こんな本読みました。

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『花咲家の人々』 村山早紀 著 

2012/12/12(水) 00:52:47 村山早紀 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
花咲家の人々 (徳間文庫)花咲家の人々 (徳間文庫)
(2012/12/07)
村山早紀

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 たったいま読み終えました…。
 もう、涙腺が溶けて、ハナミズでなんかぐちゃぐちゃになってます。
 村山先生からのクリスマスプレゼント、たくさんの人に届きますように!




風早の街を舞台に、新シリーズが生まれました。それがこの花咲家。

なんていうかね、たそがれ堂ともかもめ亭とも山の神様の娘さんたちとも、過去や未来とも違う、まるで「神社のご神木」のような。

そして、「悲しみを天に還す物語」でもありました。

……ていうかね、書きたかったこと、みーんな優音さんに持ってかれちゃいましたよ!(笑)

りらちゃんと草太郎さんのリアリスティックさはたぶん茉莉亜さんや桂くんよりも脆くて、茉莉亜さんや木太郎さんの後悔は結果オーライで、風早の街に降る雪はあたたかい。

泣くことを禁じて強がり頑張ることはいつか本当の強さに変わるかもですが、それこそもって生まれた本質的なもの、素直に感じる心を封印することは、やっぱりしんどいよね。

その思いがずっとあったせいか、この物語は全体的に、風早に暮らす人々の涙の川が街の下に静かに流れてるような、家族なのにひとりひとりがぽつんと立っているような、そんな淋しさも感じないわけにはいきませんでした。
村山先生のいままでのお話に比べて、少し、ひとりで空を見上げて立ってる痛々しいようなイメージが強いかもしれません。わたしの中でですが。
命は、生まれるときはお母さんの命がけの時間と祝福を受けますが、死んでいくタイミングを選ぶことも誰かと一つになって死ぬこともできないし、のこされた人の数だけ、寄り添うぬくもりの場所はぽっかり空席になってしまうから…。

緑に愛され守られているはずの花咲家のひとたちはもちろん、たてがみのお兄さんも。人間の根源的な孤独に、むきだしで触れているみたいで…。その絶対的な淋しさを、強がって顔を上げて乗り越えるひと、復讐という手段で立ち向かうひと、笑顔で飲み込むひと…。

草花や樹木と、会話したり魔法使いのようなことができる花咲家のひとたち。
魔法は魔法として受けとめるひと、理論で解明できるはずだと考えるひと。そして、ちからを持たないひと。
でもそんな個性の違いがあるから、家族でいられる。

疑うことって、いい場合とよくない場合があって。
ただ、疑うってことは、自分で考えることでもあるから、そのときに自分の心が曇っていなければそれでいい。
多少わかりにくい好意や友情や愛情も、透き通った目で見てみれば?って。そんなふうに。

難しいことの枝葉をとっぱらって、シンプルに。
それはたぶん、枝葉じゃないような気がする。枝や葉にムダはなくて、それは時間で、降り積もった時間が輝いてるか曇ってるかで茨の道になるかどうかが決まるんじゃないかな。

植物や、死と嘘を知らない動物が、そして死と嘘の影がもっとも薄いはずの子ども達が、わたし達に見せてくれる無償の愛情に、わたし達は夢を見せてあげることで報いているのかもしれない。
サンタクロースや魔法使いを、いないと否定しないで、いるといいね、って言ってあげられるだけの心の余裕を。大人だって、魔法使いがいることを信じていてもいいって認められる社会の余裕を。花が綺麗ね、生き物は愛しいねって、微笑んで見せること。

わたし達が照れないで話しかければ、植物は返事をしてくれてるんでしょうか。
グリーンフィンガーを持つひとたちはきっと、そのコツのようなものを会得してるはず。でもちょっとだけ、「それは秘密w」って言ってほしい気もする、かな。魔法の種明かしは、わたしが死ぬときでいいです。

ひとも、草木も、猫も犬も、死ぬときに何を思うのかなあ。
死んでみないとわからない。
そして、死んでしまったらもう、生きてるひとに教えてあげる術がない。
ただ生きているわたし達は、明日も生きていくしかなくて。
きっとそれが、最大の魔法。
神様にもし注文がつけられるなら、魔法や魂や心に、重さと匂いと色と声がついていればね。人は死について恐れることも惑うことも、魔法使いや輪廻を否定することもしなくてよかったのに。
だからのこされたわたしは、ずっと記憶しておかないといけない。
一緒に生きて、しあわせだった日々のことを。

あいたい誰かがいて、姿はなくなっても魂がずっと一緒にいるのなら。
死んでしまったひとだって、そりゃ頑張らないといけません。
大事なひとを、泣かせるわけにはいきません。
その思いが草木の祈りと連動したときに叶えられた、皓志さんや優音さんはきっと、すごく嬉しかったでしょう。
唄子さんはちょっと鈍感なのか旦那様の愛情だけだと思ってるみたいですが、いえいえ読者にはわかりますとも、唄子さんを包んでいた植物の愛情はすなわち木太郎さんの消せない初恋からくる愛情ですから。ちょびっとそれに気づいてあげてほしいかな。

人も猫も、気持ちいい場所が大好きです。
居心地の悪い環境でずっと頑張れるだけの精神力は、植物さんたちの方が格段に高いですよね。
花咲家の家族以外のキャラクタに、「野」の漢字の入った名前の人が複数登場するのは、そんな、荒野や野原や植物が主人公の場所をイメージしました。

ラジオのDJとしての声、絵を描くこと、料理やお菓子をつくること、旅に出ること、日常と非日常が交じり合う中にある、ひとつひとつのすべてのことが、世界を重厚に濃密にしていくのなら。
わたし達は、生きることに手を抜いてる場合じゃないのだと。そう思います。

あ、カルピスバターは無塩がオススメですw
フランスパンに塗るとめっちゃ美味だったりするんですよ~www
(スーパーに売ってる場合もありますが、ネット通販のクオカさんで買うと、化粧箱がない分お買い得です!)


この物語は、東日本大震災で、巨大地震と大津波によってすべてをなくしてしまったひとたちに、廃墟からの復興を願いつくられた、クリスマスツリー、またはクリスマスのブーケです。
十年、長いようで短くもある十年後に、笑顔が増えてしあわせを取り戻して、あたたかい街の灯が星空のように輝いていますように……!
村山先生が心からそう願って紡がれた、クリスマスプレゼントだと思います。
東北の皆様に、笑顔が届きますように☆


(2012.12 徳間文庫)
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