こんな本読みました。

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『インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日』 中村安希 著

2012/07/22(日) 00:30:33 エッセイ・ノンフィクション THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 これは誰かにお勧めされた本じゃなくて、資生堂の頒布誌「花椿」に載ってたグラビアに惹かれて読んでみたい!と思った本です。
 第七回開高健ノンフィクション賞を受賞したそうです。ということは。
 以前、いつもお世話になってる本屋さんの店長さんにお勧めされた『空白の五マイル』と同じか!これは期待できる♪と思って。 
 はい、その期待は裏切られませんでしたー!すごいもの読んだよーーー!
 


グラビアの写真を見てると、とてもそんなワイルドな旅に出るようには見えない、キュートな女性なんですけどね。
読み進めていけばいくほど、写真の笑顔は砂埃と汗と涙に汚れて髪もベタベタと艶が無く、それでいて瞳が澄みわたって凛とした美しい女性になっていく。

日本人とかアメリカ人とかいう国籍じゃなく、白人とか有色人種というのでもなく、「旅人」という種族になる。
その哲学と葛藤と、孤独と自由。
先入観の垣根をとっぱらい、目と心を開いて雑踏の中に飛び込んでいく姿。暗闇の中で知らない誰かの手を握る気持ち。
困っているひとや苦しんでいるひとに無条件に手を差し伸べ、自分に差し伸べられた手をとることに躊躇しない。
自分で精一杯考えて防御しながら、たおやかに流れに乗る姿。
圧倒されました。

最初、日本を出発して東アジアからユーラシア大陸の内部に分け入っていく序盤あたりは、まだ日本人なんですけど。
だんだん、日本の常識やしがらみや先入観が少しずつ剥がれ落ちていって、シンプルに「人間」という核だけになっていく。
なかなかできないですよこんなこと…。

47ヶ国、684日の、ユーラシア・アフリカ大陸の旅を一冊に。
そのために、ひとつの国でのことはほんの数ページしかとれない。
はじめは、えらいあっさりしてるなあ、と思ったんですが。ごめんなさいこれは間違い。この数ページの中に凝縮されているもの、削ぎ落とされた情景や感情、その濃度がハンパじゃない。たとえ行間を読むのが苦手でも、これは行間が浮き上がって迫ってくるよう。
日本の、清潔で安全で何でも揃ってるところでテレビのドキュメントを見てるなんて、その国を知ったうちにも入らない。
綺麗な服を着てでっかいトランク転がしながらわいわい浮かれ騒ぐツアー旅行でも見えてこない。

ただ、風のようにしなやかに、でもできる限りの準備をして、そして飛び込んでいった人だけが見て聞いて感じることのできる、なんでもありの世界。

すごいとしか言いようがない。

面白いのは、アジアの内陸部を含めユーラシア大陸での情勢は、宗教の違いによって引き起こされた混乱と庶民の小さな秩序、なのに対して。
アフリカ大陸はまるで違う。先進国と途上国という分かりやすい構造と、宗教よりも根深い人間性の根本的な違い。アフリカには、子どもには子どもだけに見える神様(お母さん)がいて、大人(特に男)には大人の神様がいる。そして女性は大地の女神。すべてを許し受け入れる。
でも、それでも毎日をしっかり生きてる。
むしろ、時間に追われ成果を問われストレスにさらされ続ける日本人の方が、一日一日を見ていない気がする。そしてそれが、今の日本にまで発展させてきたパワーだったりする。

つまり、どちらが正しくてどちらが間違ってるか、という単純な話ではないということ。

いやそれにしても、この本を読んでると、日本てつくづく特異な国なんだと思う。外国の人達が日本と日本人をクレイジーと言うのも分かる気がするよ。
東京や大阪なんて数分おきに時刻表どおりに電車が来て(五分遅れると怒り出したり…)、レストランでは清潔第一、お風呂に毎日入れるくらいに水が豊富で、大都会でも農村でも便利さの違いはあっても基本的な概念はそんなに違わない。かなり犯罪が増えてきたとはいえ海外に比べればまだ安全だといえる国。
それと、宗教対立がほとんどない、そもそも宗教の縛りが極端に薄い国。
それぞれの国の歴史があって現在があるわけですけど、日本はつくづく珍しい部類の国なんだろうなあ、と。
さっきも書いたけど、日本人が正しいわけでも間違ってるわけでもない。ただ、自分にできることをして生きてきただけ。それだけのこと。

入国した一国一国について、たった数ページしか割かずに、ひたすら淡々と綴っていく中村安希さんという旅人は、素晴らしい文筆家さんでもあります。
ノンフィクなのに小説のように、淡々と出来事を、訥々と哲学を、堂々と論理を綴っていく。
二千年代の、そして女性版の『深夜特急』だと思います。

“~スタン”の国々や、イランとイラク、中東とイスラエル、戦争でしか知らない国々の、知らなかったことがいっぱい。
アフリカ諸国と先進国の、知らされなかったことがいっぱい。
TwitterやFacebookにも流れてこないだろう、普通の家族の毎日。

それらの国々を旅して、中村さんはきっと、日本をもっと好きになって、だからこそ旅を続けているんだろうなあ。

知らない国の、知らなかった現実と、どの国でも変わらない家族単位の絆の強さと。
異国の旅人をあたたかく迎え入れ、惜しみなく食べさせて眠らせてあげられる、日本もそんな国になってほしいと思います。

(集英社)
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