こんな本読みました。

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『僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ』 辻内智貴 著 

2013/01/06(日) 18:09:35 辻内智貴 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ僕はただ青空の下で人生の話をしたいだけ
(2012/10/11)
辻内智貴

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 辻内さんの小説をすべて読んではいないんですけど(四冊は読んでると思う)、…うん、この人は本当に印象深い作品を書かれます。
 なんていうか…回転寿司に行って、もうかなりぐるぐるまわって時間の経ってるっぽいお皿を「100円なんだからこんなもんだろう」と淡々と食べてて、そしたら何の気なしに取ったお皿のお寿司に予想以上にワサビがきいてておもわず噎せた、みたいな(この喩えもどうかと)
 そんなふうに、淡々と、何の前情報も持たず、ただぱらりぱらりと静かに読むといいと思います。


とはいうものの。
実はこの本、最初の〈無題〉と続く〈A DAY〉の六編、辻内さんのエッセイじゃないかと思ったですよ(苦笑)
あ、いや<無題>は、そうか。2011年の夏に、『FeelLove』に寄稿されたもので、2011年。東日本大震災について、表現者の誰もが悩み迷ったあの悲劇について、辻内さんが心の眼で見たことを。
言葉がいかに無力なものであるか、を、自分にできることは何であるかを。

で、続く〈A DAY〉ですが。
これ、主人公のリュウさんは、辻内さんご自身がモデルになってるんですよね。私小説みたい。
もちろん、フィクションとしての部分は盛ってるというか仮名と虚構なんでしょうけど、人となりとか町の寂れ具合とかちょっとした出来事とかいうのはおそらく現実なのではないかと。
もう何年も新作を発表していなくて過去の作品が映画化されてその収入がたまに入る中年作家、って、そうでしょ(笑)
じゃあ、一緒に暮らす猫ちゃんはどうなんだろう、実話っぽいんやけどな。向き合い方というかお世話の仕方というか、猫の描写がいちいち納得できるんですもん。特に〈A DAY2〉のお馬鹿ちゃんっぷりは大笑いしましたwww
そして〈A DAY2〉はそのお馬鹿な猫ちゃんから親友のことになって、このお話はすごく良かった。沁みました。

ふたりの彩ちゃん、クリスマスの夜の救急治療室、不思議な夢、どれも本当のことみたい。

掌編の〈阿佐ヶ谷〉、短編なんでしょうけど読み心地は中編クラスの〈記憶〉、ラストは〈君の幸福は僕の幸福〉。

この一冊の中に、いろんな形の記憶と、いろんな形の心と、いろんな意味での死がありました。

ミステリ読みには「おお!」と膝を打ちたくなった〈記憶〉、これはいい!近未来の設定なんですけど、そんなSFチックさはなくてむしろオーソドックスに人間の業の深さを見せ付けてくれました。辻内さんて、書こうと思えばがっつりミステリが書ける人なんじゃないかなあ。

メモしておきたい深い言葉、素敵な文章がいっぱいあるんですけど。
中でも一番、うわ!と心を鷲掴みにされたのは、〈A DAY2〉の

「(略)
しかし宇宙は、ただ任せてもそうそう面倒みてはくれない。
だから心というものが人間には備わっている。
宇宙の好物は、心、である。
逆に言うなら、宇宙の好む心以外に必要なものは人間には無いのである。
人間は、なるだけ己を虚しくしたほうがいいと思う。
宇宙がそれを望んでいるからである。
~(略)」(45ページ)

どこの修行僧ですか辻内さん(笑)

とまあ、こんな感じに、無頼の禅僧みたいに、あるがままに、シンプルに人生という時間を外側から見ようとしているまなざしが、なんともいえずいいのです。肩の力が抜けて、息をするのが楽になるというか。…リュウさんは呼吸困難になりましたけどね(苦笑)


そんなわけで、なんだか知らないうちに重い荷物をいっぱい背負い込んでしまってちょっと休みたくなった人には、特にお薦めの一冊です。
ていうか、辻内さんの作品がそういう人によく合うと思うんですけど。

あとがきも飄々としてて、最後の一文の編集部注で見事な締め方になっててもう、人生こんな大雑把でも大丈夫なのねと大笑いしたわたし。
気分が晴れました。
いま、青空の下で、人生の話をしたいです。



(2012.10 祥伝社)
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