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『探偵ザンティピーの惻隠』 小路幸也 著 

2012/10/30(火) 16:59:21 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT

 はいはーいwザンテさんシリーズの第三作目、新刊でっす!
 なんでこう、魅力的なんでしょうね、小路さんの生み出されるキャラクタって。
 とはいえ、このシリーズは、結構かなしい一面もあります。何やってんだとか何だかなあとかじゃなくて、どうにもならなかったことややむを得なかったことを探り当ててしまうハードボイルドなので……。
 あ、ハードボイルド、と言っても、「温泉付き」です(笑)。本来、温泉どころかお風呂屋さんのお風呂にも入れないわたしが、北海道の温泉に行きたいなあ、と思わされるくらい、気持ちよさそうです☆
 (実はかなりネタばらしに近いことしてるので、読了後にお付き合いください…)




ふだん、あまりハードボイルドは読まないわたしですが、これくらいライトなものならすいすい読めます。

そしてザンテさんは相変わらずアメリカ版寅さんを貫いてましたw
来日も三度目となると、それまでの知識と経験も合わさってかなりの日本通です。

そのザンテさんの目を通して見た日本は、まだ昭和の時代。
バブルやらその後の長い不況やらの影はなく、ただひたすら北海道の温泉を愛でてます(笑)
なので、登場する日本人も、ひところ言われた「三無主義」みたいなことはない。
ただし第二次大戦の影響は残ってます。戦争を知らない世代が中心なのですが。

戦争って、何のためにするんだろう…と思わされます。
資源を狙ったり、自国の利権を拡大するためであったり、自国の経済を発展させるためであったり、開発した兵器や軍用のあれこれを実線投入したいだけだったり。
この中に、人間ひとりひとりの顔は浮かんでこない。
人と人が膝つき合わせてとことん話し合おうという時間のかかることより、国という概念同士が、駆け引きや恫喝や圧力で短絡的に暴力に訴える。
その結果、つらく悲しい思いをするのは、市民ひとりひとりで。
楽しいこと嬉しいこと喜ばしいことといった幸せを分かち合うなら悲劇も秘密もなく生きていけるのに。
つらく悲しく苦しい体験は、悲劇を引き起こし誰にも明かせない秘密を抱えて生きなきゃいけない。

そんなご時世の、北海道の温泉地。

戦時中に撮影された、一枚の日本兵の写真。
この写真に写ってる人に、またはその家族に、この写真を返してあげたい。
そんな依頼が、思わぬ方向に。
ザンテさんは、もしかしたらギデオン・オリヴァー教授(アーロン・エルキンズのシリーズ、スケルトン探偵)ばりに骨に因縁があるんじゃないですかねえ(苦笑)
ま、それはともかく。
その一枚の写真から、明らかになった秘密。
うーん……これは、知りたくないよねえ……。
ザンテさんはまたしても、秘密の半分を心の中に引き受けて鍵かけてアメリカに帰国するわけですが。
なんか、こうまで重くつらい秘密ばかり抱えてしまって、ザンテさん自身が大丈夫なんだろうか…とちょいと心配になります。
おそらく読者が一番気掛かりな、そのザンテさんの心に仕舞われた重さつらさを軽減させているのが、寅さん口調なんでしょう。

謎を紐解く上での、伏線もフェアでした。
キイチさんが登場したとき、トシヒコさんが少し慌てたように見えた、というところで、トシヒコさんはキイチさんに何か弱みを握られているか秘密を持ってる人らしいというのは想像できるけど。
トシヒコさんだけなんですよね、奥さんのアキコさんはそんなそぶりもなく。
これ、うまいなあと思いましたよ。
これをしっかり記憶しておいて、秘密が明かされていくシーンを読むと。
うわあ…って。なんと危うい。
みんなそれぞれに秘密を抱えてるのに、時間軸にズレがあるせいで、かろうじて家族として生きてる。
もし、ほんのささいなことでもこの秘密の一端が明らかになった時点で、家族が崩壊してしまうくらい、薄氷の上。
これこそまさしく、「真実を知っても誰も幸せにならない」ケース。
ザンテさんの心は、どこまで広くて深いんでしょう。
改めて、しみじみ、そう思いました。

旅館の天井から吊るされたペンダント、これの意味もいいですよねw
ミステリ的にはすぐにピンとくるんですけど、悪意がまったくなく、むしろ善意100%だったし、陰惨なものにはなりませんでした。
ていうか、全体通して、どこにも悪意がないんですよね!
こういう事態の転がり方もあるんだなあ、と。
小路さんらしい展開です。

キーワードは、「家族」。
ザンテさんと妹のサンディさん&シモーヌさんとお兄さんのアーノルドさんのきょうだい、そして片平家の一家。
どういう繋がりであれ、愛情と信頼で結ばれていれば、時間が家族にしてくれる。
新婚家庭だって、里親として迎えたわんこやにゃんことだって、一緒に暮らしていくうちに、家族になる。
一方、離れ離れで生きていても、強い絆と信頼があれば、それもまた、家族の形。
要は、みんなが幸せで笑って暮らせればいい。ですよね。


ザンテさんの人柄と回転の速い頭脳と誠実な仕事ぶりで、北海道での友達がどんどん増えていってます。
もういっそ、北海道に住めばいいのにねえ(笑)
でも、何故かザンテさんのホームグラウンドはニューヨークの方が似合ってる気がします。
いつも家賃に困って、依頼人がなかなかこなくて、ピーピーなんですけどでも私立探偵のプライドだけは失わない。
武士は食わねど高楊枝、ってやつですなw
こんな清貧なザンテさんに、また北海道に来てほしいですねえ☆

(2012.10 幻冬舎文庫)
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