくなるほど仕事にのめりこむ性質なんですよ。仕事とプライベートの区別なんてつけられなくなる。仕事する自分が好きだったし、仕事があるというのは幸せなことで、だからこの一文は、家事を仕事としてプライドをもって生きなさい、と改めて言われたような気がしたんです。

ノンフィクションが好きかどうかより、自分に出来ることを考え抜くという指南書として、またもし自分に何かあったら此処に電話してくれと伝言するつもりで(笑)、お薦めしたい。たくさんの人に読まれることを願います。



(2012.11 集英社)
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