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『静おばあちゃんにおまかせ』 中山七里 著 

2013/01/06(日) 18:01:55 中山七里 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
静おばあちゃんにおまかせ静おばあちゃんにおまかせ
(2012/07/12)
中山 七里

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 初めて読みました中山七里さんのミステリ。人気あるのもわかりますね、おもしろかった!
 これはちょっと、既刊を遡って読破したい本格ミステリ作家さんに出会えた嬉しさで、また本棚がパンクしそうな気がしますよ…?(笑)
 ※あからさまなネタばらしはしていないつもりですが、勘のいいかたなら予想できてしまう程度には踏み込んで書いてますので、未読でこれから読むというかたはここで回れ右をお願いします。読了後にお付き合いください。




連作短編集です。
そして、どれも不可能犯罪モノでレベルが高い!
読み終わるのがもったいないなあ、と思った、国内ミステリ作家さんに久しぶりに出会えたかも。

〈静おばあちゃんの知恵〉
〈静おばあちゃんの童心〉
〈静おばあちゃんの不信〉
〈静おばあちゃんの醜聞〉
〈静おばあちゃんの秘密〉

はい、ブラウン神父に倣ったタイトルですね。
で、身内ではないけど警察官が解けない事件の謎を円ちゃんに相談→孫娘(円ちゃん)に知恵を授けたり名推理をしたりする静おばあちゃんの安楽椅子探偵ものということで、ジェームズ・ヤッフェのママシリーズのような読み心地でもあります。
つまり、古典の名作に倣い、そのリスペクトに恥じないレベルにまでトリックとロジックを構築した、現代版の見事なブラウン神父&ママなのでした。

表紙のイラストも可愛いじゃないですか、円ちゃんと静おばあちゃん。裏表紙には葛城さん。

いやー、このポップさに騙された!一編一編が、かなりヘヴィな、社会派ともとれるほど重厚でした。

退官した、元裁判官のおばあちゃんと、法曹の仕事に就きたいと勉強する円ちゃん。そして、清廉で潔癖な葛城さん。
他にもいろいろ刑事さんが出てきますけど、葛城さんと親しい刑事さんのあけすけでシンプルな信条も合わせて、この主役三人に語らせている言葉のひとつひとつが、すごく大切で重いです。ですがキャラクタ設定そのものは洒脱なので、それに助けられる形でめっちゃ読みやすくなってます。

あと、一話ごとの事件の謎から真相までの経緯とは別に、円ちゃんと静さん、そして彼女達の近くにいることでかかわることになった葛城さんによる、過去のある事件の究明(というか裁きと言ったほうがいいかも)の流れが、たぶんギリギリなんでしょうけど上手くはめ込まれてました。
これで、葛城さんと円ちゃんの出会いの経緯があれば綺麗に納まったんですけど……それはわざと隠したままにしたのかなあ。とも。

ところで、この作品は、警察小説でもありうると思います。
葛城さんの目を通して描かれる警察内部、静おばあちゃんによる警察と検察と司法の関係、そして真相に辿り着くまでの壁。
中山さんはこの静おばあちゃんの活躍をシリーズ化させるつもりはなかったようで、かなりざっくりした流れでしか描かれてませんけど、ここをもっと掘り下げたら間違いなく警察小説になってたから、本格ミステリ小説であるためのギリギリのラインだったことがうかがえますね。
刑事、警察官は快刀乱麻の名探偵じゃないし。地道に地道にコツコツ調べて事実を積み上げていきながらなおガチガチの本格ミステリというものを書こうとしたら、鬼貫警部くらいしか…。

正義とは何か、人が人を裁くということ、刑事の芯の部分、人間としてのプライド…。
円ちゃんとおなじように、静おばあちゃんの言葉は、姿勢を正して目を見つめてひとことひとことを心に留めておきたい大切なことばかりでした。
もうテレビでもぜんぜん騒がなくなったけど、裁判員制度が始まって数年、自分のもとに裁判員裁判に出なさいという召集が来たら、これはきっと毎日でも読み返したほうがいいくらい、大事なことが詰まってます。

もうひとつだけ、ちょっとした注文をつけるなら。
葛城さんの視点のパートと、円ちゃん視点のパートが、ところどころハッキリしてなくて…。数行読んで、ああこれは円ちゃんのモノローグだったか、と何度か思ったりしました。別に進行上なんの問題もないのであくまでわたしが鈍いだけとも言いますが、そこのところの書き分けがされていればな、と。

ラストのサプライズは……フェアですよね。で、わたしはほぼ同じ手で驚かせてくれた作品を知ってます(笑)あれと同じ。
“秘密”について、ミスリーディングでもなく嘘も書かれてない、ただ、それまでのやりとりをじっくり思い返せばこういう顛末でしかないでしょう、ってことですね。最後まで隠すの、大変だったんじゃないかなあ。
でもって、改めて表紙イラスト見たら、ちゃんとそうなってるし!(爆)あーなるほど嘘は描いてない、うん。
(円ちゃんについては現実的には、ちょっと難しい設定ではありますね…)

不可能犯罪もので、短編集なので、かなりあっさりめではありますが破綻はしてないです。
関係者というか容疑者もそれぞれ限られてるし、葛城さんと円ちゃんの恋模様についても別に邪魔ではなかったし。(←名探偵に恋愛要素は必要ない、と日ごろから思ってるわたしとしては、かなり珍しいですこの感想)
警察が、一般人を事件現場に連れて行くことも、ましてや事件の謎を解けと迫ることも、現実にはたぶんないと思うので(メディアや裁判でも伏せられていれば別ですが)、
現実的でシビアでヘヴィなテーマと、現実離れしたフィクションとしての稚気を両方楽しめる、お得な一冊でしたw

(2012.7 文藝春秋)
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