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『寮の七日間 青春ミステリーアンソロジー』 加藤実秋、谷原秋桜子、野村美月、緑川聖司 著

2012/07/22(日) 00:46:15 アンソロジー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT

 ティーン向けのレーベルなので、青春アンソロは得意ですよねピュアフル。ていうか、仁木作品の編纂といい、ミステリ的にも侮れないですよねピュアフル。
 光る汗の飛び散るサワヤカ~な青春小説とは言い切れないですが(だってミステリ)、やっぱり読みやすいです。
 で、感想書かずにスルーしようかと思ったけど、それにはもったいない気が沸々とわいてきたので、ミステリとしてもなかなか良くできたアンソロだと思いなおし、ちょっとだけ思いつくままに書いてみます。




と言ってもですね…。
実はわたし、加藤さん以外は未読なんですよ…谷原秋桜子さんのシリーズでさえまだ読んでない(汗)
野村さんと緑川さんに至っては、初めてお名前を知ったという有様(ラノベは守備範囲外)……。

なので、どんな作風なんだろうとかどういうミステリなんだろうとか、期待と不安を抱えて読みました。

ほう。

ほうほう。

へえぇぇぇぇ!

…こんな感じでした(笑)

で、わたしには馴染んだ加藤さんの一編が、逆に浮いてるなあおいおい…という苦笑いとともに本を閉じたわけです。(これが感想を見送ろうかと思った理由。一番ご贔屓の作家さんのがそんなだったら、ちょっとね…)

でも一日経ってみて、四作品とも自分の作風を維持しつつ縛りに沿ったお話とマッチしてたかも、と思い直しまして。

あ、縛りというのは。四作品の共通設定のことですが。

※舞台は「紅桃寮」
※四〇四号室が「開かずの間」
※事件の発生から解決までが「七日間」

実にわかりやすい(笑)
一編ごとに舞台やガジェットを変えると、それぞれに退屈な説明箇所が必要になるし、そのぶん冗長に感じてしまう。ミステリに慣れた人ならなんてことない状況説明も、気の早い若い人達にはまどろっこしくて読んでられない。そんなミステリに馴染みのないティーンエイジャーさんたちにもスンナリ飲み込めるように、という親切設計。

短編のアンソロジーだからできることですね。

で、一編一編のあらすじを書き出すとまた長くなるので割愛しますが、さすが谷原さんは書き慣れてるなあ。あれこれの伏線をきちんと回収して、その上で、思春期真っ只中のティーン達の心をガツンと揺さぶる真相。初っ端にこの作品を収録したのはきっと狙いよね(笑)
二重底になってる真相の隠し方も巧いし。
人生投げそうになってた主人公に道筋をつけてあげるというおまけ付き。そこまで人生甘くないとは思うけど、若い人にはこれくらいのトントン拍子であるほうがいいのかも。

野村さんのが一番印象に残った気がします。
女子ならではの世界と、携帯やネット(掲示板)をうまく使ったミスリード。
ただひとつ、気になるのは、たった一回だけ出てきた一番重要な伏線なんですけど、ここで彼女は気が付かなかったのかねえ、ということ。あまりにもさりげなくて気が付かないっちゃ気が付かないのかもですが、ちょっと足が止まるくらいはあってもいいんじゃないのかなあ。と。
そこだけ。
どんな展開だったかを書くと興を削ぐので(ネタばらしではないにせよ、どんな展開なのかも書かない方がいいタイプの作品)、ラノベで一躍有名になったらしいですが、本格ミステリの書き手さんとしても活躍できると思います。

緑川さんのはね。
あるモノについて少しでも知識があったら、すぐにネタが割れるだろうなあ…というギリギリのとこじゃないでしょうか(苦笑)
わたしはコレについては知らなかったのですが、別の読み方をしても(ミステリ読みの習性というやつですね)なんとなく大まかな真相くらいは掴めてしまうです。
ハルくんの、ある誤認職については(ハルくんという存在についてのキモになる部分)、単純なだけにバシッと嵌ってましたね。うん。
謎がすべて明らかになってみたら、根っからの悪人がいなかったというのもテイーン向け。

で、加藤さんですよ(苦笑)
加藤さんのだけ、「紅桃寮」のディテールも、「開かずの間」の使い方も、前の三作品とはまったく違ってて。
いいのか悪いのかは好みの問題ですが…わたしは、浮いてるなあ、という気持ちが最後まで拭えなかった。作風としてはぜんぜん加藤さんらしすぎるくらいでいいんですけど。
四編全部がいわくありげな設定じゃなくて最後の一編だけわざと外してあるのは、ふっと心の力みを解く効果がありました。が、これが油断のモトでしょうねw
暑苦しい家族の一人ひとりにも、出てくる携帯やらガイドブックや笛や食い意地にもすべて使い道があって、エンタメとして楽しい作品ではあります。それは確か。
加藤さんらしいスリルとショックとサスペンス。のエンタメ小説。ちょびっと社会派風味(笑)
主人公がなまっちょろくて青臭いガk…げふんげふん、まだまだお子ちゃまなのですが、濃すぎて暑苦しい家族に免じて許してあげましょうかw
両親をナメんなよ☆

ていうか、今書いてて気づいたんですけど、四作品のうち、加藤さんのだけは視点人物の家族がしっかりしてますね。
これか!これが、最後に収録した狙いか!(←推測ですよもちろん)
虐待したりネグレクトだったりしない限りは、家族を、親を大事にしなさいよって。
ううむ。

最初にも書きましたが、ピュアフルって、仁木作品といい村山先生のたそがれ堂シリーズや海馬亭といい読み口は柔らかいのに侮れないレーベルなわけです。
で、このミステリーアンソロジーも。
ティーン向けレーベルとはいえ、本格ミステリとして遜色ないですね。仁木作品の編纂という実績から来る安定感。
これからも要チェックです。

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